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決意 樹目線

イッ君目線です。

 ナギと校長室に呼ばれた時はナギに申し訳なくて仕方がなかった。

 俺の不注意でナギに迷惑をかけてしまった。

 朝、教室につくと黒板にあの時の写真とビッチって言葉が書かれていた。

 俺はその写真を取ると黒板の文字を消した。

 この写真の角度から言って犯人は若松で間違いない。

 彰太がよってきてニヤニヤしながら言った。


「渚ちゃん狙いだった訳ね」

「………お前、先に来てたんなら黒板消すぐらいできただろ」

「え?樹がちゃんと見た方が良いと思って」

「マジでお前、嫌い」


 周りの視線が痛い。

 けど、たぶんナギの方が酷いことになってるに違いない。

 謝りに行きたい。

 けど、今会いに行ったら更にナギに迷惑をかけてしまうかもしれない。

 俺はどうしたら良いんだ!

 そんな風に思っていたところでの校長室の呼び出しだった。





 家のお袋はキャラが濃い。

 ずっとそう思っていたけどナギの母親も結構キャラが濃い。

 俺はナギとお袋とナギの母親の話に入っていけなかった。

 ナギの母親はホンワカした雰囲気に似合わない脅しを校長達にくりだし、お袋は何時ものように校長達を追い詰めた。

 すぐに校長室から解放され、俺はナギに頭を下げた。

 ナギは気にしてないように俺を気遣ってくれた。

 やっぱり、好きだ。

 そう思ったその時、女性三人の話が予想のつかない方向に動いた。

 ナギの母親はイチャイチャしてるだの避妊しろだの、お袋は彼女ではなく嫁にこいとか………極めつけにナギが俺と付き合ってないのは残念だとか、嫁にって言ってもらえて滅茶苦茶嬉しいとか………

 うぁぁぁぁぁ!ナギが好きだ~って叫びたくなった。

 その後、ナギの母親がオッパイ当てて頑張れとか言うし、ナギはオッパイの使い方なんか知らないもんとか可愛いし!お袋が俺が手取り足取り教えるからとか………ヤバイ!立つ!思春期なめんな!

 俺は立たないようにしゃがんだ。

 前屈みなんか格好悪すぎるから一気にしゃがんだ。

 そのせいでナギに心配されてしまった。

 好きな女の前で格好悪すぎて泣きそうだ。

 ナギは俺に苦笑いを浮かべて見せた。

 俺も苦笑いを返すしかできなかったが、ナギには苦笑いじゃなくてちゃんと笑っていてほしいと強く思った。






 次の日の昼休みになる直前、自習なのを良いことに俺は一人で食堂に来ていた。

 誰もいないと思っていた自販機の前でナギの友達にまた自販機ドンされた。

 なんで、今ここにこの子が居るんだ?

 

「なんで居るの?」

「四時間目サボったから!そんなことよりあんたさ、今回の件で渚にどんな弊害が出てるか解ってる?」

「……苛められてる?それ、俺は何すればナギを助けられる?」


 ナギの友達は眉間にシワをよせて俺の胸ぐらを掴んだ。


「そんなこと私達がさせるわけないでしょ!今回の件での弊害は、渚が実は可愛くて胸がでかいって意識してなかったエロいだけの男達に気付かれちゃったってことよ」

 

 な、なに~!


「しかも、ビッチ呼ばわりされてるから寄ってくんのよ胸しか見てないアホどもが!」

「片っ端から殴っていけば良い?」

「駄目に決まってんでしょ」


 なら、俺は何をしたら良いんだよ!

 

「ナギを守りたいんだ」

「なら、ささっと俺のだから近寄んなって言ったら?あんたが煮えきらないで付き合ってもいないのに抱き締めたりするから悪いんでしょ!」


 あ、この子は俺の味方なんだった。


「そ、そうだね、俺……アホすぎ」


 思わず笑ってしまった。

 ナギの隣は俺のもんだ!とか叫んだくせに今の関係を壊すのに怯えて、何もしないで誰かにとられるなんて冗談じゃない。

 

「ありがとう」

「頑張れヘタレ先輩」

「それ、結構傷付くんだけど……あと、自販機ドンしないでも話できるよね?」

「ヘタレ先輩が自販機の前にいるのが悪いんでしょ」


 俺、そんなに自販機の前に居るか?

 

「きみ、名前なんだっけ?」

「沙織、本当渚にしか興味ないのね」

「沙織ちゃんが居てくれてよかったよ」

「もう一人は友里亜よ。忘れないでよ」

「あ、友里亜ちゃんは解る!腐女子の友里亜ちゃんだよね」

「私は覚えてないくせに……」

「兄貴を壁ドンしたのナギに動画撮られて、その時友里亜ちゃんに見せるって言ってたからさ」

「あんた、何やってんの?」


 本当にな。

 その時、授業終了のチャイムが鳴り響いた。

 俺はナギに告白しようとその時、真剣に決意したのだった。


年末になってしまった。

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