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-一章- ~二~

旅館編の三話目になります。


とある温泉旅館での鏡たちの珍道中。今回はお約束なお色気シーンは一切なし。

いつものノリで鏡が苦労を背負い込みます。


では、どうぞ。

「いらっしゃいませ~!ようこそ、ようこそ!御出でくださいました!!」


旅館の玄関でなんか凄い歓迎された。

従業員が玄関の脇からズラッと並び、皆一様に笑顔を浮かべていた。笑顔さえなければ、まるで何所かの組の出迎えだ。

しかし、彼らの笑顔に鬼気迫るものを感じるのは気のせいではあるまい。数人涙を流している姿が見受けられる。

そこまで嬉しいか?

女将さんらしき妙齢の女性が出迎えの言葉を述べてくれているが、ここまでの歓迎をされると逆に怖い。

女将さん目が血走ってるし、異様に白い。化粧のし過ぎだ。

だがその理由は予想できるため、文句は言えない。それを承知の上でここに来たのだから。

さっき聞いたばかりだけど。


まぁ、何はともあれ、過剰な歓迎を受けた俺たちは諸々の説明を受けた後部屋に案内された。



「さてと、それじゃあさっそくお風呂に行きましょうか!」


部屋に着き、荷物を整理し終えるなり零が元気よく言った。

いったいどれほど温泉が楽しみなのか、その目は爛々と怪しく輝いている。

・・・はて。あの目に獲物を狙う狩人の光を見たのは何故だろうか。

果てしなく不安だ。


「うん!温泉楽しみ!!」


「桜花。あまりはしゃぎ過ぎちゃ駄目よ?あと私の傍からあまり離れないでね。変質者が出るから」


「え?うん。分かった」


いそいそと準備をし終え、今にも走り出していってしまいそうな桜花を、同じく準備を終えた真雪が嗜める。


「・・・・・・ん?何でこっち見てるの?」


「・・・何でもないわ」


「そう?ま、いっか!」


真雪の視線を不審に思いながらも、零は気にしないことにしたようだ。温泉の前に目が眩んでいるに違いない。


って、ちょっと待て真雪。何故こっちにまで視線を送る。

後ろを確認するが、誰も居ない。つまりは真雪は俺を見ているのだ。

先の真雪の発言を思い出してみよう。


・・・変質者が出るから。


・・・・・・まさかね。

銀司ならいざ知らず、俺がそんな目で見られているだと?

ありえない。俺は断じて変質者などではない。確かに最近自分がシスコンであると自覚してしまったがそれは今回は関係ないだろう。つーかシスコンで何が悪い。可愛い妹を大事にして何が悪いというのか!!

もとい、考えてみると俺たちは一つ屋根の下で暮らしているのだ。それで今更変質者扱いされる謂れはない。それでも俺を変質者というなら何か理由がある筈だ。

可能性があるとすれば、この旅館に関係することだろう。

旅館、温泉、浴衣、料理、卓球、温泉饅頭、風呂上りの一杯、混浴、露天風呂・・・むぅ、分からん。

ふむ、角度を変えて考えてみよう。

変質者、とりあえず俺じゃない、銀司、女の敵、犯罪者、犯罪、変態行為、覗き・・・


覗き


それは数多もの先達が挑み、幾度となく阻まれ、成功したとしても後に制裁を喰らう温泉イベントのお約束。


あぁ・・・・・・・・・・・・・・・これか。


いや、だが俺はそんなことはしない。女湯を覗くなど愚の骨頂。

だって怖いんですもの。雷が。水場でアレはヤバイ。

ともかく、覗きなどあり得ないのだから、真雪の心配は無用のものだ。

銀司ならやりかねないが、全力で阻止しよう。たとえその結果、一つの屍が築かれることになろうとも。とばっちりはごめんである。


しかしまあ、温泉か。覗きなど許されるべきものではないが、男である以上温泉でその類の妄想が掻き立てられるのは仕方ないともいえる。ある意味男の性だ。程度はあれど、皆一度は通る道だろう。

斯く言う俺もその手の桃色の妄想がないかと問われれば嘘になる。

そう、例えば・・・

風呂上りで上気した肌、着崩した浴衣を羽織り、蕩けた表情を見せ普段とは違う妖艶な色香を漂わせる桜花。俺は思わずその姿に見蕩れて・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これ以上は何も言うまい。

というか、ノーコメントでお願いします。

それでもあえて言うなら、男はそういう生き物です。どうかご容赦を。


「鏡さん鏡さん、ちょっと・・・」


思考の海で溺れていると涼やかな九凰さんの声で引き上げられた。


「何ですか?」


九凰さんは廊下の端の方で手招きをしていた。

何故こんな所に。何かみんなの前では言いづらいことでもあるのだろうか。


「実はですね・・・」







「・・・なんだかなぁ」


俺は、ロビーで椅子に座り呟いた。

桜花たちは温泉に入っている頃だろうか。何で俺はこんな所にいるのかといえば、九凰さんの言葉が原因だったりする。


先ほど九凰さんから言い渡されたことは、この旅館に出没する幽霊の調査をしてほしいとのことだった。

なんでも幽霊退治を旅館から依頼されていたそうで、その報酬の一部として格安で旅館に泊まれることになっていたらしい。

まあ、それはいい。世の中ギブアンドテイクだ。旅館の皆さんは困っているようだし、それくらいならお安い御用だ。


だが、何故俺?


心霊関係は九凰姉妹の本業の筈だ。こちとら妖怪であって妖怪退治ならいざ知らず、御祓いなど出来るはずもない。

その九凰姉妹の言い分によると、御祓いなら出来るがその前段階には時間がかかる。

つまりは、問題の幽霊が本当にいるかどうかもまだ分からない。さらに仮にいたとして、見つけないことにはどうしようもない。その他諸々の理由でとにかく情報を集めて欲しいとのことだ。

そしてそのためには足が重要。旅館周辺を端から端へと駆けずり回り、調査するためには体力がある者がうってつけ。という訳で、俺が担当することになった。押し付けられたとも言う。

銀司も動いているらしいが、九凰さん曰く「あの狗、もとい銀司さんだけでは大変でしょうからお願いできませんか?」ということらしいので、仕方なく引き受けることに。

てか狗て。

銀司、お前の想いが成就することはないだろう。それでも近くにいたいなら狗になるしかないみたいだぞ。


それはさておき、本来なら俺たちだけでなく全員で調査した方が早いのだろうが、今回の目的は幽霊退治ではなくあくまでも旅行なので、出来るならゆっくり寛いで欲しい。そういう九凰さんの気遣いという建前で、理不尽にも俺たちだけが温泉にも入らず汗かく破目になっている。


「まあまあ、ご主人。腐っていても始まらないわ。さっさと終わらせましょう?」


「・・・ああ」


隣に座っていた、哭月がなんとも大人な発言をした。確かに愚痴っていても仕方がない。


「けど本当にいいのか?皆と温泉に入らなくて」


哭月は何所で聞いていたのか、俺が不満を抱きながらも調査に向かうと自分も手伝うといって着いてきていた。


「いいのよ。後でゆっくり入るから」


「そうか?まあ、哭月がいいならいいんだけど」


悪い気もしたが、人手が増えるのはありがたい。

あれで哭月は優しいのだ。何かお礼を考えておくかな。


「ご主人と一緒にね」


「・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」


今なんて?


「さ、行きましょうご主人!」


「あ、あの・・・え?ちょっと、哭月さん?さっき何て言ったの?ねえっ!?」



様々な不安や問題を抱えつつ、とりあえずは幽霊調査を開始することにした。

やれやれ。どうなることか。

全く関係ないですが、新作三本を書こうかと思案中。そうなると更新はさらに遅くなります。

なので、五話くらい書き溜めてから更新しようかなーとか思ってます。

さらには一本二次創作も企画中です。てかプロローグは一話もう書いちゃってたり。投稿するかどうかは分かりませんけどね。


つーわけで、作者も予想外に話が長くなりそうな旅館編。他には一章ではチョコとあと一つくらい話を書こうかなと思ってたんですが。長い道のりになりそうですね。今年中に一章終わらないかも。

まー、気長にやるしかないですかね。あまり更新が停滞しないように頑張ります。


では、また次回。

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