表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
seventh  作者: 篠原リラ
第二章
17/19

圭と理沙

裕一に了承の意を伝え、部屋を辞して薄暗い廊下を並んで歩く。

少し痩せたようだ、と理沙は隣の男を見上げて思った。使役用の幻獣狩りに出かけていたらしいが、これだけ長い期間学園を離れていたのは珍しい。


「……大丈夫?」

「ん?ああ、うん。大丈夫大丈夫」


へらへらと笑って、彼は手を振る。

疲れていないのかという問いにも、同じように笑った。


「これからお前の部屋行ってもいいでしょ?今回の件の概要と、協力要請したっていう生徒たちのこと教えてほしいんだけど」

「まあ、構わないけど…手土産のひとつもないの?」

「あ、忘れてた。コレあげる」


言いながら手渡されたのは、青い雫型の石が付いたピアスだ。

冗談だったのに、と理沙は笑って受け取る。


「……うん、やっぱり似合う。見つけたとき、お前を思い出してね。きっと守ってくれるよ」

「圭……ありがとう」


早速身につけての礼に、渡した方が気恥ずかしいらしく、圭は軽く頬を掻いた。

学長室のある三階から、二人は階段を下りる。途中、時計を見ると十時を回ろうとしていた。



校舎を出て、左手に向かう。

二つある見慣れた建物のうちの片方に、二人は入った。時間も時間なだけに、サロンやエントランスに人気はない。

一応男子寮と女子寮に別れてはいるものの、お互いの行き来に特に制限もなかった。よって、圭は堂々と理沙についてエレベーターを待つ。

彼女の部屋は最上階にあった。程なく着いたエレベーターが、二人をそこへ連れて行く。


「どうぞ」

「お邪魔します」


形式ばった挨拶を交わし、中に入る。彼が学園を出る前と同じ、整理整頓が行き届いた部屋だった。

理沙は普通の生徒とは違い、一人でこの部屋を使っている。部屋自体も、寮というよりは高級マンションの一室に近い。


「相変わらず、いい部屋だねえ」

「別に普通の部屋で構わないんだけど、一人部屋ってここしかないんだもの」


遠慮なくソファへ腰を下ろした圭のために、コーヒーを淹れながら彼女は答える。

一度それをテーブルに置くと、自分の紅茶とノートパソコンを持って自らもソファへ座った。

映司から聞いたことをざっと話した後、慣れた手つきで生徒の名簿を開く。映司と彩芽にも見せた、生徒たちの細かいプロフィールが載っている画面を映すと圭の方へ向けた。


「こっちが芳川映司、こっちが椎名彩芽。それから松前直。この三人が、学長が協力要請した生徒たち」

「……全員一年?嘘でしょ?」

「残念ながら、本当よ」


圭の言葉にため息混じりで返し、理沙は言う。


「いくら対吸血鬼部の生徒が少ないからって、二、三年もいるでしょうよ」

「映司くんがカミラって吸血鬼に襲われた時、バリーと会ったから……だと思うけど」

「うーん、人材不足ってのは本当だねえ。裕一が出られれば一番手っ取り早いのに」

「それができない理由は良く知ってるじゃない」

「まだ沈静化してないわけ?権力闘争」

「あなたがいない半年程度で解決できるなら苦労はないわ」


それもそうか、と思いながらコーヒーを一口飲んだ。

斜宮学園では、数年前に前学長が突然逝去して裕一がその後を継いだ。もともと裕一が次期学長であることはほぼ決定していて、周囲はそれが少々早まっただけだと思っている。

しかし、中には若い彼に任せられないと反対する者もいた。それは討伐者としての力量に嫉妬してのことも少なくない。

結果、斜宮学園内の権力は二分された。片方は裕一を学長として認め、彼と共に学園を作ろうとする一派。もう片方は裕一をどうにか失脚させ、学園を乗っ取ろうとする一派。

理沙や圭はもちろん裕一派であるが、対立する一派の首謀者はいまだ掴めずにいた。


「今回の件、どう思う?」


紅茶に口をつけ理沙が問う。眉を顰めて圭は答えた。


「わからない。けど、これが裕一の失脚を狙ってのことかと聞かれたら、違うとも言えないねぇ」


手を顎にやり、無精髭を撫でながら続ける。


「実習や演習での事故による負傷や、極端な話死亡したとしても、それらは仕方ないと受け入れられる。けど、何の危険もないはずの寮や学園内で、吸血鬼に襲われただの生徒が行方不明……というか眷属にされただの、そういうのは十分失脚の理由にならない?」

「なるでしょうね。きっと責任問題って言い出すと思うわ」

「裕一はあの若さで良くやってるよ。くだらない権力闘争なんかでよけいな心労をかけたくないね」

「そうね……圭より年下だもんね」


悪戯っぽく笑って言った理沙の言葉に、思わずコーヒーが気管に入ってむせてしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ