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俺を厄災と呼ぶ異世界で。  作者: 大福ヱビス
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介抱

「ん・・・・。」

変な夢を見ていた、そう思い目を開ける。自室でないどこかであることを理解し、視界の端にいた眠っている女性に視線を移す。

「彼女は確かあの時の・・・・。」

夢の中で殺される直前、声をかけてきた女性二人組の黒髪の子だ。確かカノンって呼ばれてたような・・・。

あの場に居ながら助かったのだろうか。殺されていない訳だからとりあえず助かったってことでいいんだよな?落ち着いて考えながらそう思うとともに、今置かれてる状況が不可解なも状況であることに気付く。夢から目を覚ましたが、また同じ夢を見ている。あの森で目を覚ましてからの記憶も感覚もはっきりと覚えている。これってまさか・・・


「現実なのか?」


小さくつぶやくと、俺の声に気付いたのか黒髪の子が目を覚まし、俺と目が合う。


「ふふっ、私も眠ってしまってました。おはようございます。気分はいかがですか?」

とても優しい微笑みを俺に向けながら尋ねてくる。

「かわいいすぎんだろ、おい。」

「?? はい?」

「いや、何でもないです。とりあえず大じょ・・・っっつ!」

身体を起こしながら答えようとした矢先、頭に激痛が走った。

「大丈夫ですか!?無理をなされてはいけません。一瞬であの者たちを倒すほどの力を使われたのですから・・・。」


彼女が何を言っているのかよくわからない。もちろんそれは痛みのせいではない。俺は力など使った覚えもなければあいつらを倒した覚えもない。俺が今ここにいるのは彼女達か他の誰かのおかげで助かったからだと思っていた。あの時確かにどうにかしなければと行動しようとしたけど、いきなり意識が飛んでしまったのだ。彼女に聞きたいことが山程あるが、痛みがさらに増してくる。


「ぐぅっ。」

頭を抱えていると、彼女が俺の頬を両手で包んで額と額を合わせる。

「失礼します。」

彼女がそういうと何かに包まれるような感覚とともに頭の痛みが和らいでいく。


これは一体なんなのか聞きたい項目がさらに増えたな、なんてことを考えられるほど痛みが消えている。

「・・・・いかがでしょうか。」

額と頬から離れ、先程の微笑みを再度俺に向けながら尋ねてくる彼女。


「・・・・・・ありがとう。」

素直に感謝した。分からないことばかりだが、彼女は俺が痛みで苦しんでいる状態から解放してくれたのだろう。

「いえいえ、お礼を言いたいのはむしろ私たちの方ですから。」

「ああ、俺が助けたってやつ?でもそれ全然覚えてないんだけど・・・」


ガチャ。


扉の開く音がし、俺と彼女は部屋の入り口を見る。

「目を覚ましたんだね。話し声が聞こえてきたからそうだと思った。」

俺の記憶にある目の前の金髪の彼女は、あの時すごい剣幕で俺に何かを言っていた子だった。そんな子が屈託のない笑顔をこちらに見せながら部屋に入ってくる。

「かわ・・・っと。」

「「え?」」

いやいや、かわいいんですよ、お二人とも。特に金髪のお前はギャップ萌えってやつだな。

「何なのよ・・・。それよりカノン、どう?」

「うん。やっぱり魔力回路のパンクで正しかったみたい。さっきも頭痛がひどかったみたいだけど痛みを除いたわ。」

「そう。それならもう少し安静にしておけば大丈夫ね。あの状況なら強力な魔法を使うのもわかるけど、それなら日頃から鍛えておきなさいよね。」

「ソフィ、助けていただいたのは事実なのだから違うでしょ。」

「うぅ・・・そ、そうね・・・助けてくれて・・・ありがとう。」

なんだなんだ、魔力回路のパンク?強力な魔法?彼女たちは何を言っているんだ??とりあえず金髪っ子の照れくさそうな表情は脳内メモリに保存だな。

「な、なぁちょっといいか?さっきから何を言っているのか全然わからないんだ。俺は目が覚めたら森にいて、音の鳴るほうへ向かったら戦ってる大群がいて、そしたら君らに声をかけられて、襲われて倒れて、そんで今だ。少なくとも俺は魔法なんて使えないし、あんな武器を持った奴らに勝てる力もないぞ?そんな俺があいつらを倒して、ここで寝ている理由が魔力回路のパンク?訳が分かんねえよ!」

溜まっていたモヤモヤを二人に吐き出してしまった。二人の顔がだんだんと深刻になるのもわかった。

さっきまでの二人の笑顔を消してしまったのはわかっているが、このままじゃいけない。情報が何もないんだから。

「怒鳴って悪い。・・・・最初は夢だと思った。でも感覚というか意識というか・・・夢じゃないってわかってきた。あんな痛みも初めて味わった。夢じゃないんだろ。・・・なぁ、教えてくれ。ここは一体どこで、今はどういう状況なのかを。」


しばしの静寂が三人を包む。やっぱまずかったか。不審者です!って言ってるようなものだしな・・・。


「カノン、彼はウソをついていないわ。だとしたら答えは一つよね?」

「ええ。」

「ついにこの日がきたってことね。」

二人は俺が何もなのかを理解したかのように話しているようだ。

「俺のこと何か知っているのか?教えてくれ。頭が混乱しそうだ。」

青と赤の眼が俺の方を見つめている。


「はい、簡潔に言います。あなたはこの地では『ディザスター』と呼ばれる異世界の方です。」

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