-一章- ~十七~
旅行の終わり。ここまで随分かかりました。
では、どうぞ。
鏡side
「・・・・・・あの、桜花さん。そろそろ話してもらえないでしょうか」
「やだ」
「でもな、そろそろ寝ないといけないわけで・・・」
「一日くらい寝なくても平気でしょ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、その、仰るとおりで」
えー・・・いったい何が起きているのかというと、現在、深夜零時。俺の腕にベッタリと引っ付いている小柄な獣耳少女。少し頬を染めながらも、不貞腐れたように頬を膨らませている。
朝起きてから今まで、ずっとこんな調子なのである。
結局桜花は、予定よりも長く書類の作成をずっと手伝わされ、帰宅が明日に迫った今日になってようやく開放された。
そういう訳で、最初は楽しめなかった分、思いっきり俺に甘えようとか思っていたらしい。
だがそんな時に運悪く、浴衣を肌蹴させ俺にしな垂れかかっている哭月を目撃した。
その後、桜花は爆発。強制的に俺を拉致って、以来ずっとこんな調子だ。
確かに、この旅行?中、桜花と一緒にいた時間があまり無かったように思う。
嫉妬してくれたと思えば、そりゃ勿論嬉しいのだが・・・・・・・・・
「あ~ん」
「あの、桜花さん?」
「あ~ん」
「人前でそれはちょっと・・・ほら、仲居さんもまだいらっしゃ」
「さもなくば口移し」
「はい、あーん」
あの時の皆さんの白い目は一生忘れられそうにありません。仲居さんまで食い入る様に見つめてくれやがったし・・・。
や、だって桜花の目が本気だったんだよ・・・・・・・・・仕方ないじゃないか!!!
・・・・・・・・・それ意外にも色々あるわけですが、俺の精神衛生上あまりよろしくないのでこれまでとさせていただきます。
ご了承ください。
「・・・・・・このままじゃ、流石に寒いからな布団入るか?」
「うん」
そう言って、嬉々として先に布団に潜り込む桜花。
そして、同じ布団に入るように、ぽんぽんと叩いていらっしゃる。
・・・・・・・・・・・・うん、逃げ場は無いよね、この場合。
「お邪魔します・・・」
「ふふ。家でも一緒に寝よっか?」
「大変魅力的なお言葉なのですが、同居している皆様が、主に我が愚妹めが大反対するので難しいかと思われます」
「わかってますよーだ。言ってみただけ♪」
悪戯っ子のような笑みを浮かべる桜花。
やべ、かわいい。
ずっとむすっとしてたから、余計に笑顔が愛しい。
ここにきて、それは反則じゃないですかい?
そうして、俺達は寝れない夜を過ごした。
え?何があったかって?
決まってるじゃないか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・普通にお喋りしてました。夜の散歩とかも行ったけどね。規制に引っ掛かるようなことは何もありませんでした。
本当ですよ?
ともあれ、翌日。
俺達は荷物を整理し、旅館の玄関に集まっていた。
そこで、来たときと同じく、旅館の方々に御見送りをしていただいていたりする。
まあ、ここでも色々あったものだ。
いや、本当に色々あったんですよ?
温泉卓球とか、追いかけっことか、二度目の銀司の覗き(事故)とか、もう一人の桜花との混浴とか(主人格の桜花が寝ているときなので桜花は知りません)、枕投げとか・・・・・・・・・何やってたんだろうな、俺。
そんなこんなで御見送りを受け、いざ帰ろうと駐車場に向かったが、その途中に遮るように佇むものがあった。
「菜々・・・・・・」
『う、あの、ですね・・・・・・・・・』
所在なさげに浮かんでいる菜々。可哀想な位に身体が小刻みに震えている。
菜々は、あれ以来俺の前に姿を現していなかった。それに何も思わなかったわけではないが、菜々が本気で隠れると、俺達では見つけようもなかった。
『あ、あの・・・・・・その、お話が、あるんですけど・・・・・・・・・』
「ちょうど良かった。俺も、お前に話があったんだ」
『え?』
あれからずっと考えていた。どうすればいいのか。俺が、どうしたいのか。
出た答えは、身勝手と言われても仕方ないものだ。だから、無理強いをするつもりはなかった。
俺は、不安そうに俺を見つめる菜々に微笑みかけ、それを口にした。
「菜々・・・・・・」
『はい、です』
こうして、俺達の旅行は終わった。
鏡side end
はい。という訳で、ようやく終わりが見えました。次回いよいよ最終話です。最初は五話くらいで終わらせるつもりだったのに、どうしてこうなったのか・・・。
それはさておき、更新を停止していた神奈備学園記ですが、かなり内容を改訂する予定ですので更新再会は改訂後。かなーり先の話になるかもです。具体的にいうとキャラ変ですかね。
では、また次回