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運命の時の物語

神楽が閃を治療してからの二人の関係は一気に変わった

閃にとって神楽は

やってくる患者さんの怪我を看て悲しい表情をしたり、元気に戻っていく姿を見て笑ったりクルクルと表情の変わる可愛い生き物という感じであった



だが、時々モヤモヤした感情が出てくる

神楽と話していたとき、急な患者や来客に神楽の視線が奪われる瞬間である


何か胸の辺りが、モヤっとした感じがしたり、イラっと感じがする

特に男が相手だとその思いは強くなる


この感情が一体何なのか分からない

だが、神楽の視線は移ろいで欲しくない

自分だけを見つめて欲しい

どうしたら彼女かぐらの視線を独り占めできるだろうか


ウーンと悩んでいると閃は村の子供達に囲まれた

閃より年齢も体格も上の子供達だ


「きょ、今日こそは!!ぜ、絶対にお前を倒す!!」


「泣かせてやる!!」


囲む男の子達は何処かしら傷を負っている

その傷は閃に負けて付いた傷だ


剣の練習を怠らない閃はこの村の男の子の中で一番強くなっていた

閃のことを嫌う子供達は何とかして閃を負かそうと5~6人で戦いを挑んでいく

だがその度に負かされて泣いて神楽に治療と受ける


それが閃にとってはイラっとする

イジメにきて負けて神楽の視線を独り占めできる

そんな奴らがむかついて閃はついつい力が入ってしまって相手を負かしてしまう


どうしたものかと閃は囲まれているにもかかわらず考え事をしていた


「へ、っへ!こいつビビッてやがる!」


「泣いて許しを請うなら許してやってもいいがな!!」


動こうとしない閃に男の子達は調子にのる


「泣いて・・・・そ!そうか!!!!」


閃はいい考えが浮かんだ

満面の笑みを浮かべて


「うううっ・・え~~~~~~~~ん!!!!」


村中に響くように閃は大声で泣いた


それに驚いたのは村の子供達だ

今まで負かされ続けてきたのにいきなり閃が泣き出した

オロオロと右往左往してしまう


「何やってんの!!!」


いきなり可愛らしい声が響いた

びっくんと体を震わせて男の子達は声の方を向くと神楽が片手に身の丈よりも長い棒を持ってたっている


「閃に何してるの!!!」


素早く駆けだし閃の元に近づく

そして棒の先端をガキ大将に向ける


「暴力は嫌いだよ!もし閃をいじめたら許さないからね!」


閃は確かに強い。だが、それより強いのはこの幼い神楽だ

技のスピード、身体能力の高さどれをとっても神楽に敵うものはいなかった

その神楽が棒の先端を向けている

明らかに分が悪いと思った男の子達は急いで駆けだして逃げていった


「もう!・・・大丈夫閃?」


駆けていった者達を見送って神楽は閃に向き直る


閃の瞳には大粒の涙が浮かんでいる


「大丈夫?どこか怪我した?」


神楽は何処も怪我をしていないか閃の周りを見渡す

泣きやまない閃に神楽は心配になって閃の頭に手を伸ばす

一生懸命になって閃を泣きやまそうと手を伸ばして頭を撫でる


閃が泣きやまないので神楽も瞳に涙が浮かぶ

でも泣かないように閃を慰め続ける


閃はニヤリと口角をあげたくなるが必死になって堪える

神楽の瞳を独り占めしている

瞳以外にも心まで支配しているようだ

泣かないように必死に堪える神楽が可愛くて可愛くて今すぐに抱きしめたくなる


だがそんなことをすれば神楽は閃がからかっていると思って怒るだろう

この視線を独占したい

こうして閃はわざと泣くようになった

強さでは明らかに閃の方が子供達より圧倒的に強いが

わざと負けることで一目散に神楽が閃目掛け駆けてくる優越感

その高揚感のためだけに閃は何度だって負けてやる


ただ真っ直ぐに見つめてくれる神楽の瞳がある限り・・・・



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