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ざまぁ失敗テンプレ転生悪役令嬢はもがく  作者: 佐藤なつ
幽閉の園

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常識非常識


心情的には陛下を王にはしたくないのでしょうが、王にしない訳にはいきません。

隣国との約束でしたから。

それが暗黙の了解で和平が成ったのですから。

その事が彼らの心の中でずっと燻っていたのでしょう。


したくない。

でもしなくてはいけない。

ですがそのジレンマをぶつけられる方はたまったものではありません。


「私はずっとこの国の事を考え行動している。母の愛したこの国を愛している。」


またお母さんの話が出てきました。

マザコン病は一生の病なのでしょうか。

重症です。

「今回の件、私は罪人を連れ出した。

自ら法を破った。

だが後悔はしていない。

取り得る中で一番被害が少なくて済む方法を取っただけだ。

事態は収拾できた。だが、法を破った事に対して何の罪にも問われないとは思っていない。責任を取る心づもりはある。」

「そ・・それは!」

自分の過失を認め、自ら職を辞すと宣言しそうな気配に重臣達が顔を青くしました。

実際に困るでしょう。

嫌でも担ぐ神輿がなくなってしまうのですから。

父王は腑抜け、先王は体調不良。次代は幼い。

なにより、隣国や諸国への言い訳もたたない。

国のメンツが丸つぶれです。

「それは無責任というもの!」

「王という立場を軽んじておられるのか。」

事態を収拾させれば悪いことしたと責め。

責任取ると言えばそれも責める。


さすが風見鶏達。

方針が定まっていない。

風の吹くままグルグルグルグルここに来て一番回りまくっています。

「・・・・隣国・諸国が納得しない事は私も理解できる。

君たちの心情も、立場も理解している。」

陛下が語りかけます。

「どちらの事情を取るか悩み、君たちは自分たちの気持ちを犠牲にしてきた。

その献身を私は知っている。」

気持ちに寄り添う話し方は、すんなりと相手の懐に入っていき、言っていることがおかしくても正当な物のように感じさせていきます。

自分の感情など欠片も感じさせません。

恐ろしい技術です。

何度も私もしてやられました。

「だが、もう良いではないか。無理せずとも。私を認めることはできない気持ちはわかっている。お互いに無理をして、無益な争いが起きる。優秀な人材ですら罪人に落とされてしまう。」

陛下は拘束されている臣達にも視線をやりました。

慈愛の眼差しです。

でも私はそれが作り物だと知っています。

しかし効果は抜群、所々、ウッ。とか、クッ。とか堪え噎び泣く声が聞こえてきました。

「私は、罪を罪と見つめ、退位する。」

陛下はきっぱりと言い切りました。

「ですがっ!」

「次代がおりませんっ。」

何だか縋り付きそうな雰囲気です。

行かないで~。

ってヤツです。

去られると思うと追いかけたくなるのは人間の性でしょうか。

「いいんだ。もう無理はしなくて良い。」

そう言って、陛下は私を見て目配せしました。

はい、私のターンですね。

と、私は目で頷きました。

「貴方達。落ち着きなさい。」

私も陛下の口調を真似して穏やかに優しく言いました。

「陛下は貴方達の事を、この国を何よりも大切に思っていらっしゃるの。」

「せ・・せいじょ・・さまぁ~~。」

泣き始めて、何だかぐちゃぐちゃになった顔で見つめられます。

「今までの事、今回の事も、もとはと言えば過去の事が発端となっています。

皆で力を合わせてここまで来ましたが、もう限界なのは皆わかっているでしょう?」

語りかけ相手の反応を見ました。

ここで慌てて話しても効果はありません。

ゆっくりゆっくり、けれども、他の考えが起きないように畳みかけていきます。

「ここで一度その禍根を断ちましょう。」

「どうやってですか?」

風見鶏達は迷える子羊へジョブチェンジし私に群がってきます。

「私がその間に立ちます。」

「ど・・・どういう意味ですか?」

臣達が”えっ”と言う顔をしました。

あっ、ヤバい。

結論言っちゃった。。

陛下が小さく首を左右に振っています。

なってない。

そんな声が聞こえてきそうです。

うるさいな。

あなたみたいに、回りくどく話せないんです!

と、思いますが頑張って立て直します。

「貴方達は、ずっとこの国の事を守ってきましたね。隣国との争いの最中も王家の血筋を絶やさないよう腐心していらっしゃいました。」

国史を読み込んだらその裏にある、壮絶な売り込み作戦が見て取れてゾッとしましたよ。

皆自分の娘を、どんどん王達に差し出しまくってました。

そりゃ、父も”側室制あるよ。”って言うはずです。

非常識と思っていましたが、この国の常識だった訳ですよ。

そうなると私の方が非常識だった訳です。

ですが、非常識で結構です。

生理的に受け付けません。

いつか正してやると思いました。

「はい。私たちは、正当な血筋を守ってきました。」

案の定、胸を張って言われます。

本当にげんなりします。

「ですから、現王である陛下の事も受け入れられないのでしょう?」

「それは・・。」

本人を前にさすがに言葉を濁します。

「良いんですよ。私は全て受け入れます。」

敢えて優しく言いました。

猫なで声すぎて自分で自分が気持ち悪いくらいです。

「聖女様。」

子羊たちは全く気にならないようでメェメェ鳴いています。


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