表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
seventh  作者: 篠原リラ
第二章
14/19

僅かな共通点

生年月日、出身地、年齢、身長、体重……そういった彼の記録が、順に公開されていく。

何とはなしに、気まずいような気がした。他人のプライベートを覗き見しているからに他ならない。


「本当は見せちゃいけないんだけど、学長の許可は取ってあるから。気にしない方がいいわよ」


見透かしたように理沙は言った。曖昧に頷いて、三人は画面を見る。

斜宮学園の受験を志望した理由に、昔討伐者に助けてもらったことがあるから、と記入されているのが目に入った。


「これは……」

「よくある憧れってやつじゃね?」


映司がつぶやく。こともなげに直は言うが、何故だか妙に気になった。

というよりは、ふと思い出した。


「仁科さん、バリー・フィーアって名前のヴァンパイアハンターを知ってますか?」


その名前を口にした瞬間、理沙の表情が変わる。


「……その名前をどこで聞いたの?」

「あの……助けてもらったんです。この、望月の件で。カミラというヴァンパイアに襲われているところを」

「そう……そうなの」


彼女はそれきり、何か考え込むように黙ってしまった。

仕方なしに、彩芽が横からパソコンの画面をスクロールしていく。


「他には何も変わったところはなさそうだね」

「そうだな……家系も普通、討伐者の血縁はなし。特に狙われる必然性もないってことか」


ちらと映司を見ると、こちら何やら考えているのか画面を見つめたまま固まっていた。

直と顔を見合わせる。それから小さくため息をついて、彩芽はパソコンを閉じようとした。


「ちょっと待ってくれ」


考えが纏まったらしい映司が、それを止める。それから理沙の方を向いて、問いかけた。


「あの、岳村のも見せてもらってもいいですか?」

「え?あ、ごめんなさい、聞いてなかった」


自らの思考から唐突に引き戻された彼女は、焦ったように言う。苦笑して、映司は同じことを聞いた。

少し悩んでから、理沙は頷く。何か思うところがあるようだった。

彼女がまたパソコンをいじると、すぐに岳村の顔写真つきで、似たような記録が現れる。

同じように生年月日やら身長、体重。それらの記載を流し読みして、映司は気になった箇所へ辿り着いた。


「……あれ?」


映司と共に画面を目で追っていた彩芽が、不思議そうに首を傾げる。


「何だ?志望動機……?子どものころ、とある討伐者に助けられたため……って、え?」


彩芽の視線の先を読んだ直が、その動きを止めた。

いささか固い動きで映司を見る。彼は小さく頷いた。


「これだけじゃ何とも言えない。偶然の一致と言われればそれまでだ。ただ、俺は……少し、気になる」

「他の生徒も調べてみる?例えば、サロンで僕が最初に話してた人とか」

「いや」


短く答え、理沙に目をやる。

彼女は諦めたように微笑を浮かべ、彼を見返した。


「確か、国内の『人ならざるもの』の討伐記録は、すべて学園にあるはずですよね」

「そうね」

「そして、すべての討伐者のデータも学園にあるはずですね」

「……そうね」

「すみません。もう一度、同じことを聞きます。バリー・フィーアというヴァンパイアハンターを知りませんか?」


やはり、と思いながら理沙は息を吐く。

映司の視線を正面から受け止めながら、ここではぐらかすのは無理だと悟った。

彼の考えを証明できる証拠は十分ではないにせよ、恐らくそれは正しいからだ。それに何より、映司の双眸はそれを許してくれそうになかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ