劇「斎藤和哉」
アリアは台本を開き、ゆっくりと口を開いた。
「 ある夏の日、女性は出会った。少年は女性の前に現れた。女性は彼を一目した途端顔が赤くなるのが分かった。そして女性は悟るのでした。私は彼の事を好きになってしまったのだと…」
舞台は暗くなり、世界そのものが変化した。そこには私のあの日が広がった。
「和哉君、私和哉君の事好きになっちゃった」私は彼にそう言った。彼は顔を真っ赤にして驚いた後、「僕なんかでいいの?」そう言った彼に私が抱きつき、「勿体無いくらいだよ」
これは私達が久しぶりに再開した日、そして付き合い初めた日、
暗転
気が付けば舞台に戻っていた。
「彼が彼女を思ったのは彼女の事を意識し出したのは彼女の遥か昔の事だった。」
暗転
「夏樹さんは何でそんなに頑張れるんですか?」これは3年前、私達が共に大学生だった頃の話…確かあの頃は彼とは同じサークルで2人になることが多かったっけ「どうしたの?和哉君だって毎日頑張ってるじゃん」「でも、凄いです。」彼は俯きながらそう言った。
暗転
「彼はこの頃、女性に特別な思いを持ち始めた。だが、彼はその気持ちが何なのか知らずにいた。そしてこの頃のことであります。もう一つ出来事は起こった。それは彼の家族が火事で亡くなったこと。」
暗転
焼けた家の前で彼は立ち尽くした…周りはとても騒がしかったがとても静かだったらしい。そして出会いました。死神に
「君はとても美しい絶望を持っているね。とてつも無く哀れな生物だよ。」「…」「なんだい、君はつまらないな。どうだい?ワシは君が、気に入った。契約しないかい?」「…」「反対しないならいいってことだね。まあ、君に説明するよ」死神はニヤリと笑った。
暗転
「和哉君は仕事そろそろ慣れた?」「疲れますけどね。なんとかやってます」「また敬語、普通に話してって言ってるじゃん。」「先輩ですからね、昔から。今更変えられません」これはあの日、最後の日。彼が死んだ日。自殺した日。
「〜ですね。」「そうだよ〜もう、クタクタで…あ、」「夏樹‼︎‼︎」「にゃはは。いい顔頂きました〜」そういい、私は彼を見ながら後ろ歩きした。そこが道出あると言う事すら忘れて…
キオクトチガウ
何故私が…彼が生きている…
暗転
「普通なら話はここで終わってしまいます。ですがこの話は続きが作られてしまった。」
死神はニヤリとした後言った。「君は他人の死を覆せる。その代わりに君が死ぬ。等価交換だよ。昔の法律にあっただろ。<目には目を、歯には歯を>だっけ?つまり死には死をって事だね。」
「死神。そこにいるのだろ。」「君も単純だね」「ああ、単純だよ。単純に純粋に明解だ。」「君とはもう少しいたかったがね。」「そうだね」「でも、君が死ねば彼女は」「分かっている。でも、」「分かった。君とは長い付き合いだ。サービスしてやるよ。貴様の思いは伝えてやる」「ありがとう。リア。」「謝らなくていいよ」
暗転
「これが斎藤和哉さんの知られざる物語です。」アリアはそういい、台本を閉じた。