パンプキン谷のバレスコさんと一匹の龍
パンプキン谷に暮らすバレスコさん。
ある時、そんなバレスコさんの家の前に、一匹の龍がやってきました。
龍は言います。
「うおお。俺さまにパンと水をよこさないとお前を食べてしまうぞ」
しかしバレスコさんは、こわがらずに言いました。
「私と知恵くらべをしよう。もし私が負けたら、欲しいものをなんでも持っておいき」
「うおお。言ったな。俺さまは負けないぞ」
バレスコさんと龍は、知恵くらべを始めました。
「うおお。俺さまは、ずっとずっと走りつづける馬が欲しいぞ。お前はその馬を用意できるか?」
「そうだねえ」
うーんと悩んで、バレスコさんは言います。
「でも、龍よ。君はその馬にのるのかい?」
「うおお。そうさ。その馬にのるのさ」
「でもそうしたら、ずっとずっと走りつづけているんだから、おりることができないよ?」
はたと、龍の顔つきが変わります。
「それに、あれをしたい、これをしたいと思っていても、馬はずっと走っているから、おりることはできないよ。それでもいいの?」
龍はそうぞうしました。
これからさき、ずっと馬のうえで生活する、自分のことを。馬がずっと走るので、好きなこともできずに、ただただ天国にいくまで、馬にのっているだけの自分を。
龍はこわくなりました
「うおお。この知恵くらべは、俺さまの負けだ。そんな馬には、のりたくない」
龍はくやしそうに、つばさをばたばたさせます。
「うおお。俺さまは、ずっとずっとふくらみつづける風船が欲しいぞ」
「風船かあ」
うーんと悩んで、バレスコさんは言います。
「でも、龍よ。君はその風船をどうするんだい?」
「うおお。決まっているだろう。そのうえでとびはねて遊ぶのさ。ずっとさ」
「でも、龍よ。そうしたら、君はふくらむ風船の中にうもれてしまわないかい?」
はたと、龍の顔つきが変わります。
「どんどん大きくなっていく風船に、君はうもれていきていけるのかい? それでもいいの?」
龍はそうぞうしました。
大きく、大きくなる風船に、からだをおしつぶされそうになるところです。
龍はこわくなりました。
「うおお。この知恵くらべは、俺さまの負けだ。そんな風船とは、遊びたくない」
龍はくやしそうに、しっぽをばたばたさせます。
「うおお。俺さまは、あるものがほしいぞ」
「どんなものだい?」
バレスコさんはききます。
「俺さまに、パンと水を与えてくれる、ともだちさ。さあ、お前にそのともだちを用意できるか?」
「それなら」
バレスコさんは、笑顔で言いました。
「ここにいるよ。ともだちになろう。龍よ。君はなんという名前だい?」
うれしくなった龍は、言いました。
「俺さまの名前は」
完