呼び出し
校長室につくとドアをノックして中に入った。
中にはイッ君とイッ君のお母さんの紗季さんと家のお母さんがいて、向に校長先生と学年主任二人と担任二人が居た。
人口密度が半端ないですよ。
「ナギちゃん!ごめんね~家の馬鹿息子のせいでとばっちり!」
「まあ、椎名さん!家の渚だって彼氏とイチャイチャして呼び出されるなんて思ってなかったんですから仕方ないですよ~」
紗季さんの言葉にお母さんが返した言葉を私はため息をついて返した。
「あの、私達付き合ってないから」
紗季さんの顔が固まった。
「まあまあ、渚、付き合ってないのにそういうことになるなんて感心しないわ!」
「友情のハグをしただけだよ」
「「友情のハグ?」」
紗季さんはヒクヒクと口元を歪ませてイッ君に視線をうつした。
「お前、ナギちゃんに友情って言ってハグしてもらったの?」
「………」
「ナギちゃん、コイツ絶体オッパイ当たってラッキーって思ってるようなムッツリだから寄っちゃ駄目!」
「お袋、止めて~俺が変質者みたいだろ~」
「一瞬も思わなかったって誓えんの?」
「………」
「はい有罪!」
イッ君が頭を抱えてしまった。
何だか恥ずかしいです。
「じゃあ、ハグしただけでお母さんは呼び出されたの?」
家のお母さんの一言に紗季さんの顔がパァーっと明るくなった。
「そうよそうよ!ハグしただけて親が呼び出されるなんてないでしょ!実は家の息子がナギちゃん脱がしてるとかそんな言い逃れできない写真があるんでしょ!ナギちゃんが家に嫁に来てくれるような動かぬ証拠を出してくださいよ先生!」
イッ君は申し訳なさそうに呟いた。
「ハグ以上してないからそれはムリだ~」
「………うゎっヘタレ」
紗季さん、イッ君の顔がひきつってますよ。
「じゃあ、なんで私達は呼び出されたのでしょうか?」
お母さんの言葉に校長室に沈黙が流れた。
「先生、家の娘はハグしただけの写真でビッチ呼ばわりされたんですよね?学校は苛めを容認して家の娘に停学やら退学を言い渡す気ですか?………家は構いませんよ!家の主人方の親戚に週刊誌の記者している者が居りますので全部書かせていただきますけど構いませんよね!」
先生達の顔色が悪くなった。
「ああ、うちも!家のリビングを盗撮した犯人を訴えようと思ってますの!私、弁護士をしてますのでこんな卑劣な事件は許せませんから、学校の対応によっては学校の方も………解ってらっしゃいますよね?」
紗季さんの笑顔が怖い。
先生達の顔色は真っ青を通り越して白くなっていた。
結局、家のお母さんと紗季さんの脅しに先生達は屈した。
私達は何事もなく解放された。
「ナギ、ごめん」
イッ君は眉毛をハの字にして謝ってきた。
謝るぐらいならやらなければ良いのに!とか言えない顔だ。
イケメンのくせに可愛いとか質が悪い。
ああ、好きだよ。
「大丈夫だよ。誤解もとけたんだし!それより、イッ君の家のリビングを盗撮してたのは誰なんだろ?イッ君は人気者すぎて大変だね」
私達の後ろでイライラしたような顔の紗季さんが言った。
「こんな事すんのなんてキラキラ女ぐらいでしょ?」
そんな紗季さんの言葉にイッ君も冷たい表情になった。
「だろうな。写真の角度から言っても若松の部屋から撮った物だろ」
イッ君の冷たい声に驚いてしまった。
「渚、椎名君良い男じゃない。本当に付き合ってないの?」
「残念ながらね」
お母さんに右肩をポンポンされて聞かれた言葉に私は苦笑いを浮かべてそう答えた。
「あら、ナギちゃん樹が彼氏じゃなくて残念なの?なら、樹のお嫁さんになってよ!」
「いやいや、紗季さん。紗季さんの言葉は滅茶苦茶嬉しいけど彼女すっ飛ばしてお嫁さんはぶっ飛び過ぎですよ。ねぇ~イッ君………イッ君?」
見ればイッ君の顔が真っ赤なうえに下を向いている。
私が慌てて顔をのぞき込むとイッ君は弾かれたように私から距離をとった。
私、何かしちゃっただろうか?
「あっごめん!違………ナギの言葉に深い意味なんてないって解ってるんだけど嬉しかったから………」
イッ君の言葉を聞いて気がついた。
私、滅茶苦茶嬉しいとか言っちゃった。
私は顔に熱が集まるのが解った。
「あらあら、渚ったら親の前でイチャイチャしちゃって!お父さんには黙っててあげるから避妊はちゃんとしてね」
「お母さん止めて~そういうんじゃないから!変な意識しちゃうじゃん!」
「渚ったらなに言ってるの?椎名君は健全なお年頃の男の子なのよ!渚がオッパイ当てて頑張れば彼女にしてくれるかも知れないじゃない!」
うぁぁぁぁぁ!お母さんがイッ君を気に入りすぎておかしな事を言ってる。
「イッ君はギラギラした子が嫌いなの!そんな嫌われそうな事しないから!」
「じゃあ、私は何のために渚をオッパイ大きく生んであげたの?」
「知らないよ!ってかお母さんが大きくしようと思ってこうなったんじゃないよね?」
だって、お母さんの胸はBだ。
「そういう事じゃないのよ!せっかく武器があるなら使った方が良いって話でしょ!」
お母さんは不満げに口を尖らせていた。
武器ってなんだ!
どう使うのか知らないよ!
「使い方なんか知らないもん」
私の呟きに目の前に現れた紗季さんが満面の笑顔でガシッと両肩を掴んできた。
「使い方なら樹が手取り足取り教えてくれるから大丈夫!」
なんか、生々しくて嫌だ。
私はイッ君に怒ってもらおうと思いイッ君の方を見た。
イッ君は耳まで真っ赤になって膝を抱えてうずくまっていた。
お、乙女だ!イッ君の方が乙女だ!
自分の今までの言葉を思い返すとイッ君に申し訳ない。
「い、イッ君……ご、ごめんね。居たたまれなくさせたのは家のお母さんだよね申し訳ない」
イッ君はゆっくりと顔を上げた。
イッ君ちょっと涙目だ。
か、可愛い!
こ、これ、抱き締めても良いですか?
私は欲望をおさえてイッ君に苦笑いをむけた。
イッ君も眉毛をハの字にして苦笑いを返してくれた。
私達はお互いの母親のせいで気まずくなった空気を苦笑いでやり過ごすことしか出来なかったのだった。
ママさんs、書いてて楽しいです。