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ざまぁ失敗テンプレ転生悪役令嬢はもがく  作者: 佐藤なつ
番外編

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82/84

今は茶飲み友達、あなたしかいない。



この世界は私と常識が違います。

この世界には、わかり合える人がいません。

だけども、この人とも真の意味でわかり合える気はしないのです。

私と同じ転生者。

お茶を楽しむ主人公ちゃんを恨めしげに見そうになるのを堪えながら、

「そうね。あなたも元気そうね。」

喉を潤して答えました。

「お陰様で。毎日楽しく暮らしているわ。」

主人公ちゃんはキラキラしながら答えてくれます。

とてもとても楽しそうです。


現在主人公ちゃんは魔力タンク兼、私のアドバイザーとして働いてもらっています。

普通の状態になった主人公ちゃんはまぁまぁ普通の人でした。

むしろ感覚としては元対象攻略者よりも共感できる人でした。

多分、前世が同じだからじゃないでしょうか。

あくまでバーサク状態でなければですが・・・。

だからこうしてお招きしてお茶をして会話を楽しんだりしています。

お互いに蟠りはありますが、それを飲み込んでお茶をすることはできます。

と、いうか、私には主人公ちゃんくらいしかお茶する相手がいないのです。

女王としては宴やお茶会は開きますけど、仕事です。

話の裏をとって、情勢にアンテナ張って。

緊張しまくるだけで、腹割って話すなんて事はできません。

そうすると消去法で残るのが主人公ちゃんなのです。

頑張って頑張って生き延びたのに、曾ての敵のみがお茶友達。

何だ、この結末。

何だか世の中が世知辛い。


世知辛いのは今に始まったことじゃないですけどね。

いや、毎日楽しいって胸張って言える主人公ちゃんの言葉を鵜呑みにすれば、幸福度は彼女の方が上でしょう。

おかしくないですか?

不満が出てきそうなのをお菓子の甘みでごまかします。

「ふふふ。不満そうね。」

主人公ちゃんは余裕の笑みです。

おかしい。

形勢がおかしい。

「なぜそう思うの?」

恨みがましく聞いてしまいます。

「なんとなく。って言うか、全身で出てますよぉ。凄い頑張ったのに、なんでこんな目にあってるの?って顔でしょ。」

悔しいけども当たりです。

「いや~、仕方ないよ。」

ドンマイ。

って言いながら背中をたたかれます。

突然オバチャンになってます。

「多分ね。お互いにどん底見たじゃない?どっちも酷い目にあったけど、私の方がつい最近まで酷い目にあってた訳よね。だから、もう毎日生きていられるだけ幸せって気持ちなの。今の私はね。」

「あぁ、そうですか。」

そういうレベルの話ですか。

確かに水球みたいなのに閉じ込められて力だけ吸われていましたよね。

私は其処までじゃなかった・・か?

いや、比較対象がおかしくない?

首を傾げた私に、主人公ちゃんが爆弾発言をしました。

「後ね、前世の記憶からすると私の方が年上なのよね。多分。多分だけど。」

驚きの発言です。

「何故分かるの?」

あ、また同じ事言ってしまいました。

「何となくよ。」

訳知り顔で言われるのが何となくムカつきます。

「ところで、前世の記憶ってどれ程あるんですか?私はあまりないのです。だから年齢もわかりません。」

「そっちの方が良いわよ。私、がっちりあるもの。」

余裕の笑み、苛つきます。

「その方が良かったです。」

前世の記憶があったらどれ程助けになったでしょうか。

「苦しいわよ。」

ふっと苦い表情が浮かびます。

「どれくらいガッチリあるんですか?」

「聞いたら後悔するかも。」

意味深な笑みを浮かべています。

「いえ、聞きたいです。」

そこまで言われたら聞きたいでしょう。

「じゃあ、言います。私、前世は林田恵子。55歳まで生きました。子供は男の子と女の子一人ずつ、そして職業がゲーム開発会社で企画してました。」

「・・・・・・・・もしかして・・。」

何かとてつもなく嫌な予感がします。

「実は、私、このゲームの制作チームのメンバーでした。」

「・・・・・・・・・はぁ。」

きた。

全てを覆す驚き。

「だから、色んな事、事細かに覚えているのです。裏設定から何から何まで。」

ぶっ込んできます。

今更、全てを覆すような発言です。

「知りすぎてたから色々怖かったのよね。知ってても、中々過酷な子供時代でしたよ。知識と現実は全然違うし、誰がこんな設定にしたのよ!あいつめ!企画通したの私か!ってツッコミしかないし、いっそ逃げようかと思ったけど、強制力も半端ないし。抜け出すのにはゲーム進めるしか無いって割り切ったつもりだったけど、私、年下って好みじゃ無い上に、十代でしょ。息子より下だもの。感覚としては孫枠よね。」

「ええぇ・・・・・。」

「好みじゃ無いのに媚び売るっていうのがね。本当もう、耐えられなくて。でも、好奇心っていうか変な責任感って言うか、ちゃんと作り込んだ事、反映されているか調べたくなっちゃって。職業病って言うか。デバッグ探しっていうか。ね。齟齬がないか探しちゃうのよ。」

「怖い!仕事の鬼ね。」

「その癖が抜けないから、この行動とったらどうなるかとか検証したくなっちゃうのよね。でも現実世界では、調べようとすると私じゃ無理じゃ無い?この世界は身分制度がある訳だし。権力有る人に縋らないといけないから、攻略対象者しか寄れないし、本当に辛かった訳。」

めっちゃ語ってます。

「ずっとずっと、この世界どうなるのかなぁ?なんて心配で不安で、自分の体は自由にならないし歯がゆくて発狂しそうで、心が壊れかけたけど、責任感。後、好奇心だけで耐えて、途中記憶飛んでるけど、それで今!色んな物から解き放たれた感じなのよ。肩の荷が降りたって感じ。私たち!今、行き着くところついたじゃない!?」

壊れかけたっていうか、記憶無いって時点で壊れたと思いますよ。

あなたも私も。

それでも、それでも主人公ちゃんの言葉は私の救いの一言でした。

「ついた・・の・・かしら?」

私はずっと平穏が欲しかった。

でも、確証のある未来なんて何も無くて、確実にするためにただ頑張って、がむしゃらに頑張るしかできなかった。

見当違いだと思いつつも。

誰にも賛同されなくとも。

それでも行き着くところについたのなら、後は平穏が待っていると思って良いのだろうか。「ついた。ついた。」

凄く軽く主人公ちゃんが言う。

可憐な笑顔の後ろにオバチャンの包容力が見える気がする。

でも、その言葉に泣きそうになってしまう。

「だからもう、次の事考えて良いんじゃ無い?」

やだ、その言葉。

凄いグッとくる言葉の波状攻撃。

「次って?」

やだって思いながら、でも聞いちゃう。

「自分の幸せ。」

きた。

汎用性高い台詞。

思わず両手で顔を覆ってしまう。

何、それ、泣かせる。

と、感動した私がバカでした。


「それで、没になった設定でいくとね。あ、設定知ってる?設定集も出してたんだけど。聞きたい?っていうか聞いてくれる?」

と、言って怒濤の主人公ちゃんの生い立ちを語って来始めました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公ちゃんゲーム作る側の人だったの!? にしてもこんなにフツーに話せる人になるとは…ゲームの強制力とスチル回収の多幸感と心の疲弊ヤバかったんだなぁ
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