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-終章-

ようやく完結。

いや、嫌に長かった。


舞台は狭間の世界。


では、どうぞ。

「随分長い回想だったみたいね、ご主人」


気がつくと、間の前に哭月の顔があった。

ここまで接近されて気付かないとは、少し気が緩みすぎかもしれない。いくら過去に思いを馳せていたとはいえ、注意力がなさ過ぎる。


「まあ、気持ちはわかるわ」


「ん?」


何故か、哭月が頬を染めながら明後日の方角を見て呟く。

嫌な予感しかしないのは、俺の気のせいだろうか。


「だって、私とご主人が初めて結ばれた時のことだもの」


「そんな事実は一切確認されておりません」


案の定だった。

確かに混浴なんてこともあったがそれだけだ。危うく流されそうにはなったものの、結局は未遂に終わったのだから。


「え?ご主人覚えてないの?」


「は?」


「いや、最後の夜、桜花が寝静まった頃にご主人を引きずり出して・・・・・・」


「え、ちょっと、なに、それマジで!?」


「うぅ、覚えてないなんて、酷いわご主人。そりゃ、記憶喪失になりかねない強力な催眠術は使ったけど・・・」


「いやいや、酷いのどっちですかねぇ!?」


「・・・・・・はいはい。二人の漫才見るのも久しぶりね~。相変わらず仲が宜しい様で。公認の愛人なんて、ここ意外で見たこと無いわよ」


俺と哭月が軽快なトークを楽しんでいると、零が冷めた眼差しを向けてきた。

つか、公認の愛人って人聞きの悪い・・・・・・・・・・・・・まぁ、事実だけど。


「ん~、やっぱりそうなんだ。桜花は理解があって助かったわ」


「そりゃそうよ、哭月さん。本当は私も加わりたいところなんだけどねー」


「近親は流石に拙いわよ。世間的に」


「・・・・・・おい、どこの世間をさして言ってるんだ?」


「え?裏表含めた普通の感性を持った世間一般よ・・・・・・・・・・・・多方面に理解力の無い」


哭月が何やら不穏な言葉を漏らした気がしたが無視しておこう。何しろ危険すぎるしな、色々と。

というか、理解されたらされたでかなり問題があるということを分かっているのだろうか。そんな日は永遠にこないだろうけども。

てか、俺も理解したくはないし、不要な敵を作るつもりもない。

俺はノーマルです、まる。


ちょ、やめて叩かないで!!投げないで!?


「何してるの、ご主人?」


「いえ、何でもありません」


少し悪ふざけが過ぎたようだ。自重『自嘲』


って、おいコラ!何で自分を嘲ってるんだよ!?

そういう部分が全くないとは言い切れないけども。だとしても!

俺はこんなふざけ方はしない!!


いったい誰が・・・・・・


『むっふふ~~~です!』


「・・・・・・・・・・・・お前か、菜々」


勝手に人の思考の中に入ってくるな。


『鏡さんの思考回路は、私も大体把握してるです♪』


威張り顔で、そこそこある胸を張りながら言う菜々。


何故菜々がここにいるかと言えば、あの旅行での別れ際、俺が一緒にこないかと言って、菜々が二つ返事で頷いたからだった。

ま、ようはただそれだけのこと。


そこに菜々のどんな想いがあったかは知らないが、それを俺が知る由もない。それをドラマ的に書き綴ることは出来るかもしれないが、俺にそんな趣味はない。

まぁ、当時の俺の心境くらいなら語ることは出来る。

単に、軽く冗談とはいわないまでも、軽い気持ちで俺に憑いてみないかと言っただけだ。そう、別れるのが寂しくて、もし可能なら一緒に暮らせたらいいなとか、そんなことを思っただけのこと。

つまりは、俺は意外と菜々という幽霊を、気に入ってしまったという、そんな陳腐な話に過ぎない。捻りも何もあったものじゃないが、事実なのだから仕方ない。


『時に鏡さん。皆さんで何の話をしてたのです?』


色素の薄いその幽霊は可愛らしく小首を傾げ、不思議そうな顔で言う。


「・・・そうだな。話してやるから、人形を着てこい。何時客が来るかわからないんだからな」


菜々はこの店でウエイトレスとして働いている。何で幽霊である菜々が普通に働けるのかといえば、菜々そっくりに作った人形に憑依して自由に動かすことが出来るからだ。文字通り、人形を着るわけだ。後は、菜々により人間らしく見えるように魔術を施してもらっている。

人形のイメージで言えば、某死神漫画のアレとか、某型月世界のアレを思い浮かべてくれれば分かり易いと思う。


『こんな街外れにある店にそんなに客が来るとは思えませんが、お話は気になるので素直に着てくるです・・・・・・・・・・・・・・・・・・・覗かないで下さいよ、です』


「うん。突っ込み所は色々あるんだが、愚妹の視線が怖いのでさっさと行っちゃって下さい」


『うふふ、は~い、ですよ~~~』


菜々が壁をすり抜けていくのを眺めながら、俺は溜息を吐いた。原因は、主に菜々の登場から睨みを利かせてくる零である。

どうにも、零は俺と菜々が仲良さげに話しているとよく突っかかってくる。何故だろうか。


それはともかく。


さて、どう切り抜けようかね。

そんなことを思いながら、何事か騒いでいる零の言葉を聞き流しながら、俺は食器の片付けをする。

これが、狭間の世界の日常だ。

騒がしいけれど、なんやかんやで楽しい。狭間の世界の、ほんの一幕。


新たな幕が開けるのは、いったい何時になるのやら。明日かそれとも一年後か。きっと、それも騒がしくなるだろう。

そう、それは、新たな来客と共に・・・

変に続いたこの作品ですが、ようやく終わりです。

言うことはあまりないです。本来は章ごとに分けて色々書きたかったのですが、他にもっと書きたいものが出来たので、こういう形で完結となりました。まあ、こんなに話が長くなるなら、それも難しかったでしょうけど。

このシリーズでいえば、IFストーリーをいずれ製作する予定です。あくまで、予定です。他にも新作の案はあるのでどちらが先になるか・・・

ともあれ、この作品もサブタイトルやタイトルをそのうち変更します。不自然なので。

という訳で、こんな作品を最後まで読んでくださってありがとうございました。


では、また何処かで。

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