一人ぽっちでしたよ。ずっと
「わからない訳ないよ。だって、化粧もしない子供の頃からの付き合いだろう。5歳くらいの時と顔変わってないと思ったらびっくりしちゃって確認せずにいられなかったんだ。」
「そんな風には聞こえませんでしたわ。」
「あの場で5歳から顔変わってないね。なんて言えないだろう。どこで誰が聞いているかわからないしね。それに人違いだと言い続ける君にちょっと言い返したくなったんだ。」
そんな言い訳信じられる訳・・・ないような。あるような。
いやいや、ナイナイ。
ダメだ私。少し殿下に甘くなっている。
これはあれだな。
なんちゃって吊り橋効果持続中だな。
何か納得しかけてしまう。
確かに私は童顔だ。
うっすら顔なので化粧ビフォーアフターが恐ろしい程だ。
その自覚があるだけに否定したいのに、しがたい所もある。
「僕たちは、姿形で惑わされる年は過ぎたよ。」
見回すと皆頷いている。
主人公によっぽど懲りたようだ。
「もう惑わされるのはウンザリ。」
と、口々に言ってくる。
「僕たちは貴族だ。子孫を残さねばならない。」
「それは、そうでしょうけども。」
だけど私と関係ないところでやって欲しい。
「年齢的にはもう遅いくらいだ。」
でしょうね。でも私に関係ないです。
「そして、僕たちはもう争いたくない。」
「それは、そちらのご都合ですわ。」
「そう、僕たちの都合だ。だけどこの国の都合でもある。救国の聖女の相手は王族もしくは重臣でなければ国の面目が立たない。」
「国の面目なんて・・・。」
「知らないなんて言うほど君は子供じゃ無いだろう。国の信用がなくなれば君の大事な街にも悪影響が起きるからね。」
「それはそうでしょうけど。」
「更に個人的な都合を言えば、僕たち皆、女性に対してトラウマがあってね。特に”アレ”に似た言動を聞くと鳥肌が立つ。この10年皆本当に苦労したから。だけど強制はしたくない。君に選んで欲しいんだ。」
そう言って殿下は私に微笑んだ。
「今、ここで君の良いと思う人の手を取ってくれないか。」
全員が立ち上がり私に向かって腰を折り手を差し出した。
これは、もしや。
逆ハーレムだ。
26歳にして逆ハーレム。
いや、前世を足したら何歳かわからないけど、逆ハーレム。
テンプレ悪役令嬢はこういう時どうするのでしょう。
本当にただの悪役令嬢だったのに。
テンプレの普通の、当て馬の、スパイスとして振りかけられまくった出がらしの退場した悪役令嬢。
今、私はものすごく退場したいです。
強制じゃ無く自分の意思で退場したいです。
助けを求めて視線を彷徨わせます。
唯一座っているエルと目が合いました。
エルはすぐさま目をそらしました。
プルプルと首を左右に振っています。
あの侍従と同じポーズです。
誰も味方がいないな。
そう、私はずっと一人。
今更ながら思い知らされます。
 




