-一章- ~十六~
終わる終わるといいながら、もうちょっと続きます。
では、どうぞ。
鏡side
「あ~・・・・・・ま、結果オーライ・・・にはならんよな、やっぱり」
結局、あの後他に怨霊とやらが現れることはなく、菜々の話によれば、あれ以外の黒い影は知らないようで、とりあえず俺達の仕事は終わりとなったのだ。
まー、本当のこと言うと、件の原因が何か判明して無い以上解決とは言い難いのだろうが、その辺りは無視するとのこと。
それでいいのだろうか。
そりゃ、菜々とかに言わせれば、自分達が旅行客に見られたことなどないというし、原因があの怨霊であるのなら問題はない。
つってもやっぱり確証はないもんだから、また何か問題が起きた場合はアフターケア、という形でまとまりそうだ。
ま、それが無難なのだろう。
「ふー・・・・・・まあ、やっとゆっくり温泉に入れるんだし、いいか」
そう。
一応事件が解決したということで、他にお客もいないのだから、あと数日お礼もかねて無料で泊めてもらえることとなった。
九凰さんや円香などは怨霊に関して退魔協会に提出する報告書作りで部屋に篭っているが、それ以外のメンバーはゆっくり旅行気分を楽しんでいた。
ただし、桜花は怨霊の関係で今日一日は手伝いをさせられているが。
かくいう俺は、銀司と二人温泉に入っている。
「なあ、俺なんでこんな怪我してんだ?」
「さあな。崖から落ちたんじゃないか?」
銀司は傷口が沁みるのか、顔を顰めながら湯に浸かっている。
そんなに無理して入ることはないと思うのだが、せっかく来たのだから一回は入っておきたいらしい。
「崖?・・・なんで?」
「俺が知るか・・・・・・」
銀司は、本当に数日間の記憶が飛んでいるらしく首を捻っている。
俺は菜々から、銀司の覗き事件とその顛末は聞いていた。
桜花の裸身を見たというのは許せないが、その罰は十分に受けているようだし、俺が何かするということもない。
諸々自業自得だ。
俺も桜花には知られたくないことがあるし、あまり強くは言えないところがある。
「・・・・・・ちょっと露天風呂の方行ってくるわ」
「おう、変なことは考えるなよ」
「?・・・ああ」
俺の言葉の意味はよく分かっていなさそうだが、銀司は一応頷いて露天風呂へと歩いていった。
男湯と女湯は隣同士。それ故、露天風呂もまた隣同士。
露天風呂の方が柵が薄いため、色々音が聞こえてくる。
「・・・・・・誰もいなきゃいいが」
『ところがどっこい!!』
「おわっ!?」
『きゃはは、鏡さん驚いてるです!!』
俺が溜息と共に呟くと、それに応えるように色素の薄い美少女、菜々が飛び出した。
驚いて身を仰け反らせると、菜々は面白そうに笑っている。
と、いうかだな・・・・・・
「何してる・・・・・・つーかどっから顔出してんだお前は!?」
『?何所って・・・・・・な△×?!Ω/α□@*お!?きゃ¥=~!!!???』
言葉にならない悲鳴をあげる菜々。
『・・・・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ、鏡さん・・・セクハラです?』
「お前がな・・・」
俺から若干距離を取り、顔を両手で覆い指の隙間から俺を見つめて言う菜々。その瞳は潤んでおり、顔は真っ赤に茹で上がっている。
何をかくそう、菜々は、俺の股の間付近から顔を出していたのだ。
俺も肩まで浸かっていたわけではなく、温泉の腰かけ部分に座っていたため、菜々の顔は俺の腰の目の前だったわけで。
まあ、そういうことです。
「何やってんだ、お前は」
『・・・・・・鏡さんを驚かせようと思った、です』
萎縮した様子で身を縮こませている菜々を見ると、なんか、こっちが悪いことをしたような気分になるな。
普段の言動はともかく、こいつ本当に初心だな。
『あぅ、その・・・ごめんなさい、です』
「ぬ・・・・・・はぁ、別に怒ってなんかない。だからこっちこい。別に何もしない・・・っていうか出来ないから・・・・・・・・・俺だって、流石に傷つくんだぞ」
『・・・・・・・・・・・・』
すると、菜々は顔を真っ赤に染めて、俺と視線を合わせないようにしながら、おずおずと俺の隣に来た。
『・・・・・・本当に、怒ってないです?』
「怒ってない・・・つーか、どう対応すりゃいいのか分からないってのが本音だな。まぁ、お互い気にしないのが良作だろう。俺達は、あと二三日もすれば・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・お別れ・・・なのです』
俺と菜々の間に、何ともいえない沈黙が下りる。
このとき俺は、菜々に掛けるべき言葉が見つからなかった。
鏡side end
すみません。前書きでも言った通り、まだもうちょっと続きます。
重ねてすみません。次話の更新なのですが、諸事情により遅れる可能性があります。ちょっと色々あるもので。
では、また次回。