一晩たったら・・・
「わからないかもしれないけど、もう終わったことだから。だから安心して欲しい。」
殿下は立ち上がりました。
「やっぱり時間がかかったね。今日は疲れただろう。休もう。」
私に手を差し出してきました。
私は手を取ることもできず、焦点のぼやけた目でそれを見つめました。
殿下はここに来た時のように私の手を掴み引き上げてきました。
「僕も疲れちゃったんだ。色々あったしね。もう部屋に戻って休もう。」
あぁ、それなら行かなければ。
疲れた人に逆らうのは申し訳ない。
ぼんやりとそう思った事だけは覚えています。
私は10年間人の面倒を見てたせいか”疲れた人”には強く出れないようになってました。
殿下に引っ張られて隠し通路を通り、部屋に戻ります。
崩れるようにベッドに潜り込み泥のように眠りました。
何とも濃い一日でした。
わからない事はいくらでもある。けども、とにかく眠りたかったのです。
翌日、日が昇る前に目が覚めました。
疲れてていても身についた習慣は抜けないようです。
お行儀悪くドレスのまま横になったことに気づきました。
起き上がると見計らったようにノックがされメイドが入ってきました。
昨日の公爵家から呼び出したメイド達では無く王宮のメイドのようでした。
「お目覚めのお飲み物を差し上げます。」
「お召し替えを致しましょう。」
無駄の無い動きで私の支度を調えてくれます。
用意されていたドレスは深緑色で私の好きな落ち着いた色合いでした。
「朝食のご用意ができております。ご案内致します。」
連れられて歩き出して、朝日が差し込見始めた中庭を眺めてハッとしました。
うっかりドレスを着て、うっかり後をついてきてしまいました。
「あの、私の着ていた服はどうしました?あれが着たいわ。それに朝食も結構ですわ。私帰ります。」
今帰らないと、また何かに巻き込まれてしまいそう。
そんな危惧を感じていると、
「帰ってしまったら困るな。」
と、言う殿下の声が後ろからしました。
「殿下、おはようございます。」
私は腰を落として略礼をしました。
「おはよう。休めたかな?」
「えぇ、殿下は随分早起きでらっしゃるのね?」
「うん。君もね。」
にっこりと微笑む殿下は完璧な王子様です。
「じゃあ、行こうか。」
さり気なくエスコートされ反射的に従ってしまいます。
子供の頃から身についていることは中々抜けません。
数歩歩いてから思い直して止まる。
「いえいえ、殿下私はもう戻りたいと存じます。問題は解決されたと昨日伺いました。私が関する事はもう無いはずですわ。」
「皆、待っているんだ。」
「皆?」
「そう、僕の学友・側近達。改めて話す場を設けると言っただろう。このまま君を帰したら、それぞれが君の住む街へ赴くだろう。自分たちが納得するまで。それより全員一斉に会った方が楽だろう?王宮なら止める人間もいるしね。本当は昨日のパーティで話したいと依願されたけど、君が疲れていると言って断ったんだよ。」
何と言うことでしょう。
全く昨日と同じ手です。
こう言うところが乙女ゲーをまだ引きずっているのでしょうか?
大体同じ手を使ってくる。
ワンパターンの方が予想できてゲームの時は楽でしたけど、自分で体験すると、どうして同じ手に引っかかるのかと悔しくなってきます。
僕が止めておきました的な恩に着せられるのも腹立たしいです。
確かに攻略対象者達は気が済むまで行動しそうです。
強引なところがあります。
だって、基本乙女ゲーの攻略対象者なのですから。
私はゲームが終わって10年経っているのに流されっぱなしです。
エスコートされて食堂に着くと皆さん勢揃いでした。
同級生攻略対象者様全員と、そのお父様。
隠しキャラと言われたエル・お兄様達と、その父(元締めとプテリオン公爵)
先王もいます。
なんて楽しそうな朝食会でしょう。




