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ころBOON

作者: かずっち

実在する個人、団体等とは一切関係ありません。


沈黙 遠藤周作氏のパロディです。

 月曜日、配達7軒目。


「今日は留守か、ゲームの発売日だけだなー」


 インターホンに無反応。私は不在票を用意する。


 このお宅の注意点が見えてきた。ゲームの日だけは最優先。


 この仕事はきつい。居留守に催促、配達員とはまるで修行。


 デフレ、ネット注文、受注競争。世相に応じて、その修行は日々険しくなる。それはまるで弾圧のように。


 ボスジャンを着れば盗人に思われ、駐車違反で本当の罪人になる。


 忙しさに先輩が言った。


「あのロゴマークは見るのも嫌だ!」


 増える罪と憎しみ、それが修行の行く末なのか。


 そして夏が来た。暑さに加え、お中元の数の暴力。地獄。


 汗が首筋を伝い、忙しさに幻聴が聞こえる。そいつは配達が遅れるにつれガンガンボリュームを上げてくる。


……ころべ、ころべ……


 転んで憂さを晴らせ!


「お客様は神様です」


 ストレスからの誘惑に、私は常套句で抵抗する。


 問題のあるセリフ。客に言われるとムカつくが、自分で言う分には正気を保つ役に立つ。


 しかしこの忙しさの中、その強がりで何時まで耐えられるのか。


……ころべ、ころべ……


 カートから荷物をぶちまけろ!


 建ち並ぶビルの上階にキラッと光るモノが見えた。


 それが隠し撮りのレンズでも、今なら批難より同情のほうが多いのではないか。


……ころべ、ころべ……


 そして踏んでしまえ!


「次が留守なら……」


 心病みながら辿り着いた配達先の一軒家。


 その玄関に見たものは……沈黙、物言わぬ神様。宅配BOX。


 私はそいつにすがりつく。


「いきかえるー」


 日陰に置かれた鉄製の箱、そのひんやりが心地いい。


  (完)

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