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第9話

 ホワイトダンデライオンと名乗った彼に会った翌日、道端でタンポポが咲いているのを見つけた。

 それはどこにでもある、鮮やかな黄色い花。

 白いタンポポとはどんなものなのだろう。

 黄色いそれはとても強かに見えるけれど、白くなるとどんな風に映るのか。

 想像してみてもか弱いイメージにしかならなくて。

 それが彼とどんな風に繋がっているのか、全く思いつかなかった。


 


「で、考えてくれた?」


 昼休み、奈穂とお弁当を広げていた私の前に彼は現れた。

 空いている椅子を引っ張ってきて、当たり前のように輪の中に加わる。

 体中に感じる視線がとても痛かった。


「う、宇都木くん? え、由奈、どうゆうこと?」

「由奈に告白したんだ、俺。よろしくね、由奈のトモダチさん」


 珍しくニコニコと微笑む彼に黄色い声が止まない。

 それが高まると同時に、私への嫌味も酷くなる。


 目の前の奈穂に至ってはキラキラした視線を向けてくる。

 きっとこの状況を楽しんでいるのだろう。

 元々こういう恋沙汰が好きな彼女だから。

 どうしてこんなことに。

 非難の目を彼に向けたが、返ってくるのは甘い笑みばかり。


「由奈、玉子焼き貰っていい?」

「……ダメ」

「じゃ、由奈ちょうだい」

「もっとダメだから」


 伸びてくる手からお弁当を守りながら、きっと彼には周りの声なんて聞こえていないのだろうと思う。

 もしかしたら奈穂でさえ視界に入れてないのかもしれない。

 その証拠に、あれ以降一切彼女に意識を向けていない。


「けち」

「けちって……」


 拗ねたようにそっぽを向くと、周囲の雰囲気がちょっと悪くなった気がする。


「あーぁ。由奈ったら、ファン全員敵に回したんじゃない?」

「大丈夫、由奈は俺が守るから」


 いっそ関わってくれない方が安全だと思うんですが。

 そんな言葉をお茶と一緒に飲み込み、私は今までにないくらい大きなため息をついた。


 ……昨日から災難すぎる。

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