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竜の霍乱!?

未来編です


王都では久々の雪が降り、一面を銀世界へと変えていた

近年まれに見る寒さに王都では風邪が流行していた


そんな寒さの中、王宮ではこんな人物が風邪を引いた





いつものように朝議で閃の警護に竜将軍こと神楽はあたっていた

いつもの簡易の軍服に帯剣と玉を携えていた

だが、その顔には仮面はない


すでに正妃としての地位を確立し、後宮での生活を送るべき存在となっていた神楽だが閃の傍で政治面、経済面、軍事面の意見を官吏達の前でも対等に言える存在となり民からも絶大の支持を得ている


女の視点ならではの意見は璉国をさらに活気づかせている


いつもの朝議の間での審議も終わり、閃が自室での執務に戻ろうと玉座から立ち上がろうとした


「?」


いつもなら玉座を立ち上がると同時に立つ神楽の音がしない

不審がり閃は玉座の左横にある正妃の座を見ると


「!!!!神楽!!!」


正妃の座に座り、肘置きに肘をついて上体を斜めに倒して手は頭を押さえている

顔はよく見えないが覆っている手の隙間から神楽の顔色はかなり悪い


平伏している官吏達は王の声に一斉に顔を上げた

礼儀もなにもあったものではない閃はすぐさま神楽に駆け寄り

様子をうかがう


「神楽?大丈夫か?どこか気分が悪いのか?」


閃の声に反応するかのように神楽が少し顔を上げると閃の顔は蒼白になる


外で軍事訓練などを行う神楽だがどういう訳か、肌が焼けることはない

白すぎる肌というわけでもない


だが今回だけは顔色が白い

いつもであればべにも付けない唇は桃のようにふっくらとしているが、今日は真っ青である

唇が震えるように開くが、声を発することなく

神楽は気を失い上体が重力に任せて前にいる閃に向けて倒れ込んでくる


「神楽!!神楽!!」


どんなに閃が声を張り上げてもピクリとも神楽は反応はしなかった

神楽の体は火のように熱く、呼吸は全力疾走したかのように荒い


「医師を呼べ!!すぐに呼べ!!」


官吏達から声が上がる

王宮は上へ下への大パニックである

あの竜将軍が倒れたのである



後宮の王妃の部屋では女官達が中の様子を探ろうと必死になって壁に張り付いている


「ねぇちょっと・・・中の様子分かる?」


「ちょ!うるさいわよ!!気づかれたらどうするのよ!!」


10人ほどの女官達が壁に押し合いへし合いしながら、廊下で騒いでいる



ガチャ


いきなり王妃の部屋の入り口が開いた

女官達は蜘蛛の子を散らすより早くその場を素早く離れた


「・・・・女官は元気ですなぁ」


「・・・彼奴ら・・すぐさまクビにしてやる・・」


「その様なことをなさいますと王妃様怒られますよ」


部屋から出てきたのは閃と医師である阿宗あそう医師である

阿宗医師は60を越えたばかりの真っ白な髭が特徴的な老人だが、様々な薬草や医術を持ち、医術界にとっては知らぬ者はいないと言うほどの人だ


「・・・では・・給料削減・・」


「ほっほっほっ。それでも正妃様に怒られてしまいますよ。」


この医師にとってこの年若い王と正妃は孫にも似たような存在で、ついついからかってします。

璉国広しといえど閃王相手にここまで言える存在は正妃以外この医師ぐらいだろう


阿宗医師の言葉に閃の眉間にしわが寄る


「ほっほっほ。せっかくいい顔なんですから、そんなシワを残しなさんな。」


「さっさと出て行け!!このクソじじい!!!」


言葉で言い負けた閃は叩き出すように医師を追い出した


「ったく・・・あの狸が!!」


部屋に残った閃は扉を閉めながら憤慨していた

本当であれば激怒してこの老人一人どうにでもなるが、妻である神楽が先生と呼んで慕っているので、どうすることも出来ない


ましてや、医師としても阿宗医師と肩を並べる神楽がダウンしている以上神楽を診せる人物は阿宗医師に頼るしかない


閃は荒々しく歩いていたが寝台に寝ている神楽を見た瞬間、その足音を消して神楽に近づいた


息は荒く、意識はまだ戻ってはいない

手に触れると火のように熱い


風邪と言って甘く見てはいけない

毎年多くのものが風邪で亡くなるものは多い


替われるものなら替わってやりたい

愛しい人が苦しんでいる

張り裂けそうなほどの痛みが閃を襲う


失うのが怖くて神楽の手を握りしめる

自分より一回り小さな手が儚く消えてしまわないようにしっかりと握りしめる


すると、ピクリと神楽の手も閃を握り替えしてくる


「!!神楽?分かるか?」


手を握ったまま神楽を上から見る

何度か瞬きしていつもより弱々しい瞳が目を開ける


神楽の顔の輪郭を確かめるように閃の手が滑るように撫でる

状況を把握しようとする神楽の瞳が虚ろに周りを探る


「この頃無理をしすぎたのだろう・・風邪を引いたみたいだよ・・」


神楽を安心させようと閃が声をかける


すると神楽は掛け布団から手を出して閃を拒絶するように

閃を押しやる


「な!ど、どうしたんだ!神楽!俺だ!閃だ!」


イヤイヤと首を振り閃を近づけさせないように神楽は抵抗する

その抵抗はいつもであれば強いかもしれないが、今日は弱り切っている神楽だ

その抵抗虚しく閃に抱きしめられる


「頼む!!拒絶しないでくれ!!」


その声に神楽の抵抗は止む


「・・・閃・・・移ります・・」


観念したかのように神楽はポツリという


「移してもいい・・いや移した方が早く治るという。君が苦しんでいる姿なんてもう見たくない・・」


「ダメです・・あなたの代わりはいないのですよ。」


「だったら君の代わりもいない・・頼むから俺を拒絶するな・・君に拒絶されたら俺はどうしていいのか分からない・・」


苦しげな閃の声に、抱きしめてくる閃の腕が震えている


愛されていることが実感できる

この手を振りほどいて、この声を聞かずに生きてはいけない

このせん無しに神楽も生きてはいけない


「閃。移らないようにしてくださいね。」


「それは寝台で言う台詞ではないぞ、神楽」


「えっ」


神楽の唇に押し当てられる閃の唇が全てをのみ込むように覆い被さってくる

少し開きかけだった唇に舌を潜り込ませ、口内をまさぐり出す


神楽が病人であるということを忘れて閃はキスに溺れた

閃を押していた神楽の手がクタリと寝台に落ちた時、閃は意識が戻った


もう一度神楽を見つめると顔を真っ赤にして酸欠になって神楽は意識を失っていた


「やべっ!やり過ぎた!!」


反省する気持ちと下半身からわき上がる欲情をどう抑えようかと閃は悩む


「早く良くなってくれ・・・神楽・・」


すでに意識がなくなった神楽の頬にキスを落とし、寝顔を眺め温かく見守るのであった

閃は神楽の傍を離れることなく看病をし続けた

それにより

数日間全く政務が進まず、正妃のもとに多くの官吏達が泣きついてきた

神楽に諭され閃はやっとイヤイヤ、しょうがなく、何度も振り返りながら執務に向かった





その数日後、閃王も風邪を引き、神楽の看病を期待して寝台にウキウキとしていたところを正妃の神楽から雷が落ちたことは言うまでもない



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