24 お仕事をもらいました!
ぐうっと唸るご主人様。
「……私では、頼りないですか? 信用できないですか?」
私がしょんぼりと肩を落とすと、ご主人様は慌てたようにそれを否定する。
「そうではない! 余は……ライラが心配なのだ。ライラが余を失うことを恐れるように、余もライラを失うことが恐ろしいのだ」
やはりダメなのだろうか。私が落ち込んでいると、ご主人様が大きくため息をつく。
「……わかった。その代わり、毎日余に連絡せよ。……ルドラ、トカゲは二匹だ」
「かしこまりました。ダグラスに貸していたトカゲもライラ様につけましょう」
私は思わず目をぱちくりさせてしまう。これは、お許しを得た、ということかしら。
「ライラ……本当はこんなことをやらせたくはない。だが……実際人間たちの動向が気になるのも事実だ。ライラに人間界の状況についての情報の収集の仕事を与える。ただし、毎日連絡魔道具にて余とサーシャ……この淫魔族に報告すること」
「よろしくねぇ、ライラちゃん」
私はこくこくと頷く。
「無理に聞き出そうとはするな。これまでと同じような行動をとるように。……万一ライラが魔界からきたことが発覚しそうになれば、直ちに連絡せよ。その時は、何を言おうともここへ戻す」
「はい。ご主人様のおっしゃる通りに」
私はドキドキしていた。今まで私がご主人様のためにできることなんて、ハーブティーを淹れることだけだった。それが、こんな大役を賜るなんて。
ダグラス様の肩に乗っていた黄色いトカゲが、私の右の肩にぴょんと乗り移ってきた。そして、左の肩に乗っていた緑のトカゲに挨拶するようにキキッと鳴く。
「……あの……もし勇者に会ったらどうすれば……」
ご主人様が一瞬ぴくりと肩を跳ねさせる。
「……何もしなくてよい。ライラはどういう理由で王都に向かっている予定だったのだ」
「勇者に会いに……レオナルドたちは、私が勇者のファンだと思っているようです」
「であればそのように振る舞っていればいい。……あまり深くは接触するな」
私はコクンと頷く。
本当に、ご主人様は勇者に会わなくていいのだろうか。でも、勇者の魂は……。
私が考えていることが分かったのか、近寄ってきたレイ様が私の頭をくしゃりと撫でる。
「ライラちゃん、勇者のことは大丈夫だ。ライラちゃんの仕事は、人間から聞いたことを全部報告すること。それ以外は考えなくていいんだ」
「……はい。わかりました」
そうよね。私にそんなたくさんのことができるとは思えない。勇者のことは、勇者に会えたときに考えることにしよう。
「……ダグラスよ。お前はどうする?」
「……どうするとは……」
壁際で空気のようになっていたダグラス様は突然話を振られて動揺しているようだった。
「……たとえば、ライラに同行するというのは……」
ダグラス様は目をぱちくりさせる。
「突然俺が現れれば、人間は警戒するかと」
「……しかし、ライラに何かあったときすぐ転移できる存在が……」
「魔王様。その時はライラ様が魔界からきた者であることが発覚した時でしょう。その時はトカゲの連絡で私が転移し、ライラ様を連れ戻します」
「……側で見守る者も必要ではないか?」
「何のためにトカゲを二匹つけるのです。そこらの人間に遅れをとることなどありません。十分です」
ご主人様は心配しすぎだわ。ダグラス様にはもっと大事な仕事があるはずで、私のお守りなんてさせられない。
「ご主人様、私は大丈夫です。何かあれば、すぐに逃げます」
私がそう主張しても、ご主人様は不安そうですぐには頷いてくれない。ご主人様がこんなに心配性だったなんて知らなかった。けれど、それだけ大事にされているのだと思うと嬉しくなる。
「私は必ずご主人様のもとへ戻ってきます」
「……わかった。その言葉、忘れるな」
やっと、ご主人様は納得してくれたようだった。
私はルドラ様から連絡魔道具を受け取り、人間界で気をつけることの説明を改めて受ける。
正体が発覚しないようにすることを何よりも優先するよう言われ、私は深く頷いた。
「……それではダグラス、人間界へ送る役目は任せていいですか?」
「はい。泊まっていた宿屋の裏手なら人目につかないでしょう。そちらに転送します」
ダグラス様は頷く。
「じゃ、ライラちゃん、行きは一緒に行きましょうねー」
お姉様が私の手をぎゅっと握ってくる。私もその手を握り返す。
「はい。……あの、お姉様のことはサーシャ様とお呼びした方が?」
「んーっ。私は今まで通りお姉様がいいなー」
お姉様と話していると、色々と今後のことを話していたご主人様たちのお話も終わったようで、ダグラス様が近づいてくる。
「それでは、お二方を転送します」




