第一章「貼リ紙ノ向コウ」 ♯3
睦月と日暮はドアから列車に乗り込んだ。まだ、車内に人は少ない。
そこでふと、日暮が苦々しく呟く。
「・・・せっかく車体は立派なんだから、どうにかしてほしいよ、・・・この座席。」
睦月も黙って頷き、同意した。
そう。この列車、外装に金をかけすぎて、肝心の中身がもの凄いことになっているのだ。
なぜなら、どこかの小学校から貰ってきたような木の背もたれのついた鉄のパイプ椅子が床に固定されているだけだから。固定の仕方が甘かったのか、発車・停車時にグラグラ揺れるものや、ひどいものだと金具が外れて車両の端から端まで滑っていくものもある。
二人の乗った車両は運悪く、その「ひどいもの」が殆どだった。だが、その分人があまり乗ってこないので、朝にさほどストレスを感じずにいられる。
さぁ、どこに座ろうかと全体を見渡していたその時、発車のベルが大きく鳴り響き、車体が大きく揺れた。そして、二人目がけて固定されていない椅子が襲いかかってきた。日暮はスーツケースでガードしたのだが。
「った・・・・・・!」
睦月は思いっきり膝をぶつけてしまった。
「昨日も同じことしてたような・・・」
日暮が、睦月を横目で見ながら続ける。
「や、一昨日もだったかな・・・」
日暮はさらに続け、笑う。
「今月ずっとこうだったような・・・」
「黙れ。ったく、少しは心配したらどうだ」
と、睦月は弱々しく、しかし憎々しげに言い返した。すると日暮は即座に表情を変え、その黒い瞳を涙で滲ませ、すり寄ってきた。
「大丈夫!?睦月君!あらいやだ、私が守ってさしあげればこんなことには・・・私って罪な女――」
「オカマの間違いだろが、ボケ」
睦月はさっき買った「お天気日報」を顔に投げつけてやった。
立ち話もそのくらいにして、一番後ろの窓際の席に、睦月は晴れ晴れとした表情をして、日暮は投げつけられた新聞の一面に目を通しながら、向かい合うようにして座った。
「なんか面白い記事あったか?」
と、おしまいのページの全面広告に目を通しながら睦月が聞いた。日暮は新聞を返し、おにぎりを取り出しながら「お前が言ってた台風のこと以外にゃ、ねぇな」と答えた。
睦月はカツサンドを取り出し、頬張りながら面白くなさそうに「ふーん」と言った。
「どうせまた、『操作部』の連中だろ?」
おにぎりの梅干しの種を吐き出しながら日暮が言う。
「まぁ、しょうがないっちゃ、しょうがないさ。あいつらは俺たち『設定部』と違って、人少ないし」
睦月がフガフガと言った。睦月の目には、哀れみの感情がこもっていた。
「あの部、誰も入りたがらないからなぁ・・・」
日暮がコーヒー牛乳片手にため息をつき、言った。その目には哀れみの意がこもっていた。
彼らの会話を聞く者は、ここには、いない。
睦月がおもむろに口を開く。
「大体さ、」
窓の外に目を移す。が、地下から外の景色が見えるはずもなく。ガラスは疲れきった彼の姿を静かに映し出していた。
視線は、自然に上を向いた。外観に合わせて、天井には青空が描かれている。もちろん、太陽は見えない。垂れ下がっている裸電球の明るさに目を細めた。
「天気を操ろうって事自体、おかしいと思うんだけどな、俺は。」
日暮も天井を見上げて言い返す。
「でもさ、実際にそれがあってるんだから、しょうがないだろ。」
更に続ける。
「ここ日本の気象を、まさか天気予報の情報流してるトコの裏の人間が決めてるなんて知ったら・・・・・・国民は、どう思うかな」
睦月は笑う。
「隠れてやってるから、『裏』機関なんだろ?」
・・・ごめんなさい。一週間に一回更新するとか言っておきながら、もう一ヶ月くらい更新してませんでした。どうもすみませんでした。せっかくメッセージもらったのに・・・ホントに、申し訳ないです。それに、短いし。
言い訳になると思いますが、一応、この小説、手書きでノートに書いてて、それをもう一度打ち直してる訳で。結構、これがたいへんなんですわ。ノートの方は♯8くらいまで進んじゃってて・・・!こりゃ、やばいですな(汗)。
ま、そんな訳なんです、ホントにホントに、すみませんでした。
では。また次回。