ゲームのその後
そんな終わり許せない。
私は顔を上げました。
泥が垂れてきて気持ち悪いです。
髪をかき上げます。
横からタオルが差し出されました。
「お嬢。大丈夫?」
「容赦無くかけられたから。ベトベトじゃない。」
「だって、かけろってお嬢が言うから。」
私の周りを複数人の人が囲んでいます。
「いいわ。このままお風呂入るから。準備してくれてあるのよね。」
「準備できてるよ。」
「着替えもおいてあるよ。」
口々に声がします。
「じゃ、入ってくるわ。出たら今後の打ち合わせしましょ。」
しゃべると口がじゃりじゃりします。
私は口に入った泥をペッと吐き出しました。
その行動を笑う声もしましたが、もう貴族令嬢じゃないのだから良いのです。
だって、私は平民の、この娼館のアドバイザーとなるのですから。
種明かしと言いますか、私はこうなることがわかっていました。
なぜなら主人公に言われたからです。
曰く
「あんた転生者でしょ?私ハーレムエンド目指しているから。娼婦落ちコース決定だから、あがいても無駄だって。」
だそうです。
私は知らんぷりしました。
正直ルート分岐まで暗記している人に対し、私はほぼ知らない状態でしたから。
負けは決定です。
でも教えて貰えた事は感謝しました。
今まで三つに分類していた対策を一つに纏めることができるのですから。
でも、支援を急に止めると怪しがられるので、他二つエンドへの支援もそこそこしつつ娼婦エンドへ本腰を入れることにしました。
ゲーム強制力が働いて登場人物の心証や行動を変えることはできないのは、試行錯誤の結果わかりました。でも、実生活にはゲームに出てこない人もいるのです。
それこそ、学校の用務員さん。庭師さん。出入りの業者。等など名前はないけれども生活を支えてくれている人達、そういう人たちにはゲームの強制力は働かず、私に普通に対応してくれました。
私はそういう人を味方につけていくことにしました。
月一回の王子のプレゼント交換で培ったお菓子の知識を駆使し賄賂を送り続けました。
モブ過ぎて結末にも作用しなさそうな人ほど覿面でした。
でもね。
普通の感覚で言ったら、品行方正に学校生活を送り、学校への支援を惜しまない公爵家の娘に対し、天真爛漫の皮を被ったただの傍若無人な平民の娘では、勝負にならないでしょう。
私には同情票も集まったのか、裏ではモブの皆様がそれはそれは優しくしてくれた。
お陰でモブ職員からの情報を得られ、後半の学校生活は、前半ほど主人公の突撃を食らわなくてすみましたし、監視カメラをつける場所の助言も得られましたし、快くつける作業もしてくれました。
殿下達は、乙女ゲーのテンプレで生徒会員でしたけど、「監視カメラつけろ」と、ざっくり指示を出すだけでしたからね。
どこにどんな風につけるかはモブ職員の裁量に任せられてましたから、そこは私の思うままでした。
断罪一ヶ月前には殿下達の不貞現場が見事に揃い調査書に纏まってました。
悩みましたが、断罪一週間前に父に最近の殿下の動向を報告し、不貞の報告書を一部渡し、保身に使ってくれるように言いました。