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合コン④

 居酒屋『アラフォー水産』


 俺が異世界に移住して初めて合コンを開いた思い出の居酒屋。

 そしてセイカに尽くを破壊されたトラウマの場所である。


 前回は長方形のテーブルだったが、今回は掘りごたつで男女が席を囲う。



「グハハハ! われが囲う至高の美女たちと合コンできて幸せであろう!?」



 テーブルの隅で魔王は大きな声を上げて笑っていた。


 両手を広げて彼は自身がセッティングした合コンを自慢するのだ。魔王は生きていた、偶然発せられた合言葉で剣によって心臓を貫かれた彼だけど、実は魔王には心臓が二つあったそうで。


 魔王は一つだけでも心臓が残っていれば死なないのだそうだ、だから今もなお生きている。


 そして約束を守って合コンを開いてくれた、と言う訳だ。


 目の前には絶世の美女美少女が並ぶ、正に魔王の言う通りだった。テーブル越しにの女性たちはキラキラと輝いている。


 本来であればガッツポーズをしたいところな訳で。


 しかし俺たちは素直に喜べずにいた。

 隣に座りリーなどは露骨にゲンナリとして、

「……翔太あ、あの一番隅っこの子なあティアラちゃんなんよ」

と俺に教えてくれるのだ。


 噂の合コン荒らしのティアラちゃんは魔王のお気に入りだったらしい。



「と言うかさ他の子たちって……」

「おう、ジャムズリちゃんとその職場のお友達なんよなあ。まさかジャムズリちゃんまでもが魔王のお気に入りだったとは……」

「なんだ、お前たちは我がハーレムのメンバーと顔見知りだったのか?」

「以前、一緒に合コンをしたんですよ〜」



 ジャムズリはおっとりとした口調で魔王の質問にそう答える。


 それに対して魔王は、

「ほお……」

と如何にも何かを含ませて声を漏らすのだ。


 またジャムズリと合コンできることは嬉しい、何よりもセイカ抜きと言うのが素晴らしい。しかし、噂の合コン荒らしと魔王のセットがここまでキツいと思いもしなかった。



「セイカさんが魔王の側近で姪っ子って知って、じゃあジャムズリちゃんは何なんだろうって思ってたけど。まさかジャムズリちゃんも魔王の知り合いだと思わなかったよ」

「どうもです〜。サキュバスのジャムズリです。お姉ちゃんとは義理の姉妹なんですよ〜。芝崎さんのことも今後、お兄ちゃんって呼びますね〜?」

「うっ、幼稚園合コンのトラウマが……」



 セイカによって俺は戸籍上、彼女と兄妹となった。


 その事実が、まさか彼女不在の合コンでも悪い方向に作用するとは思わなかった。俺はトラウマで頭痛を覚えて頭を押さえながら大きなため息を漏らす。


 流石に戸籍上の兄弟を狙ったらダメだろうと、落ち込んでしまった訳だ。


 そうなると、俺が狙えるのはティアラちゃんを除いた他の二人な訳で。俺の照準はジュムズリの友達二人に自然と移っていった。


 前回はセイカが邪魔で美少女と言う印象しか残っていないけど、しっかりと見たら記憶以上に美少女の二人をガン見していた。



「なんだ、貴様はノベナアーツと兄妹なのか? では結婚などせずとも正真正銘、我の甥っ子ではないか、グハハハ!」

「無視無視。ねえねえ二人とも、どうして魔王の知り合いなのに病院で働いてるの?」

「翔太の目が本気だべ。本気で女の子を狙う狼の目付きになっていくべさ」

「今日は久しぶりにまともな合コンだかんなあ。っしゃあ、俺も負けてらんねえ! ジャムズリちゃんは結婚願望とかあんのか?」



 和気藹々としつつも殺伐とした空気に場が包まれていく。


 ジャズリムと同僚の二人。

 青い髪をストレートに伸ばした凛とした印象の女の子とウェーブのかかった真っ赤な髪をリボンで纏めた小麦色の女の子、二人に話しかけると悪くない反応が返ってくる。今回は当たりの合コンだと誰もが思うだろう。


 後は自分のことばかりではなく相手の話も聞きつつ、前回成し遂げられなかった連絡先交換に漕ぎつければいい。


 俺はギラリと光る眼光を隠しつつニッコリと笑顔で会話を続けた。リーも俺の勢いに続く、ズンダは若干だけど要領の悪さを見せるも相手の感触は悪くない。


 魔王は、ただバカみたいに笑うだけ。


 強いて言えば俺との血縁関係を合コン中にグイグイと強調するのが面倒くさいだけで、邪魔だと言う訳でもなし。



 いける。

 誰もがそう確信できた雰囲気が流れ始めていた。



「ねえねえ、アタシも会話に混じっても良いかなあ〜?」

と満を持して巨星が動き出した。


 この雰囲気を勝負どころと判断したのだろう、噂の合コン荒らしが俺たちの会話に乱入を果たした。


 強引に扉をこじ開けてティアラが参戦してきたのだ。


 合コン荒らしのティアラはケバケバしいディスココスチュームを身に纏って、あだ名そのまんまのティアラで髪を着飾った女の子。


 七色に染め上げたロングヘアーは彼女に毒々しさを付け足す様だった。


 その容姿からも察して、できれば彼女の参戦をご免被りたい俺は、

「そう言えば魔王はサキュバスとセイレーンとマーメイドの女の子に声をかけてくれるって言ってたよね?」

と敢えてリーを挟んで魔王に話題を振ってみた。


 敢えて魔王から女の子の紹介をして貰ってティアラの参戦を阻む作戦だ。



「グハハ! マーメイドは声をかけはしたが地上の合コンは無理といいよってなあ、断られた! ここのいるのはサキュバスとセイレーンだけよ!」


 魔王は腕を組んで魔王ポーズのまま豪快に教えてくれた。


 水中生活が中心のマーメイドを地上の居酒屋に誘うなよと浮かんだツッコミは敢えて心の中にしまうとしよう。この魔王はツッコンでも性格的にダメージを受けないタイプだ。



「ジャズリムちゃんはサキュバスかあ、他の二人は?」

「ウチたちもサキュバスなんです、ね〜?」

「そうだよねえ〜」

「ヤバい、やらかした」



 青髪のウチっ子が隣に相槌を打って赤髪の子はそれに同意を示す。


 そして当時にリーから肘打ちを喰らって、ズンダからは舌打ちを投げ付けられてしまった。俺の不用意さでティアラに会話のチャンスを与えてしまったことに対する二人の怒りだ。


 リーたちは、

「余計なことすんじゃねえよ」

や、

「流石の俺もそれはないと思うっぺさ」

などと非難の言葉を容赦なく投げかけてくる。



「アタシだけがセイレーンなんだよねえ。自慢の歌声は喉をビールで湿らせないと出せないから」

「……もうガラガラ声じゃないか」

「はあ〜〜? 今なんか言ったあ?」



 ティアラは見た目の通り地獄耳だった様で。


 彼女はわざとらしく耳に手を添えて俺を崩しにかかってくるのだ。ティアラのその様子に合コン荒らしと呼ばれる所以、何となく察しがついてしまう。


 彼女は口を開く際の仕草や表情がとにかくわざとらしいのだ。


 魔王は、

「グハハ! 流石はティアラよ、その面倒くさい性格も相変わらずか!?」

と彼女の危険性を把握していると笑ってカミングアウトしていた。


 魔王の言いっぷりに俺たち男三人の心は決まった、アイコンタクトで魔王にティアラを任せようよ決意を改めた。


 しかし、そんな俺たちの決断を遮る様にジャムズリはティアラに話しかけていた。やはりと言うべきか、見た目通りと言うべきか。


 ジャムズリはティアラの腕を引っ張っておっとりとした笑顔で話しかけてた。



「ティアラちゃんも一緒に話そうよ〜」

「ジャムズリって〜天然で同性をイラッとさせるタイプだよねえ〜。ちょっとウザいから話しかけないでくれる〜?」

「うおっ……とお? こんなに堂々と場を荒らす女の子って普通にいるものなの?」

「んなわきゃ無えだろうが。流石に俺もコレはドン引きなんだけどよお」

「俺もリーに同意だべ」

「ティアラの毒々しい性格は我のツボなのだ! いいぞ、もっとやれい! 女同士のキャットファイトとやらを我に見せてみよ! グハハハハハハハ!」



 魔王も合コン荒らしだったらしい。


 ティアラの言葉に、

「ひ、酷いよ〜ティアラちゃんってば〜。この間の合コンで連絡先交換した男の子たち全員からブロックされたことを根に持ってるの? グズンッ」

とジャムズリは言い返す。


 正に一瞬だった。


 そのジャムズリの言葉に俺たち男三人は一瞬で魔力メーターの電源を切った。

 ポケットに手を伸ばして阿吽の呼吸での行動、電源を切れば魔力メーターが故障したと言い張れるからだ。


 俺たち三人は合コンにも関わらず大切な連絡先交換を諦めてしまったのだ。魔王には二人を止める気が皆無で、他の女の子たちは見るからに動揺した様子を見せる。


 俺たちは何のために今日ここの集まったのだろうか?



「そうやって〜ジャムズリは泣けば男に同情されると思ってるんでしょう〜? ぶりっ子過ぎてキモい〜」

「そんな風に思ってないよ〜。私はただ純粋にティアラちゃんと仲良くなりたいの〜」

「ジャムズリってお姉さんが魔王の側近だからって調子の乗ってるよねえ?」



 ティアラが毒を吐いて、ジャムズリは泣きじゃくりながら反論を繰り返す。泣き顔でティアラにしがみ付いて、

「何でそうなの〜? お姉ちゃんは関係無いよ〜、ティアラちゃんは私と親友でしょ? そうだよね!?」

と完全に合コンを無視して女の友情を確かめだす始末だ。


 その様子に魔王を除く俺たち三人は確信してしまった。


 これは恐らくティアラによる新手の荒らし行為なのだろう。

 自分が上手くいかないのであれば周りも巻き込んでしまえ、と言う考えなのだと見える。集まった女の子たちの意識をティアラに向けさせる作戦に違いない。


 合コン荒らしの考えを見抜くと行動は早かった。



「店員さーん、注文いいですかー?」



 場の雰囲気を取り繕うべく手を上げて店員を呼んだ。


 ここからが本当の合コンバトルロワイヤルの開始となるのだ、その隙にズンダは俺の送ったアイコンタクトでゴソゴソと裏で準備を開始していた。


 コソッと席から立ち上がって厨房に入ったズンダを見て、

「グハハ! 合コンこそ真の殴り合いよ!」

と笑い飛ばす魔王には俺たちが手に取るように分かったのだろう。



 声がデカいよ……、ティアラにバレたらどうするのさ。

お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m


また続きを読んでみたいと思って頂けたら嬉しいです。ブクマや評価ポイントなどを頂けたら執筆の糧となりますので、もし宜しければお願いいたします。

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