生きる意味。5
少し長めかもしれません。
青年と話した後、完全に受け入れることはできなかったが前向きになることができた。
青年には感謝しても仕切れないな。
そういえば、青年の名前を聞いていなかったな。
次会った時に聞いておこう。
俺は今、部屋を出て王座へ向かっている。
青年は次の仕事があると言って部屋を出たところで別れた。忙しいのに俺の話を聞いてくれたのだ。本当にいいやつだ。
王座の場所は青年に教えてもらったが、迷いそうなほど広いな...。
「お待ちしておりました、勇者様。」
真っ赤な大きな扉、いかにも王座であろう扉の前にメイド服を着た女性がいた。
おそらく途中で倒れた俺を待っていたのだろう。
「すみません、急に倒れてしまって...。」
「いえ、お気になさらず。」
そして、失礼します、と扉を開けた。
そこは誰もいない王座の前に1つ紫色の水晶が置かれた台座があった。
「先ほどまで皆様の能力の確認を行なっておりました。」
「能力の確認?」
「ええ。世界を移動する際に神様がその世界にあった能力を授けるのです。そのため勇者様には強力な能力が多いのです。」
なるほど、勝手に召喚されてかわいそうだから強い能力を授けてるっていう考え方か。
「すべての勇者様に強力な能力が授けられる訳ではないのですが、ご安心ください。基礎能力はこの世界の一般人より強いことが普通ですので。」
さて、こんなにもフラグを建てられてしまったら怖いものがあるな。このままの流れで確認したらどう考えても雑魚能力しか出ないだろう。
「さぁ、こちらの水晶に手を。」
ごくり、と固唾を飲む。
手をかざすと紫色の水晶が青白く、そして赤く光り始めた。
水晶に不可解な文字列が並び、それを確認したメイドさんが紙に書いていく。
「確認できました。勇者様の能力は『領域魔法』と『加速』です。」
「領域魔法?ってなんですか?」
「ではついてきてください。皆様が待機している部屋に案内します。」
「え、あ、はい。」
俺の質問に耳を傾けずに淡々と仕事をこなしていく。
良いのか悪いのかわからないままだ。
「こちらでしばらくお待ちください。」
連れてこられたのは5、6個ほどの丸テーブルと数十個の椅子が置かれた部屋だった。
椅子には他の勇者たちが座っており、扉を開けた音に反応し全員がこっちを見ていた。
入るのに躊躇ったが、あちらへどうぞ、とメイドさんに言われたのでコソコソと歩いていった。
空いていた椅子は1つしかなかったので人数分しかないのだろう。
そのテーブルには3人の勇者が座っていた。
「えっと、あなたは、途中で倒れちゃった人ですよね?」
ちょうど向かい側の女子が話しかけてきた。
「あ、はい、そうです。」
「体調は大丈夫ですか?」
「えと、はい、大丈夫です。心配かけてすみません...。」
「急にぶっ倒れるからびっくりしたぜ。」
「なんともなくてよかったよ。」
2人の男子が会話に混ざってきた。
目が真っ赤で活発そうな見た目の男子とメガネをして本を片手に持った男子だ。
「自己紹介がまだだったな。俺は赤坂 渉だ。ワタルって呼んでくれ!よろしくな!」
「僕は甲斐 真だよ。よろしく。」
「私は沙川 美樹。よろしくね。」
「うん、よろしく!」
もし気が向いたら評価していってください。