-一章- ~十二~
やっと事態が動きます。
久々に登場のあのキャラ。皆さんは覚えているでしょうか?
では、どうぞ。
鏡side
「なあ、哭月。菜々がいなくて、俺達だけじゃ昨日と変わらなくないか?今更だけど」
「まあ、あんまり変わらないかもね。違うのは、得体の知れない黒いのを探すって事だけだし」
哭月と共に適当に道を散策しながら歩き、ぼやく。
何の意味も無いとは言わない。昨日は駄目でも、今日は何かに気付くかもしれない。
とはいえ、昨日やったことを今日もまたやらされる。それも、あまり具体性のない調査だ。正直、気が滅入る。
哭月がいる手前、直接口には出さないが。
「俺達って、ここに何しに来たんだっけ?」
「旅行・・・・・・のはずよ」
「・・・・・・・・・これは、旅行・・・なのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご主人、今度二人だけで旅行に行きましょうか。茜たちに内緒で」
「いいな・・・・・・と言いたいところだが、桜花に悪いし、帰ったときが面倒だ」
主に零が。桜花も一ヶ月は不機嫌になるだろう。
「そうなのよねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・今度強い催眠をかける実験をしようかしら」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ。何も」
何か哭月が不穏なことを言った気がしたが、よく聞き取れなかった。
まあ、危ないことはしないだろうから特に気にかけることもないか。
しっかしまあ、一応周囲に気を配りながら歩いているものの、変わった気配など何も感じない。
さて、どうしたものか。これでは何の成果もあげられないだろう。
一応、この事件を解決せねばならないらしいし、最悪宿代も凄いことになる。
何が何でも解決しなければならないのだが・・・・・・
「・・・ご主人。これじゃ埒があかないし、少し手法を変えてみない?」
「・・・・・・というと?」
「浄化結界を張るの。専門外だから、あまり大きいのは無理だけど・・・・・・とりあえず、それっぽいところに片っ端から試してみましょう」
浄化結界とは、その名の如く、邪気や穢れを祓う結界の総称である。神道式が一般的らしいのだが、細かく言えば、仏教、密教、陰陽術等等、西洋の術も含めれば相当な種類がある。術理が違うだけでなく、その目的にもよって変わるのだそうだ。その一つは攻撃用、破魔の術式、滅することを目的とするものまである。
ちなみに、俺が使えるのはその攻撃用だけ。
それでは意味が無いだろうし、土地自体にもある程度傷跡が残る。あまり褒められた術ではない。
恐らく、哭月が言っているのは、本来の意味での浄化の作用をもつ結界だと思われる。
「・・・・・・そう、だな。それくらししないと意味無いかもな。でも、俺は浄化結界なんて張れないぞ?任せっきりになるけど、いいのか?」
「勿論。何かあったときは私を守ってね、ご主人♪」
哭月は、とても柔らかな笑みを浮かべて、そう言った。
「了解。何があっても守りきりますとも。使い魔さん?」
俺達は、顔を見合わせ笑いあい、結界を張る場所を探して先へ進んだ。
結果的に言うと、それでもあまり成果は上げられなかった。
昼に一度集まって経過を報告しあったのだが、どの組も同じようなものらしく、揃って溜息をつくこととなった。
午後も浄化結界を張り調査したが状況は変わらず。
何かあったとすれば、何人か菜々の同類と思われる幽霊たちと遭遇したぐらいか。彼等にも協力を頼んだが、焼け石に水だろう。彼等も菜々以上の情報は持っていなかったのだから。
「変化なし・・・ね」
浄化結界を消し、哭月が疲れたように言った。
無理も無い。辺りはもう暗くなっているし、いったいどれほどの結界を張ったことか。一つの結界を張るのに然程魔力は必要としないらしいが、魔術の行使は精神を疲労させる。それを何度も行ったのだ。
疲れて当然だ。
「今日はここまでにしよう。九凰さんたちも戻ってる頃だろうしな」
「そうね」
そう言って、集合場所に行こうとしたときだった。
「「っ!?」」
例えようも無いほどの悪寒が背筋を走った。
「何?今の・・・」
「分からない・・・・・・けど、今のは」
『大変ですぞご両人!!』
空から現れたのは、協力してくれている菜々の同類。
見た目はまんま落ち武者だった。まー、顔が骸骨な分、ある意味生身よりは怖くない。
『露天風呂の下の付近であの黒いモノが!!』
「っ案内してくれ!!」
『こっちでござる!!』
・・・・・・・・・・・・ござる・・・・・・ねぇ。本当に昔の人は言ってたんだろうか、そんなこと。
まあ、今はいい。
何か、嫌な予感がする。
俺達がそこに到着すると、すでに皆揃っているようだった。
「皆、何があったんだ!?」
「鏡さん・・・・・・ちょっと厄介なことが起きたみたいです」
九凰さんが、前を向いたまま不吉なことを言う。
「え?」
「ご、ご主人・・・・・・あれ」
哭月が震える声で指差す先にあったのは
「ぎ、銀司!?」
黒い霧のようなものに包まれる、何故か全身傷だらけの銀司の姿だった。
鏡side end
はい、という訳で、次回で事件事態は解決する・・・予定です?多分します、はい。
結構、あっさり終わるのでなんだそりゃ、って感じでしょうが、前に後書きで言ったとおり、この作品の重大イベントは入浴シーンです。あとはおまけみたいなものです。その割りに、何となく作った「菜々」が気に入ってしまったので、別作品でも出る可能性がありますが。いや、鏡と哭月と菜々。いいと思いませんか?書きやすいんですよ、彼等。勝手に話し進めて(ある意味脱線)させてくれて。
てな訳で、今度こそあと数話で終わりです。
では、また次回。




