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14 私はいつ解放されるのでしょう

 レオナルドに連れて行かれたご飯屋さんはとても美味しかった。

 

「美味いだろ。この店は魔物食出してくれるんだよ。卵もニワトリじゃなくてコカトリスの使ってんだ」


「え? 卵って……」


 コカトリスが普通ではなかったのか。ニワトリって……どんな鳥なのだろう。


「こんだけ美味いからまぁ……魔物が全然いなくなっちまうのも困るんだよなぁ」


 レオナルドは私の三倍くらいの量を食べている。人間はたくさん食べるのね。


「ところで……」


 レオナルドが何か言いづらそうに目を泳がせている。まさか、私が魔界から来たのがバレてしまったのだろうか。


「レイラちゃんは、恋人とかいるのかなーなんて……」


「こい……びと?」


 恋人というと……ご主人様にとってのライラ様のことだから……


「いません……ね」


 私にそんな存在はいない。もしかしたら、勇者が現れなければ、いつか私とご主人様はそんな関係になったのだろうか。

 よくわからないけれど、そう考えるとなんだか胸がきゅっとする。


「っ! そーかそーか。そんで……今レイラちゃんは十七歳なんだよな。ちょっと十ほど歳が離れてるけど……年上ってどう思う?」


 年上……。魔界で会った魔族はみんな年上で、ご主人様なんてそれこそ何百歳年上か……。十の差なんてないのと変わらない。


「十くらいなら……あまり変わらないというか」


「っ本当か! あの」


「だーんちょ? 呑気にゆったり昼食なんて、いいご身分ですねぇ」


 レオナルドの後ろに立った人間の男が、レオナルドの頭を掴む。

 この声はさっき聞いた気がする。よく見るとレオナルドと同じ服を着ている。


「おっま……いいところだったのに!」


「何がですかどこがですか。後処理全部こっちに押し付けて何やってんですか」


「俺だってレイラちゃんの調書とったっつーの」


「本当この団長はああ言えばこう言う……こんなのが上司だなんて信じらんない」


 二人ともよく喋るのね、と二人を交互に見ていると、レオナルドの後ろに立っている人間が申し訳なさそうな顔をする。


「すみませんね。なんか団長に変なこととかされてません?」


「多分……されてないかと」


「ならよかったです。……ほら団長、楽しい楽しい仕事に戻りましょうねぇ」


「いやちょっと待てって。なぁレイラちゃん、今日はこの町に泊まるんだろう? 宿屋はもう決めてるのか?」


 私はふるふると首を振る。

 すると、レオナルドはニヤリと悪戯っぽく笑う。


「そしたらこの通り沿いにある「憩いの宿」に泊まるといい。俺たちもそこに宿泊してるから安全だ。女の一人旅は狙われやすいからな」


「団長は危険じゃないんですか?」


「何言ってんだ。俺は騎士だぞ」


「どうだか……」


「あ、ありがとうございます。行ってみます」


 宿屋の名前まで教えてもらえたから、すぐに見つかるだろう。思いがけず今日の宿泊先も決まりほっとする。時間的には次の乗合馬車に乗ってもいいのだけれど、さすがに疲れてしまった。

 王都まであとどれだけかかるだろうか。


「レイラちゃんも王都に行こうとしてるんだから、一緒に行けたらいいんだけどなぁ。さすがにそれはできねぇんだよなぁ」


「当たり前です。公私混同はダメだと言ってるでしょう」


「だからできねぇって言ってるじゃねぇか。そしたらレイラちゃん、名残惜しいけど先行くわ。支払いは俺がやっとくからゆっくりしていきな」


「えっそんなわけには……」


「遠慮しないで大丈夫ですよ。この団長、金はちゃんと持ってますから」


 商人様に人間から食べ物をもらってはダメだと言われているのだ。

 断ろうとしたのに、止める間も無く二人はさっさと行ってしまう。私は不本意ながら食べ物をもらったことになってしまった。


 うーん……。このことは商人様には内緒にしよう。




 お店を出た後は、レオナルドから聞いた憩いの宿を探すことにした。

 通りを歩いていると、昨日泊まった宿と同じような絵が看板に書いてある建物を見つけた。ここかな?


 建物の中に入ると、やっぱり台の向こうからひょこりと人間が顔を出す。


「あの……ここが憩いの宿ですか?」


「はいそうですよー! ご宿泊希望の方ですかー?」


 頷くと宿泊する日数を聞かれる。一日だと言うと、宿屋の人間は少し悩んだような顔をする。


「んー。もしかして明日この町を出る予定です? なんか今日この町へ向かった乗合馬車が盗賊に襲撃されたとかで、明日は乗合馬車、出ないらしいですよ。残党が狙ってくるかもしれないからってことで。騎士様たちが明日周辺回って問題なければ明後日には通常に戻るみたいですけど」


「そうなんですか……。でしたら、宿泊は二日でお願いします」


 明日は乗合馬車がないと言われてがっかりする。王都に着くのが遅くなってしまう。


「はーい。そしたら明日の結果がわかったらお教えしますねー」


 人間から鍵を受け取って部屋へ向かう。

 疲れていた私は、すぐにベッドに倒れ込む。昨日と同じだわ、と少しおかしくなる。


 町の中でやることなんてないから、このまま部屋にいてもいいのだけれど。閉じようとする瞼に抗いながら考える。

 でも、せっかくだから町の中を色々見て回ろうかしら。魔界に戻ったら二度とこられないかもしれないし。


 私は少し部屋で休んでから町を回ろう、と思って瞼を閉じた。

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