私の家族設定
王宮の中を見つかりそうになるドキドキ冒険要素味わいながら、攻略対象者と知らず手を繋ぎながら進み、やっとたどり着いた謁見の間。
謁見の間では当然謁見が行われていて、終わるのを二人で待つのです。
倉庫みたいな狭い空間で。みっちりくっつきながら。
謁見が終わって、封鎖されて、いざ行くぞとばかりに、この緋毛氈を攻略対象者と手に手を取り合い進むのです。
こんな感じに。
って・・・。
思わず殿下に握られた手を見て頭の中で首を左右に振ります。
全然っ!全然違います。
今の私は、殿下に手足枷をつけられて衆人の中晒されています。
けっして、ドキドキようやくたどり着いたね。
みたいな高揚感はありません。
そして、主人公はここに入ったら走り出していましたが、私は中々進みません。
長い私の回想を経てもようやく玉座下にたどりついたくらいです。
それもこれも七面倒くさい謁見の手順のお陰です。
手っ取り早い平民の生活をしていた私からすると耐えられない長さです。
暇つぶしに何行程あるか数えてみましょう。
入室すると、
1.先触れ係が私と殿下の訪れを告げる。
2.殿下と私は決まり切った礼を行う。
3.ゆるゆると毛氈を進み、玉座下手前にたどり着くとまた先触れ係が私たちを紹介する。4.それを受けて殿下が名乗りと、私の紹介を行い礼をする。
5.王から”近くに寄れ”なんて言葉を頂いたらまた10歩程寄って跪く。
5行程もあります。
無駄だ。
その間にお茶が飲めてしまいます。
ようやく4番の紹介と礼が終わりました。
”近くに寄れ”と、ありがたく無い言葉を頂き近寄ります。
遠くて良いのだけども。
と、思うのですが近寄らないという選択肢はありません。
命令に背く訳ですから。
見たく無い輪郭達がはっきりしてきます。
目の焦点をわざとぼやかして見てる振りで見ないようにしていたのですが、顔が見えてしまいます。
残念です。
危惧していた通り、側近と思しき位置に魔術師長の息子がいました。
初めて見るくらいの笑顔を讃えています。
あれ?あの人何か斜に構えた性格設定だったはずだけど、つきものが落ちたかのような穏やかな笑顔を向けてきます。
更に驚いた事には、その横に私の兄達がいました。
多分そう。
だって、父にそっくりですもの。
怖い。
姿形が同じだから多分双子です。
乙女ゲーあるあるの双子がここに居ました。
若い父の顔が二つ。
怖さ二乗です。
その二人がにこにこして、こちらを見ています。
そうでした。
私、プテリオン公爵家第三子にて長女でした。
全然出てこないから忘れていましたけど、と、言いますか気づいた時には既に家にいませんでした。
会話にも出てこなかった。
第三子だと言われ、自己紹介でもそのように言い続けてきましたけど、誰もそれに触れなかったし、触れてはならない空気でした。
と、言うか父母は自分の用件のある時しか話をしたがりませんでしたし、私の要望も要望書を通して許可が出ていました。仲立ちをお願いしたくてもメイド達も必要最低限の話しかしてくれませんでした。
知りたくても誰も教えてくれませんでした。
そもそも兄がいるという気配がありませんでした。
部屋も、荷物もありませんでした。
今更気づいたのですが悪役令嬢と言えば、その兄か弟が攻略対象者となるのがテンプレですよね。
それで悪役令嬢と仲が悪いはずなんですけども・・・。
でも、私の場合は全然接点が無かった。
それに、ゲームでも登場して来なかった気がします。
それでは、おかしいです。
私が第三子である意味は全くありません。
設定ミスとしか言いようがありません。




