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セットに腐りかけのバナナは如何でしょう?

 恐る恐る目を開けてみる。


 目の前で発した光が感じなくなって、そろそろ良いだろうとそ~っとまぶたを上げる。太陽の陽の光が恋しく感じる朝の起床に感じるそれだ。


 普通なら徐々に眠気が吹き飛んで行くだろう、だが俺はと言うと、

「ギャーーーーーーー! アフロおばけえええーーーーー!!」

と、自分でもツッコみたくなる叫び声を上げてしまった。


 まぶたを開けたその先には狂気に満ち溢れたティティアラの姿が有った。


 俺たちが岩を殴り返したからだろう、彼女は全身血だらけの状態で笑うのだ。空に手のひらをかざして、その上には光の球がフワフワと浮遊する。


 その姿はモンピアと同様に角度によっては光り輝くアフロヘアーに見ええしまうのだ。



 この光景は心臓に悪い。



 セイレーンにとっては奥義らしいが、こうも軽々と使用され続けるとただの光の球ジャンキーにしか思えない。目覚めにはキツい光景だ、むしろ心臓発作で死んでしまう様にさえ思えてならなった。



「パンチ一発で岩を粉々に粉砕されるのは想定外でしたが、まずは死ねえええーーーーーー!!」

「我らの拳が岩を粉砕し、破片となってティティアラを襲ったのだ!! 今のティティアラは全身と同じくプライドがズタズタなのだよ、何を話しかけても無駄だ、グハハハハハハ!!」

「……セイレーンってゴリゴリの力押しばっかりじゃないか」

「今頃気付いたか!? セイレーンはただの脳筋あほ種族、考えていそうでいて意外と何も考えていないのが奴らよ! だからこそ貴様の様なイヤらしい考え方と手付きを好む輩を欲するのだ、グハハハハハハ!」

「魔王も言い方には気を付けて、搦手! 搦手だよね!?」



 魔王ばかの余計な一言のせいで足元でセイカとモンピアがモジモジと顔を赤らめる。彼女たちは俺を何だと思っているのか、二人の脳内がどピンクに染まっていることだけは容易に想像が付くと言うものだ。


 小声ながらセイカは、

「キャー、こっちを見ないでくださいー」

と俺をイラッとさせる様な呟きを漏らす。リーでは無いが、ドタマをかち割ったろか? と言い返したくなってしまう。


 自然と怒りから俺の拳が震えてしまうのだ。


 更にはリーたちまでもがセイカたちと同じ挙動を示すのが余計に腹が立ってしまう。俺の拳は、まるでスマホのバイブレーションの如く震えが深刻化してしまった。



「……やっぱ日頃のストレスが悪いんかな? ストレス発散と言えば……そこからは言えねえんよなあ」

「そこは敢えて攻めてみるっぺさ、翔太にはハーレムの資格があると俺は思うべよ」



 ズンダは平均年齢四十代のハーレムは逆に地獄だと気付くべきだ。あの二人は様々な経験を経て一般的な感覚を失いかけている気がする。


 この上級者過ぎる状況は俺の手には負えない。俺は自分にかけられた冤罪は、俺の手には余るのだ。



「グハハハハハハ! 熟れすぎた果実は甘いぞお、腐りかけのバナナと同じだ! 貴様もいい加減にノベナアーツと結婚してしまえ、真の我が甥っ子となるのだああーーー!」

「魔王も手付きがイヤらしいから。それと実の姪っ子を腐りかけのバナナ扱いはどうかと思うよ?」

「そろそろ撃ちますわ! この姿勢も、そろそろ限界なので光の球を撃たせて頂きますわああああーーーー!」



 俺が魔王ばかに文句を言う最中、唐突に上空から絶叫が耳に届く。

 混沌とする状況下でティティアラが突如限界を口にした。


 彼女は表情でも限界を表情して唾を吐き散らす。


 脳筋と評される種族の族長おにが俺に向かって巨大な光のアフロを振り下ろしてきた。あまりにも突然すぎるギロチンに俺が情け無く悲鳴を上げるしかなかった。


「ギャーーーーーーー! 死因がアフロなんて絶対に嫌だああああーーーー!」

と叫びながら俺の体が勝手に動く。


 チャリーンチャリーンチャリーン。


 拳銃のトリガーを引くと視界が悪い中で上手く光の球に銃弾が命中してくれた。映画やアニメに有りがちな素人丸出しの射撃は意外と命中率が良いものだ。


 俺の放った銃弾三発全てが襲いかかる光の球に命中して貫通した。何も考えず反射的に動いただけだった。しかし、その結果は思いも寄らない結果を生み出すのだ。


 俺の銃弾が貫通した瞬間、ティティアラの放った光の球は着火した火薬の如く爆発してしまったのだ。耳を塞いでしまう轟音を鳴らして生まれた爆発は俺たちを光の世界へと誘う。



 思いも寄らないできごとに完全に体が硬直して俺の言うことを聞いてなどくれはしない。


 更に俺の事情など知らんとばかりに、

「自ら腐るくらいなら腐りかけのバナナと結婚してしまえ!」

魔王ばかの押し売り問答が爆発の中で一方的に花を咲かせ始めた。



「この爆風の中でゲホゲホゲホッ! 人を腐らせるなよおおおっゲホゲホ!!」

「グハハハハハハゲホゲホゲホゲホ!!」

「魔王も何か言えよ!」

「ゲホゲホゲホゲホグハハハハハハ!」



 笑い袋かよ!

 魔王ばかの至ってマイペースな態度は他人の苛立ち増幅させる。ようやく周囲の光が薄れていく一方で、魔王ばかの咳き込む姿は道化ぴえろにしか映らないのだ。


 そして、また一人。


 爆発の中からティティアラが俺の悩みの種となって復活を果たす。爆発の最も近くにいた彼女は更に自らのダメージを上乗せして瀕死の状態での戦線復帰だった。


 埃と煙を手で払い除けながら俺の前に再び姿を現してくる。



「……極悪すぎますわ。如何に私と言えど至近距離の爆発は流石に芝崎様を鬼畜としか言うしかありません」

「人聞きの悪いこと言わないでくれる? 元を辿ればティティアラさんが原因なんだし」

「ここは責任を取って娘のティアラと結婚して頂く他に妥協案はございません」



 またそれかよ……。



「絶対に嫌だとは言えないけど間に合ってます」



 ティティアラは付け足すように、

「よろしければセットで私も如何ですか?」

と埃まみれの姿でスカートの裾を上げて淑女の礼を体現してくる。



 ファストフードのセット感覚で薦めてくる辺り、ティティアラは真剣に自分の娘が結婚できないと心配しているのだ。そこに便乗してくるその母親が優雅さを極めるは違和感の塊な訳で。


 ティティアラは空中でクルリと回転して笑顔で決めポーズを取る。


 俺が本心から合コン荒らしのと結婚を拒否したら彼女の笑顔がどうなることか。般若の如く豹変して俺を恐怖のドン底に叩き落として来るのではなかろうか?



「えっとお……結婚できない事情がありまして」

「その事情をお聞きしても宜しくて?」



 即座に理由を求めるティティアラが恐ろしい。

 一種族の族長おにとして当たり前の対応ではあるが、俺は返答を躊躇ってしまう。チラリと魔王ばかに視線を送る。何も考えていないのだろう、むしろ覚えていないのかもしれない。


 そんな好都合な状況を自ら手放すことになろうとは。


 背に腹はかえられぬ、断腸の思いで俺は涙交じりに、

「……魔王と約束がありまして」

「え、そっちのご趣味がお有りなのですか?」

「違あああーーーう!! ……ゴホン、手助けして貰った条件に魔王の姪っ子さんと結婚する約束なんです」



 遂に言ってしまった。

 やはりと言うべきか、魔王ばかは俺との契約をスッカリ忘れていた様で、

「おお、そうであったそうであった! グハハハハハ、貴様は正真正銘の我が甥っ子となる約束であったわ!!」

と想像通りだった。


 自らバカをカミングアウトする姿が妙に清々しくて、魔王ばかポーズで堂々と高笑いする姿は流石の一言だ。


 下からはセイカが嬉しそうな顔を見せる。

 キラキラとした乙女の様な眩しい笑顔をジャストフォーが向けてくるのだ。その周囲で同情の眼差しを向けるリーとズンダの表情に哀愁が漂う。



 合コン荒らしとの結婚を避けるためにジャストフォーを容認する。



 この決断しかない自分が悲しい。

 ティティアラの売り込みがここまで強行で無ければ両方とも素っ惚けられたのにと、これまでの自分の努力は何だったのかと、込み上げる涙を抑えきれ無くなってしまう。


 それでも、俺の悔しさを足蹴にして魔王ばかは笑い飛ばすのだ。



「グハハハハハハハハ! ならば両方と結婚すればいいではないか、我との約束など些細なことよ!!」

「ゲスーーーーーー……」



 この世界は一夫多妻も許容される様で。


 完全に墓穴を掘った自分の行動に俺は激しく後悔を抱くことになる。これなら最初から本音を言えば良かったと俺は燃え尽きた灰の如く真っ白になって大きく肩を落とすのだった。

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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