人産みの樹 鬼産みの樹
「桃ちゃん。まだ眠れないかしら?」不美が聞くと
桃は「んーまだ眠くならないな」と不美に返した。
すると不美は
「あらあら、夜更かしさんだこと。それなら昔話でもしましょうかしら?」と桃に言った。
桃はコクッと頷いた。
「昔々ある所に、人産みの樹がありました。
人産みの樹は、沢山の人を生みました。
人はその樹を権力の象徴として崇めました。
また別の地では、鬼産み樹がありました。
鬼産みの樹は、沢山の鬼を生みました。
鬼はその樹を恵の象徴として崇めました。
人は、人産みの樹を巡って争いを始めました。争いが激しくなり、人産みの樹は枯れてしまいました。
鬼は、鬼産みの樹を囲み、絶え間ない感謝を注ぎました。鬼産みの樹は枯れることなく、鬼を生み続けました。
増え続ける鬼に恐怖を覚えた人は、沢山の太郎を集めて鬼退治をしました。
そして世界は平和になりました。」
不美は話し終わり、桃の方を見ると、
桃は大の字で、寝息を立てて寝ていた。
不美はクスッと笑い
「あらあら、難しいお話しでしたかね?眠れたのなら良かったですわ」と言って
桃を魔法で浮かして、抱いて布団に寝かした。
次の日の朝、不美の
「みなさん、朝ですよ。ご飯出来てるから起きてください」の声で三人は目覚めた。
朝ごはんをみんなで楽しく食べてると不美が
「桃ちゃん、そー言えば、少し前からオノゴロ国では、人と鬼の共政が始まってるみたいですね」
と桃に言った。
桃ははてな顔で
「なんだそれ?どーいうこと?」
とご飯を食べながら聞き返した。
不美は微笑んで
「あらあら、人と鬼が一緒に住んでるって事ですよ。人にも良い人悪い人が居るように、鬼にも良い鬼悪い鬼が居るのです。だから鬼を見つけてもすぐ斬ったらダメですよ!大きな街だと捕まっちゃいますから」と言った。
その話しを聞いて桃は笑って
「にゃはは!捕まるのは嫌だなぁ!うん!頭にきたやつだけ斬る!」と言った。
その話しを聞いたゴリは不美に
「その国って上手くいってんのかい?」と聞くと
不美は浮かない顔で
「んー?新聞で見ると上手くいってるみたいに書いてあるけど、噂では反乱軍との衝突が絶えないみたいね…」と返した。
ゴリは「だよな…」と言って、お茶を啜った。
そんな光景を不死子は寂しそうに眺めていた。
ご飯を食べ終え、片付けと出発の用意をして、二人は外に出た。
見送りに不美と不死子、村のみんなが来ていた。
不美が二人に
「あらあら、ずいぶんと早く出ちゃうのね。もう少しゆっくりしていってもいいのに?あっ、お洋服は袋に入れといたからね」と言うと
桃は「洋服ありがとう!早く行って、早く帰りたいからな!にゃはは!」と笑った。
すると不死子が早口で
「気ぃーつけてな!あんたらすぐ怪我とかしそうだから、怪我したらいつでも来るんやで!ウチとママですぐ治したるからな!後、さみしぃーってなっても、戻って来てえぇからな!」と言った。
それを聞いた桃とゴリは顔を見合わせて笑った。
不死子は顔を赤くして怒りながら
「なんやっ!ウチ可笑しな事言うたか?!」と二人を指差して笑った。
桃は笑いながら
「いいから早く行くぞ!」
と親指を立てこっち来いと、クイクイとやって合図した。
ゴリもニッコリと不死子に笑いかけた。
不死子は「えっ!?」と言って不美を見た
すると不美はニッコリ笑って
「ずっと鳥かごの中じゃ窮屈でしょ、鳥は空を自由に飛ぶ者よ!世界を見てきなさい」と言った。
不死子は笑顔でコクッと不美に頷き
「ありがと!ママ!」と言い、
二人の方に走って行き
「なぁなぁ!ウチが居ないと寂しいんやろ?!最初っから言いやっ!よしっ!ウチがこの旅のリーダーになってやってもいいで!」と二人に言った。
桃は笑って
「んっ?!リーダーは譲れねぇな!だってお前らに任せると余計な事に首突っ込みそうだからな!」
とベロを出した。
村のみんなが
「不死子ちゃん、行っちゃうのか?」
「さみしぃーなあー」
「気をつけてな!」
「桃ちゃんもゴリちゃんもありがとな」
と口々に言った。
三人は不美と村人の方を向いて手を振った。
不死子が大きな声で村のみんなに
「みんなー!ウチちょっと行って来るわっ!元気でな!」と言い不美の方を向いて
「ママー!行ってきます!」と頭を下げた。
村のみんなと不美は大きく手を振り
「行ってらっしゃい!」と言った。
三人はニッコリ笑い手を振り、村を出発した。
出発した三人の背中を見て不美が
「あらあら、行っちゃったね…私もあの人が迎えに来てくれていたら世界を飛び回れたのにね…」
と少し寂しそうに呟いた。
続




