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第3話

   

「なるほど。セーラー服の雪女が、その裏庭で雪遊びしてたのか」

「違う、違う。面白いものというのは、厳密には裏庭じゃなくて……」

 牧田は大袈裟に手を振って、村山の早合点を否定する。

「……裏庭に面した一室だ。教室にしては狭かったし、ロッカーもたくさんあったから、たぶん何かの部活の更衣室だったのだろう」

「おっ、更衣室の雪女か! なんだか艶っぽい話になってきたな。いや『艶っぽい』どころか、覗きとか盗撮とか、犯罪臭もしてきたぞ」

「盗撮はしていないし、覗きにも相当しないはずだ」

 少し自信なさそうに、それでも村山の言葉を否定する牧田。

「おそらく彼女は、油断していたのだろう。裏庭に面した部屋だから、外から見えるわけがない、と。それで窓のカーテンも、きちんと閉じておらず……」

「雪女の着替えシーンが見えたのか?」

 身を乗り出す勢いで村山が目を輝かせると、牧田は首を横に振る。とても残念そうな表情だった。

「いや、更衣室の中が全部見える角度ではなかったからな。見えたのは彼女が窓の近くに来た時だけで、いつもセーラー服姿。しかも背中側だけだった。それでも……」

 彼の顔から失望の色が消えて、口元に笑みが浮かぶ。

「……彼女が美人だったのは間違いない。何しろ伝説の雪女だからな」

「背中美人とか、後ろ姿美人とかってやつか」

「そういう言い方はよせ。それって『後ろから見たら美人だと思ったのに、前から見たらそうでもなかった』ってニュアンスの言葉じゃないか」

「でも実際、牧田はその女の顔を見てないんだろ?」

「ああ、いつも後ろを向いていたからな。セーラー服と長い黒髪だけだ」

「それに、ここまでの話に『雪女』要素はないぞ? ただの女子高生だろ、それは」

「いやいや、そこがこの話のポイントだ。俺は何度も目撃したが、彼女が姿を見せるのは……」

 もったいぶった口調で、牧田は少し()を取ってから告げた。

「……雪の日だけだったのだ!」

   

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