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第6話

   

 この話を牧田から聞かされる度に、僕は心が重くなる。

 彼には絶対に話せないけれど、実は僕は、彼の言うところの『雪女』の正体を知っているからだ。


 あれが雪の日だけ現れる理由も単純で、雪が降るとグラウンドが使えなくなり、部活が休みになるからだった。

 理屈の上では雨の日も同様だが、牧田が初めて『雪女』に気づいた時点で、既に冬の真っ盛り。雨ではなく雪ばかりだった。そして降雪シーズンが終わる頃には大学受験も終わっており、もう彼は予備校には通わなくなっていた。

 そんな感じで、部活が休みの日には、誰も部室に来ないので……。

 一人で女装を楽しんでいたのだ、この僕が。

 つまり、彼の『雪女』の正体は、他ならぬ僕だったのだ。


 まさか見られているとは思わなかった。

 牧田の言う通り、窓の外は誰も来ない裏庭だったので、完全に油断していた。

 女性用かつらもセーラー服も、自分の部屋には置けないので――親が勝手に入ってきて掃除をする可能性があったから――、むしろ学校の部室のロッカーの方が安全だった。誰もいない時に取り出して、女の子に成り切って、鏡に向かってポーズをとって遊んでいたのだ。

 ちょうど鏡の位置的に、いつも窓に背を向ける格好になったのが、不幸中の幸いだった。


 受験勉強のストレスを発散する、という意味もあっただろう。女性と接する機会がないから――女性に飢えていたから――、自分自身が女性になってしまおう、という気持ちもあったかもしれない。

 どちらにせよ、僕はホモでもゲイでもないので、自分が『女』になって男と付き合いたい、という気持ちは皆無だ。

 だから……。

 今でも『雪女』を探してしまう、という牧田の執着心が怖い。

 もしかしたら、僕と親しくなったのも、無意識のうちに正体を察したからではないか。そのうちにハッキリ気づいて「男でも構わない!」と言って、迫ってくるのではないか。

 考えただけでも、本当にゾッとする!




(「背中美人の雪女」完)

   

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