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友達

「そうそう、あの時斧が飛んでくると思わねぇから思いっきりビクッってしちゃったよ」

「ビックリ疲れしたよ」

「な~………」


 映画を樹君と見終わった後ファーストフードのお店でポテトをかじりながら私達は映画の感想を話していた。


「あのさ、またナギを誘っても良い?」

「良いよ!パニック映画もアクションもスプラッターも大好きだからまた行こう!」


 私の言葉に樹君はへにゃんと安心したように笑った。

 うわ、イケメンが居るよって思ったのは普通の事だろう。


「ナギと一緒に居るのは安心する」

「はじめて会ってから数時間ですよ」


 シェイクを飲みはじめた私を見つめて樹君はゆっくり言った。


「俺の周りの女ってギラギラしててさ、気分的にはゾンビに囲まれてる感じってかさ………いつか食われるんじゃないかって不安になるんだよ」

「それはさ、イッ君がイケメンだからじゃない?」

「イッ君?」

「カズ君の弟の樹君だからイッ君。嫌だった?」

「………いや、良いけど………」

「嫌ならやめるよ」


 イッ君は困った様な顔に苦笑いをのせて言った。


「何でかな?ナギは嫌じゃない」

「ああ、たぶん私の事もナギって呼んでるからじゃないかな?」

「あるかも?」


 イッ君はコーラに口をつけると一つため息をついた。


「隣の家に三年ぐらい前に引っ越してきた女が居るんだけど、なんか馴れ馴れしくて苦手なんだよ。それなのに毎日押し掛けてきて………自分の部屋に鍵付けたんだ」


 うわ!重症だ。

 なんて言ってあげれば良いか検討もつかない。


「学校行くと他にもベタベタ触ってくるやつとか空き教室に連れ込まれそうになったりだとか心休まる時が、無いわけよ」


 イッ君は肩までの焦げ茶色のロン毛をハーフアップにした髪型に制服は少し着崩されていて………チャラいイケメンに見えなくもない………いや、見た目チャラいイケメンだ。


「服装代えたら?」

「………似合ってない?」

「滅茶苦茶似合ってる」

「俺昔、野球やっててさ………ロン毛に憧れてたんだよ~………ロン毛でカッチリ制服着てるのってダサくない?」

「解んない。けど、イッ君はそれが似合ってるよ」


 イッ君は嬉しそうにニシシっと笑った。

 今のはカズ君に似ていた。

 やはり兄弟ってのは本当なのだろう。

 カズ君は真っ黒の短髪で清潔感がある服装を好むスポーツマンタイプだからなんだかイッ君とはあんまり似てる感じはしなかったが似てる所発見だ。


「ナギは俺をギラギラした目で見ないから安心する。ゾンビの中から仲間が助けに来てくれたみたいな安心感」

「ゾンビに囲まれてるイッ君見つけたら私は逃げるよ」

「………助けてよ」

「………嫌だ。恐い」


 イッ君は不服そうに口を尖らせた。

 イケメン!何やってもイケメン!


「俺はナギがゾンビに囲まれてたら助けるよ」

「マジか!ありがとう!私は無理だ!期待しないでくれ~」

「ヘタレ!頑張れ!ナギなら出来る」


 バカ話をしながら私達はお互いに笑いあった。

 イッ君との時間が楽しかったお陰で私の失恋とも言えない変な感情は跡形もなく消え去ったのだった。




 イッ君は紳士だ。

 大丈夫だって言ったのに家まで私を送り届けてくれた。


「俺がナギと話してたかっただけだって!」


 スマホの番号とアドレスにSNSのIDまで交換して完璧にイッ君と友達になった。

 帰りにイッ君に言われて友達記念に写メを一緒に撮った。

 

「イッ君って女友達みたいだね」

「………嬉しくないよ」

「そう?記念に写真撮るって女子っぽいなって思たんだけど」

「………嬉しくないよ」

「それに紳士だよね」

「………それは嬉しい」


 イッ君は私の頭をポンポンすると、またねって言って帰っていった。

 イッ君は紳士でイケメンで女心が解るから女子にギラギラされちゃうんじゃないかって、その時本気で思ったんだよ。

読んでもらえてありがとうございます!

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