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始まりノ時
あれは15年前。
突然の出来事だった。
どこぞのオヤジの首から先を何者かが引きちぎるのを見た。
そこから先はあまり覚えていない。
唯一鮮明に目に焼き付いて離れないのは兄があの場所に居て、最悪の殺戮現場だったと言うこと。
殺人現場では無い、殺戮現場だ。
時は流れ、今は長閑な田舎暮らしと言っても、婆ちゃんの家に転がり込んでいる。
あ、俺が誰かって?
名前は「紅葉」。
もみじじゃないぞ?こうような!
女みたいな名前なのには理由があるんだが、それはまだ言えないんだ。
「こーちゃん、誰と話してるの?」
あーコイツは幼なじみの泣き虫「早苗」、腐れ縁ってやつだな。
「いや、独り言、気にするな。ってか人ん家に勝手に上がって来るなよ
」
田舎だから鍵をする習慣が無いから誰でも入ってくる。
「だって、こーちゃんがこの本欲しいって言ったから持ってきたんだもん」
剣術入門。
「あ、サンキュー。帰っていいぞ。」
俺は、本を受け取り部屋の奥に入って行った。
もちろん早苗はすんなり帰る訳もなく、婆ちゃんのお手伝いをしていた。
そんな平和で長閑な時間が崩れ去る事は、今の時点で誰も気づくはずもなかった。