スチル解放
居ないと油断させてからの、やっぱり居ました。
さっきから気持ちの揺り戻しが辛いです。
それよりもなによりも、皆が私たちの方を見てどよめいているのがきついです。
「聖女だ・・・。」
「殿下がお連れになった。」
「ありがたい。」
などと言っています。
拝んでる人もいます。
完全見世物です。
しかも、私は聖女ではありません。
俗な方です。
こんな言葉があるかわかりませんが”俗女”です。
だって歓楽街のアドバイザーですから。
前世の薄い本の記憶を活用して歓楽街に尽力してきましたから。
聖なる力ではなく性なる力です。
主人公は私の断罪スチルを回収してここにたどり着いたはずです。
私の思い出せた数少ないスチルの内、本当に役に立ったのはあのスチルだけと言っても過言ではないかもしれません。
本当全然思い出せなくて苦しかったのに、主人公の一人勝ちを指くわえて見てるような状況だったのに。
ここに主人公はおらず、私が立っていて、今どんどんスチルが思い出される。
設定ラフまで思い出せてしまう。
今!今なの?
10年後、いや16年後に思い出すなんて遅すぎです!
足が止まってしまう私を殿下が引っ張ります。
主役のように緋毛氈を歩く仮面の男装女。
私は仮面の下テンションだだ下がっていくのを感じていました。
何なら頭痛もしてくる気がします。
頭を振り払うと脳裏にまた設定ラフの記憶が蘇ってきました。
主人公がそれぞれの攻略者達と対の色のドレスを着てここを歩く→対の色ドレスは取りやめ、白色ドレス一種で。
と、言うメモ書きがされた、この会場の記憶が。
そう、これは、それぞれのトゥルーエンドの舞台です。
恐らく最後に陛下に婚姻の報告に上がるとかそんな設定ではないでしょうか。
そんな気がします。
断罪10年後にに私がここに立つ。
おかしい。
どうなっているのでしょう。
だって、テンプレ乙女ゲーの流れで言ったら
まずテンプレ主人公・テンプレ悪役令嬢・テンプレ攻略者が登場。
主人公は平民か、貧乏男爵令嬢。もしくは腹違いの子供等など弱い立場から、持ち前の美貌・賢さ・気立ての良さで、悪役令嬢の嫌がらせに耐えイケメンスパダリ攻略対象者達を落としまくり、最後は隠された能力の開花、もしくは聖女認定、もしくは高位貴族の落胤判明など自らの地位向上がなされ逆転。
皆に祝福されゴール。
みたいな流れでしょう。
ここがいわゆるゴール地点のはずなのです。




