元締めは人情派
と、いうか下心満載で私から近づきました。
あわよくば彼の父親と会わせてもらいたかったのです。
娼婦落ち断罪ならば、私の行き着く先は此所しかありません。
ここで生活をするのならば元締めと良好な関係を築く方が良いに決まってます。
私の願いはすぐ叶いました。
元締めと面会した結果は今までで最高の物でした。
時間が無かった私は最初っから腹を割って本音で話しました。
一目会った瞬間から元締めがただ者じゃないと感じたからです。
私だけではなく元締めも私の事を特別に思ってくれました。
こんな書き方すると気持ち悪いですが、別に運命の相手とかではないです。
この数年で使用人に騙され、人の悪意にばかり晒されていた私は人情味がありつつも商売人として歓楽街を切り盛りする元締めの実力に魅了されました。
元締めも、息子の友人として現れた私に興味を持ってくれました。
そもそも悪評と、こっそり奉仕活動をする姿のギャップに疑問を持っていたこと。会話をしてみると見た目年齢と全然違う事、この世界だけじゃない知識には特に興味を持ってくれました。
えぇ、私、最初っから娼館を経営したい。購入したい。と、話しましたから。
その際の経営方針について前世の知識を織り交ぜて話すと大変興味を持ってくれて、経営は未成年で無理だけどもアドバイザーとして雇ってくれることになりました。
経営難の娼館を紹介してもらい、立て直しに尽力することにしました。
まず不潔な店内を清潔にすること。
リネン類もお客が帰る毎に変えること。
インテリアも落ち着けるように変えました。
独身者のためにとれかけたボタン付けや、靴磨きなどの、男の人の手に余る身の回りの世話をするサービスも取り入れました。
ボタン付けや、靴磨きは娼婦じゃなくてもできますから。
前世の知識をつぎ込みましたが少しずつしか経営は良くなりませんでした。
ですが、私は手応えを感じていました。
お姉さん達が「働きやすくなった。」と、言ってくれるようになったからです。
ここで設備投資をしようと私財を投じたら、店主に持ち逃げされてしまいました。
元締めは、平謝りで謝罪しつつ、私を諫めました。
公爵令嬢の遊びの範疇を超えている。
商売が少しずつしか上手くいかなくても焦って投資してはダメだ。
纏まった現金は、困窮した者の心を狂わせる。
あのまま、地道にやっていれば結果が出ただろうに、何故そんなに焦るのか。
等など。
私は、やむなく元締めに話しました。
乙女ゲーとかは伏せ、最近の自分の置かれた立場と主人公に「娼館に落としてやる」と、言われたこと、将来そうなるであろうことを。
元締めは酷く私に同情してくれました。
殿下と私の仲については、息子からも周囲の噂からも聞いていたのでしょう。
私の今までの行動にも納得してくれました。
 




