お茶会
「大分落ち着いたわね~。」
主人公ちゃんがティーカップを手に微笑みます。
前々王妃の庭のガゼボで前々王妃のティーセットを並べて主人公ちゃんと相席しているのは私、ディアンヌ・メニスカスです。
私が女王となってから半年。
なんやかんやありました。
ありましたけど、国は回っています。
だって、皆さん優秀なんですから。
乙女ゲーのハイスペックさは健在でした。
素晴らしい。
の、一言です。
ハイスペックな人達が一心にそれぞれの場所で大変良く働いています。
私はこうしたいっていう希望を伝えると皆が動いてくれます。
ダメな場合も、ちゃんとダメだししてくれます。
ダメだしだけで終わらずに代替案も持ってきてくれます。
めっちゃ楽です。
私はどっかりと座って報告を聞いて、
「良いわね。そのまま進めて。」
なんて偉そうに言ったり、
「ここ、もうちょっとこうしたい。」
とか追加希望出したり、報告書類を見てサインして押印するだけです。
追放期間の時のように走り回って、現場に駆けつけて、なんなら謝って、怒鳴られてなんて事はありません。
優雅な生活です。
問題があることと言えば、玉璽っていうの?
あれが重いことくらいです。
些細なことと思うでしょうか?
半端ない重みです。
金とかで出来てて無駄に装飾がついていますから。
でも所詮印鑑と思うでしょう?
私も、こんな事で泣き言は言いたくありませんでした。
けど、日本で使うような名字だけの印鑑ではないのです。
王様仕様でございます。
国旗と同じ柄が掘られていて、更に私を現す印・・花押が掘られていて、とにかく大きいのです
それに、金って重いんですよ。
何百枚と書類に押印し続けると体が悲鳴を上げます。
同じ作業を延々続ける。
筋肉痛になりそうでした。
いえ、なりました。
目下の問題は、それくらいでしょうか。
筋肉痛なんて、今までの人生で振り返れば些細な事です。
タダでは転びたくない性分ですので、サポーターを作ったり、マッサージ屋さんみたいなのを作ったり、試行錯誤していると、新たな分野の商売ができました。
私も楽になるし、他にも癒やされる人現れるし、仕事に就ける人も増えましたし、良かったです。
そのままマッサージ店が大人風に変化したり、サポーターも進化していきますが、結果仕事が増えるのは良いことなので放置です。
でも、悲しいかなそんな変化が起きても、私の根本解決にはなりません。
この仕事は人にお願いする訳にいきませんから。
休むことの無い筋トレ効果で左右の手の太さが変わりました。
私、地味顔を自覚する妙齢の女性なので、少しでもマシに見えるように体型などにも気を使って生きてきました。
ここに来て筋肉女子になってショックです。
きれいにつくなら良いんですけど、片手だけですから。
どうなんだこれって感じです。
少しでも改善できないかと思って、出来ることを探したら、”何もしないこと”でした。
何を言っているのか、よくわからないと思いますが、酷使している部分を極力使わないのが一番ということです。
なので、私、ティーカップを持ち上げることもしません。ストローで果実水を飲みます。
温かい飲み物は元陛下が、カップを口元に運んであげるなんて気持ち悪いことを言い張るので飲むこと自体を諦めました。
僕は君の下僕。
なんて言うんです。
鳥肌立ちました。
イケメンなのに言うことが気持ち悪いです。
存在を無視すれば良いのですが、どうにもできません。
放逐するのも業腹ですし、側に置くのもちょっとなんだかなって感じです。
ここまできたら、腐れ縁って奴なんでしょう。
私、正直なところ元陛下を含む元攻略対象者達との距離感を測りかねています。
なまじ皆さん優秀なので、切るに切れません。
感情的には切ってしまいたいのですが、現実を見れば不可能です。
仕事が、国が回りません。
女王になりましたので、思うままに命令して、自分の好きな人だけを集めて・・・。
なんて事は無理でした。
女王、案外自由にできない。
まぁ、わかっていましたけど。
自分の好き嫌いで国を動かすなんて、暗君ですものね。
幸い、そこまで愚かになれませんでした。
綺麗事ですが、どんな人にも救済策は必要です。
救済策が全く意味ないかも??ってこともあるでしょうが、彼らは、今まで押さえつけられていたせいか、役割を与えたら生き生きと働いてくれていますから、せいぜい恩を押しつけてやることとしてこき使っている訳です。
あ、彼らには20代の若造ながら宰相とか・魔術師長とか、騎士団長の役職を与えました。
下克上、おめでとうって感じです。
お父様方には引退して・・・もらいませんでした。
いや、働いてもらいますよ。
人材不足ですから。
廃嫡予定だったの息子達から顎で使われてさぞかし屈辱だろうなあ、と、思っていたら陳情書が上がってくるようになりました。
いっそ処罰してくれとか書いてありますが、ガン無視です。




