キラキラキラキラ
いや、私的にはありでしたけど、今こそ蘇れ!前世の薄い本知識!
そこに落ちてくれてたら、多少なりとも気は晴れたのですが、どうやらノーマルのままのようです。
「まぁ、ともかく、僕たちは君の身を守っていく事を第一優先にするつもりだから、色恋にかまけている時間はないね。」
私の妄想に気づかずに・・・気づかれたら面倒ですけど、殿下が話してます。
「誰かを選ぶのは決定ですのね。」
念のために確認です。
確認大事。
確認不足で今まで痛い目にあってきましたから。
「残念ながら、他の方法が思いつかなくてね。少なくとも、君を偏愛している公爵の籍から抜けないことには君の身の自由は無いんだろうね。」
偏愛はともかく公爵家の籍から抜ける。
あの父からの解放。
それは非常に魅力的な言葉に聞こえました。
もっと話を詰めて聞かなければいけませんが、名義だけの結婚にぐらりと気持ちが寄ってしまいます。
多分、私相当父に抑圧されているんだと思います。
この国の家長に従え、逆らうな感が身につきすぎて、離れられると想像するだけで開放感が半端ないです。
そんな揺らいだ私を殿下は見逃さなかったのでしょう。
そこからグイグイと押してきたり、ちょっと引いてみたり、巧みな交渉術を披露してくれました。
前世で営業とかしてたらトップになるでしょう。
国を会社に見立てれば常に次期社長として英才教育を受け実務についているような人と、つい最近歓楽街の責任者についたばかりの私では経験値が足りませんでした。
上手に、それとなく、誘導され、私は殿下との婚約誓約書を交わしていました。
他の誰より好きとか、そんな事は何でもなく、一番権力を持ってそうだからという何とも打算的な考えです。
殿下を抑えれば、騎士団だって、宰相だって、魔術師団だって動かせますから。
限度はもちろんあるでしょうが・・・。
目指せ、私一人で歩いても大丈夫な安全な国、身を守る魔道具開発!なんて思ってサインしてから、ハッとしました。
あれ?私騙されてない?
って思った時には魔術でガチガチに強制された誓約書は締結を示すキラキラエフェクトに包まれていました。
あ~、これやってしまった。
と、思ったのは殿下のキラキラ笑顔に見つめられた時です。
「じゃあ、準備が整い次第、戴冠式と一緒に式を挙げるから。」
なんて言いながら例の指輪を取り出します。
お母様の形見の重たい指輪です。
「これは君を守るものだから大事にしてね。」
そんな事を言いながら慣れた手つきでするりと私の指に嵌めます。
思わず舌打ちが出ました。
不敬なのに、殿下は珍しく大笑いしてました。
「それはこれからはやめてね。」
「殿下にだけですわ。」
「僕は特別ってことでいいのかな?」
なんて嫌みをさらりと躱すと、もう一度にっこりしました。
「じゃあ、本題に入ろう。」
殿下は真面目な顔になって再び場を取り仕切り始めました。
皆の前で私の希望を最優先にすることを改めて宣言し、王妃として不可侵の存在であることを記した誓約書を作成しました。
他にも、あれも、これもと私が言う度に誓約書を作成し、部屋中魔術誓約書キッラキラエフェクトが舞い散り目が痛くなりました。
「後、何の誓約書を作ったら良いのか・・・。」
某天空に浮かぶ城の王になろうとして失敗した大佐のように「目が~目が~。」状態になりながら次の誓約を考える私に、殿下は
「とりあえず、今日はここまでで終わりにして。この誓約書も結構経費がかかるから。」
と、言ってきたので考えるのを諦めました。
確かに魔術契約書は経費がかかります。
特殊な紙に、特殊なインク、魔術師が魔力を流し・・等と手間がかかることを考えると、普通の契約書とは段違いでしょう。
国民の血税を無駄遣いしてはいけません。
と、反省してから、あのメンバーの中に魔術師枠が一人いたじゃないかと気づきました。
手間の部分は無料です。
また騙されてしまったのかもしれません。
 




