予言と行先
俺は今湯船につかって身体を温めている。あの出来事のあと、ソフィはタオルの裾を掴みながら俺のある部分を見つめたまま一言も発しなかったが、カノンがモジモジしながらもお風呂を勧めてくれた。お言葉に甘えこうしているのだが、なかなか収まってくれないアレ。童貞ってわけではないが性欲旺盛な上、あまりにもかわいい美少女二人の身体をずっと考えてしまいこんな事態になってしまっている。このままじゃのぼせてしまう、と思っていると脱衣所から
「アキラ、タオルを用意するの忘れてたので着替えと一緒においておきます。」
「あっ・・・ああ、ありがとう。」
そういえば急いで入ったから忘れていたな。
「それでは食事の方用意しておきますので失礼します。」
このままじゃ埒が明かない。カノンが出て行ったのを音で確認し俺は浴室を出る決意をする。何かをしてからだが・・・。
「おっ、いいにおいがする。」
カノンが用意してくれた部屋着でリビングに行くと、テーブルの上に料理が並んでいる。
「お風呂気持ちよかった。ありがとう。」
「どういたしまして。こっちも丁度できたわ。食べましょう。」
「アキラの口に合えばいいのですが。」
「大丈夫、俺好き嫌いないから。」
そういって、椅子に座る。二人は最後の品をテーブルに持ってくるところだ。
二人ともタオル生地のホットパンツにタンクトップという、露出の多い格好をしている。それも首元も割と開いてる上にちょっとゆったり感がある。これは目のやり場に困るな・・・。
案の定、テーブル中央のおかずを取ろうとする時やテーブルに手をついて椅子から立ち上がる際は文句のつけようのない谷間がバッチリと見ることができる。
そこまで会話のない食事を終え、カノンが紅茶を入れてくれた。とてもいい香りで心が安らいでいく。安らぐことを知らない一部分にも効けばいいのだが・・・。なんか会話をしとけば時間が経って収まるだろう。そう思い、俺は彼女たちに抱えている疑問を一つ問いかける。
「なあ、ちょっといいか?ディザスターと言ってもこの世界を滅ぼす存在ではないことはわかったけど、二人は俺がそういう人間だって信じているのか?こう言っちゃなんだが、俺たちはまだ知り合ってお互いのことも全然知らないわけだし。」
そう問いかけると、二人は少し顔を赤らめてお互いアイコンタクトを取り合う。
何か言いにくいことでもあるのだろうか。そんな様子の二人だが、ソフィが口を開く。
「私たちの町にはこの世界トップクラスの予言者がいたの。私たちの曾祖母にあたる人だったんだけど、その人から告げられた未来は絶対のもので、人生を左右する選択を迫られる時ってあるじゃない?どの選択をすればどうなるかまでひとつひとつ予言するの。」
「すげえな、それ。その力があれば間違えることなくいい将来にむかっていけるってことじゃん。二人はその人に予言してもらったの?」
「うん・・・。その時の予言がディザスター・・・あなたとのことだったの。」
こちらをチラッと見ては少し俯き、またこちらをチラッと見るソフィ。
「へえ・・・それってそんな予言だったんだ?」
「えっと・・・その・・・。」
その選択が何だったのかなかなか口にしないソフィ。
「わ、私たちが成人する歳にディザスターと出会うって。」
「へえ、じゃあ二人が俺をディザスターって確信したのはその婆さんの予言があったからなのか。そんでどんな選択があったんだ??」
「選択っていうのが・・・ま、まあそれはまた今度にしましょう。」
「えぇ・・・なんだよそれ。教えてくれてもいいじゃん。」
「わ、私たちの予言はあなたと出会うことで、選択は秘密です。女性に秘密はつきものですよ!アキラ。」
「うっ・・・。」
二人がここまで恥ずかしがるのだからそれなりの理由なのだろう。知りたい気持ちもあるがここは我慢だな。
「その内ちゃんと教えてあげるから。それよりもアキラはこの後どうするの?」
「え?」
「『え?』じゃないわよ。もう体調も良くなったんだしこれからどうするか決めておかないと!」
確かにこの後はどうしたらいいんだ?今は二人に甘えてこの家に泊まらせてもらってるけど、体調が戻った今、この子達といつまでも居るわけにはいかない。しばらく考えた末に一つの案を口にした。
「せっかくの異世界だし色んなところを見て回ってみようかな・・・。」
「所謂冒険ですか。ですがそれをするにはそれなりの力が必要になりますよ?アキラには潜在的にその力があるとは思いますが、まだ使いこなせていないようですし。」
「この辺は魔物もなかなか強いし、私たちでも油断したら危険よ?」
「魔物?・・・俺が襲われた時のようなやつらのことか?」
「あれは軍のやつらよ。魔物ってのは国の領土外で生息している生き物のこと。アキラが力を使いこなせれば討伐経験値がもらえてレベルアップも出来るでしょうけど、それが出来るまでは苦労するわよ?」
魔物、経験値、レベルアップ。なるほど、異世界らしく道中はモンスターが出現してそいつらを倒していくとレベルも上がって強くなれるってことか。それよりも今のソフィの言葉に気になることが・・・。
「軍ってどういうことだ?」
「あの者たちは『炎煌国ガルファキア』の兵士です。」
「炎煌国ガルファキア・・・それって五つの国の一つか?」
「はい。ガルファキアは好戦的な国で領土を拡げるためには武力を第一とする国です。アキラも見たでしょうが、あの時に戦ってたのはガルファキアとどこの国にも属さない『クレア』の村の人々です。」
「村!?あれは村をかけた攻防だったのか。」
「そう、この世界は五国とどの国にも属さない町や村があるの。たまたま私たちがクレアにお邪魔していて、帰るタイミングでガルファキアが攻め込んできたの。クレアの人が私たちを森に逃がしてくれて、結界魔法で隠れていたところでアキラが目立つ場所にいたから思わず助けないとって思って・・・」
「そんな状況だったのか・・・おかけで助かったよ。ん?ってことはクレアの人たちは二人を助けるために犠牲になったのか?」
「犠牲になっただなんて恐ろしいこと言わないで下さい!長年どこの国にも属していない村ですよ?それだけの力を持っている村です。現に外の状況を何度か確認しましたがガルファキアは撤退を始めていました。」
「国の侵略を食い止める村ってどんな村でどんな奴らがいるんだよ・・・。」
「私たちの町もそうですが、どこの国にも属さない集団はそれなりの力を持った者たちが集まっていますので。」
「二人の町も・・・。ってことはソフィとカノンってめちゃくちゃ強い??」
そう問いかけると二人は少し誇らしげに笑みを浮かべた。
怖えよ。
「ねえアキラ、まだ行先を決めてないなら私たちの町に来てみない?」
「そうですね。このまま当てもなく冒険に行くよりはアキラの為になると思いますよ?」
目的地が何も決まっていない状況だし、二人の言うことなら素直に聞いておいてもいい。
「そうだな。じゃあお邪魔させてもらおうかな。」
そう答えると二人はとびきりの笑顔になる。
「それではアキラを『シャルファーレ』へご案内します。」