エンド
結果、思った通り、証拠は何の意味もなしませんでした。
聞く耳持たない。
それにつきました。
この人達が将来国を動かすと思うと、王政なんて廃止されてしまえば良いと思いました。
一方的に断罪され、その場で刑罰が言い渡されました。
曰く“場末の娼婦として働き、その淫蕩な性格のままに生きていくが良い。”
だそうです。
殿下から初めて私にかけられた言葉はまさかのブーメランでした。
この6年間私は、勉強、奉仕活動ばかりしてました。
時には父と一緒に街道整備の視察に行ったり母と一緒に慰問活動をしていました。
どちらもノーメイクと言う名の変装をしていたので問題なくついていけました。
ものすごい清い6年間です。
対して、主人公はあっちのベンチでイチャつき、木陰でイチャつき、倉庫でイチャつき本当に活躍してました。
目撃しましたし、監視カメラの映像にばっちり写ってました。
だけど、私が何か言う前に私の両腕はそれぞれ衛兵に捕らわれ、連行されてしまいました。
生徒も先生も見送らず、馬車に押し込められる私を何故か用務員さんや庭師さん達が涙ながらに見送ってくれました。
そう言えば悪役令嬢退場のスチルはありません。
学校で働く人でゲームに記述されない人達は、私に優しくしてくれました。
私もできる範囲でお返しをしていました。
そういうお返しもゲームに記述の無い人たちは受け取ってくれました。
そう、ゲームに関係の無い所では普通にやり取りができるのです。
私は見送ってくれる人たちに手を振り返して学校を後にしました。
馬車の中で両親からの絶縁状を受け取りました。
もう公爵家とは縁もゆかりも無いということです。
予想した通りスッパリと切られてしまいました。
結構家の為に尽くしましたが、やっぱりダメでした。
6年間の努力が無駄になった事が悲しくて仕方がありません。
追い打ちをかけるように連れて行かれたのは歓楽街の中でも、もっとも寂れた館でした。
壁には穴が空き、屋根も落ちています。
そこできれいに結い上げた髪を乱暴に解かれドレスからボロボロの使用人服に着替えさせられた私は街道の掃除を言いつけられました。
幽閉でもなく、国外追放でも無くよりによって娼館勤め。
まずは下働きとして此所のルールを学んでいくのでしょう。
渡されたホウキとチリトリで数時間あっちこっちと店前を掃き清めながら私は最後の時を待ちました。
悪役令嬢の最後のスチルのその瞬間を。
「きったねぇ女だなぁ。邪魔だ。」
声がかけられるのと汚泥がかけられるのは同時でした。
ぐっしょぐしょのびっちょびちょ。
汚れた私の前を何故かオープンタイプの馬車が通りかかります。
しかも車速を落とし私の前で止まります。
車上では殿下と、お友達、そして主人公が、こちらを指さして笑っています。
「お似合いね。」
「もう、会うこともないだろう。」
そんな言葉まで聞こえてきて、私はホウキとチリトリを握りしめたまま俯きました。
これが、娼館落ち最後のスチルです。
私は、もう公爵令嬢じゃない。
ただの娼館下働き。
わかってます。
止まっていた馬車が動き出すのが音でわかりました。
私はそのまま俯いていました。
馬車のたてる音が聞こえなくなるまで俯いたまま敗北した悔しさを噛みしめました。
こうして、私の“ざまぁ失敗テンプレ転生悪役令嬢物語”は幕を閉じたのです。
ご静聴ありがとうございました。
って、これで終わってなるものか。