改変甚だしい。
思わず自分の格好を見下ろします。
私は男の格好をしています。
しかもノーメイクで髪は後ろで一つ縛り。
メイドの方がよっぽどまともな格好でしょう。
「この格好で、どちらへ?」
「言っただろう。父王に挨拶を。」
さっき、確かにそんな事言っていた。
「さささ、妃殿下。お召し替えを。」
メイドが私の手を恭しく握ります。
思わずそれを振り払ってしまいました。
「結構ですわ!」
興奮して立ち上がり、歩き出そうとしてきゅうと手足が締まる感覚がしました。
今度は歩き出そうとしていたので殿下に背を向けていたのですが、後ろからぎゅっと抱き留められました。
また同じ失敗をしてしまいました。
高性能すぎて存在を忘れてしまう枷。
油断を誘う技なのかもしれません。
「離してくださいませ。」
もう、こればっかり言っているのもうんざりしてきました。
「だから、それは出来ない。君たち、湯浴みの時間は無い。このままで着替えさせてくれ。」
そう言って殿下は私の体をメイドに渡しました。
そのまま部屋を出て行かずにまたソファーに腰掛けてしまいます。
メイド達は私の服に手をかけます。
「殿下がいるのよ。ここで服を脱がさないで。」
殿下に出てけとは言えなかったので、メイドを牽制しました。
「僕が出て行く訳にはいかない。その拘束具は持ち主の目に届く範囲じゃなければ効果がないんだ。僕がいなくなればきつく食い込むただの拘束具になってしまう。」
「それでも構いませんわ。」
「それじゃ着替えられないだろう。」
「ですから着替えません!やめて。ボタンを外さないで。」
私は身をよじります。
「諦めて着替えるんだ。」
「嫌です。それに平民とはいえ女性の肌を見るのは殿方の礼儀に反するのでは?」
「平民じゃ無いよ。それに君は僕の妃だ。どうせ今夜にでも見ることになるのだから、問題ないよ。」
さらっと恐ろしいことを言われました。
「問題あります!!!」
「真っ暗がいいなら手探りでもいいけど。最近はそういうのが流行っているのかな?君の居た街では色々な取り組みが為されていたみたいだけど。」
「何を言ってるんですか!?」
さり気なくセクハラ挟んでくるなんて、本当に残念王太子です。
「何って王族の義務の話しだよ。僕も君も、もう26歳だものね。早く子供を設けないと、あらぬ争いが生じる。」
「ですから!なんで私なんですか?」
私は、メイドを振り払った。
メイド達も始まった口げんかに手を出せないのか後ろに下がった。
「君しかいない。10歳の時に君が突然婚約破棄を申し出てきたね。その時にも答えたはずだよ。”政情的に無理だってわかってるはず。出来るなら最初からしている。君も僕の事を嫌いでも無理だ。できるなら最初からしている。解放してあげたいけど無理だ。”って答えたの覚えてる。」
全然違う。
殿下まで記憶の改変が起きていることに私は怒りで頭がいっぱいになりました。
 




