百年二百年先
赤鬼は手にしたエミアの心臓を見ながら、「おいおい、約束が違うじゃねぇか、、これじゃぁ、暴れたくなっちまうよー!!」と天を仰ぎ、大声で叫んだ。
赤鬼が動き出そうとすると、村人達はエミアとノスフェラの前に壁の様に立ち、村人達は「ノスさん、女王を連れて逃げてくれ!あんな奴に女王を渡すわけにいかない!頼む!」と言うとノスフェラはコクッと頷き「ありがとう、必ず逃げる!チャンスがあったらみんなも逃げてくれ!」と言った。
村人達はニコッと笑い、遠ざかるノスフェラを見ると真剣な顔になり[血の契約]を使い、「我ら死す時まで戦い続ける事を誓う」と叫んだ。
それを見た赤鬼は冷めた顔で「なぁーんか、しらけたな!欲しいもんは手に入ったし、狂った奴等を相手に仲間を減らすのもな、、このかけられた魔法も邪鬼に解いて貰えば問題無いだろうし、、」と悩むと、くるっと後ろを向き「お前ら!帰るぞ!」と言って歩き出した。
狂人化していく村人達は苦しそうに「お、おいっ、戦っていかないのか、、ぐぐぎ、、我々に戦いの中で死を、、くぐぎぎ、、与えないつもりか、、」と言うと、赤鬼は振り返り「はぁ〜ぁ!お前らが勝手に狂っちまったんだろ??何で俺たちが相手してやらなきゃならないんだよ?どの道放って置いてもその魔力の暴走なら勝手に死ぬだろ??なら勝手に死んどけ!じゃーな!」と言って、手をパタパタ振って歩いて行った。
村人達は苦痛の表情で「うおぉぉー!!赤鬼ーー!!」と叫び狂った様に、赤鬼を走り追いかけたが、赤鬼は森の中に消えてしまった。
森の中に村人達の無念の叫び声が何時迄も響いた。
一方ノスフェラはエミアを抱えて、森の中を奥へ奥へ走って行った。
ノスフェラが木々をかき分けながら走っていると、エミアが辛そうな涙声で「なぁ、ノス?私は間違ってたかな?結局誰も救えなかったな、、」と言うとノスフェラは「いいえ、何も間違ってませんよ、ただ、、私があの赤鬼を信用出来なかっただけです。そして貴女の居ない世界を私が想像出来なかっただけです。すまない、、貴女の決断に泥を塗ってしまう形にしてしまって、、」と言った。
エミアは微笑み「ふふっ、ノスは本当に私が好きなんだな!ふふっ、」続けて悲しそうな声で「ノス?色んな生き物がみんな信用出来たら、争いは無くなるのかな?みんなが同じ気持ちになれたら、100年200年先は誰も傷付かない世界になるかな?」と言った。
ノスフェラはエミアに顔を見られない様に少し上を見て、泣きそうな声で「えぇ!なりますよ!100年200年先と言わず、私達でやりましょう!!私が必ず貴女の心臓を取り返しますから!そしたら二人で理想の世界を作りましょう!誰も傷付かない世界を!!」と言った。
エミアは辛そうに咳き込み笑い「はははっ!ゴホッゴホッ!!私は無敵だから心臓無くても動くと思ってたんだよ!でもダメっぽいな、、ゴボッ!ちょーっと眠くなってきたな、、なぁノス??顔を見せてくれよ」と言った。
ノスフェラは立ち止まり、涙でグシャグシャの顔をエミアに見せると、エミアはノスフェラの顔を触り微笑み「ねぇ、生まれ変わってもまた結婚してくれるか?」と言うとノスフェラはボロボロと涙をこぼしながら「もちろん!!私の妻は貴女しか居ませんから、何処にいても、どんな姿でも見つけますよ。でも生まれ変わる必要もありません!必ず赤鬼から貴女の心臓を奪い返して復活させます」と言った。
エミアはゆっくりと頷き、瞼を閉じながら「無理するなよ、、時を待て、、必ず世界が動き出すから、、それまでに私の体が腐って無ければいいがな、、ははっ!少し寝るよ、目が覚めたら平和な世界になってる事を祈ってね。おやすみノス」と言って、静かにエミアの体の力が抜けていった。
ノスフェラは涙ながらにエミアを抱え、歩き古びた洋館を見つけ、そこに入り生活を始めた。
ノスフェラは笑いながら桃達に「ははは、とまぁ、エミアとの話しはこんなもんですかね?少しは食事のスパイスにでもなったでしょうか??」とおどけて見せた。
それを聞いた不死子は「すっごい話しやな!まるで作った物語みたいな話しやな、、」と言うとノスフェラは笑い「ははは!これが作った物語ならハッピーエンドでしょうが、これは映画やドラマじゃ無いですからね、、最後に笑える保証は無いですね、、ふはっ!」と言った。
すると桃が真面目な顔でノスフェラに「緑頭、なんで俺達にその話しをした??」と聞くとノスフェラはニヤニヤして「桃さん、、貴方はこの世界の戦いの果てに何を夢見ますか?」と聞いた。
桃は少し悩み、笑い「んー?よくわかんねーけど、みんなが平和で腹一杯ならそれでいいんじゃないの?」と満面の笑みで言った。
その桃の笑顔と昔見たエミアの笑顔がシンクロしてノスフェラの目に映った。
続けて桃は「旅が終わって、俺が作る宿屋に来たらめちゃくちゃ平和で腹一杯にしてやるけどな!にゃははっ!」と言うとノスフェラは微笑み囁くように「ふふっ!エミア、時が来たみたいですね、、」と呟き、桃達に「少しお待ち下さい!最高のデザートを用意してきます」と言って奥の部屋に入って行った。
続




