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第7話

 あれから場所を移動して、ここは駅前のファストフード店。

 向かいに座るのは、今日会ったばかりの宇都木春馬だ。

 黙々とポテトを頬張る姿も絵になっている。

 かっこいい人が何をやってもかっこいいのはこういうことだろうか。


「それで、思い出してくれた?」

「な、何を?」

「何をって……俺と出会ったときのことだよ」


 呆れたように言う姿もかっこよくて、ちょっと悲しくなった。

 私がそばにいていい人ではない。

 もっと彼に似合う人がいる。


 そう言ったら、彼はどんな表情をするのだろう。

 どんなことを言ってくれて、どんなことを思ってくれるのだろう。

 少しでも寂しい表情を浮かべてくれればいい。

 少しでも、怒ってくれればいいけれど。


「今、変なこと考えただろ」

「へ」

「顔に出てる。すぐ出るよね、由奈は」

「考えてない……よ」


 俯いて、顔を隠す。

 すぐに顔に出るというのは信じられないけれど、もし本当なら気分悪い。

 彼の気分も悪くしてしまうかもしれない。

 そういうことを考えていることは十分理解していた。


「俺と由奈が初めて会ったのは三年前、中二のときだよ」


 それぞれ違う中学に通っていたけれど、会わないこともなかったらしい。

 彼は生徒会に入っていた分、近くの中学に行くこともあった。

 もちろん私が通っていた中学にも。


「こんな見た目だから、その頃からまぁいろいろとあってね」

「人気者だったってこと?」

「今よりも酷かったけどね」


 そんなとき、彼は私と出会った。

 覚えてないけれど、話しかけたのは私の方からだったらしい。

 熱烈なファンに追われて隠れていたなんて、本当に漫画のような話だ。


「そのとき、由奈が言ってくれた言葉が嬉しくてね。それから、ずっと好きだった」


 高校に入ったときはまだ私が同じ学校にいると知らなかった。

 それもそうだろう。

 目立つようなこともないし、部活に入ってもいない。

 同じクラスにでもならなければ、気づくことも難しいだろう。

 そう考えると、同じクラスにもならずに見つけた彼は結構すごいのかもしれない。


「私、何を言ったんですか?」


 まだそのときのことは思い出せない。

 私はあの頃彼に何を言ったのだろう。


「じゃあ、私はあなたの友達になりたいな」


 偉そうなことを言っていなければいいと願ったけれど。

 案の定、そんなことを口にしていたらしい。

 でも彼はそれがよかったんだと微笑んでくれた。

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