-一章- ~十一~
今回も短め。朝の出来事です。
では、どうぞ。
鏡side
「・・・ふ、くぁ・・・・・・・む?おわっ!?」
『むふふ~。おはようございますです~』
朝一番、目を覚ましたら、色素の薄い顔を透かして見慣れない天井が見えた。
「・・・・・・おはよう。ったく、悪戯も大概に・・・・・・・・お?」
起き上がろうとすると、両腕に重みがあった。
見ると、桜花と零が腕を抱いたまま寝ているようだった。
どうやら、いつも通りの時間に目を覚ましてしまったらしく、二人はまだ夢の中。
無理に起こすのも可哀想だし、はてさて、どうしたものか。
『両手に花ですね~。しかし、お二人ともよく腕を放しませんでしたね~。執念です?』
「・・・・・・かもな」
感心したような、呆れたような声を漏らす菜々に適当に相槌をうつ。
「そういえば、哭月はどこに行ったんだ?」
確か、腕を枕にして寝ていたはずだが、姿が見えない。
『さあ。私は気付かなかったです』
本当か嘘か判断しづらいことを言う菜々。嘘をついているようには見えないが、この幽霊の性格から考えると信用できない。
そうこうしていると、スッと、入り口の扉が開いた。
現れたのは、浴衣を着た人間の姿の哭月だった。
眠そうに目を擦りながら、とぼとぼと歩いてくる。
これは、案外用を足しに行っただけかもしれない。
そう思い安堵していると、次の瞬間、哭月は思いもよらない行動を取った。
「ん、みゅ」
哭月はかなり寝ぼけていらっしゃるらしく、人間のままの姿で俺の布団に潜り込もうとした。
ところが、そうすると俺の腕にしがみ付いてるお嬢さん方が邪魔となる。
どうするのかと思いきや、哭月はあろうことか零の腕を力ずくで強引に振りほどき、布団に入ってきた。
当然、そんなことをされた人間が起きないはずも無く
「ちょ、哭月アンタ何を」
無理矢理起こされたことや、哭月がやろうとしていることを見て、抗議の声をあげ哭月の行動を阻止せんとする零。
だが、そうは問屋が卸さなかった。
「むぅ・・・ん!」
「な・・・ふぇ?・・・・・・ぐぅ」
哭月は向かってくる零に対し、鬱陶しそうな視線を向けて零の額に手を翳した。
すると掌が、ぼうっ、と紫色の光を放ったかと思うと、零が寝息を立てて横たわっていた。
恐るべし、哭月。寝ぼけながら零を退けるとは。
もしかすると、俺の家では毎朝今のような攻防が繰り広げられているのだろうか。
哭月、やけに手慣れていたし。
「んふふ~・・・・・・ごしゅじん・・・むにゃ」
哭月は上機嫌に俺の布団に潜り込み、自然に抱きついてきた。
ああ、何でだろう。すごくドキドキしているのに、こうも安心感があるのは。
・・・・・・・・・まあ、こうやって目を覚ますことも珍しくないから、単に慣れているだけなのかもしれないが。
『哭月さん、デレデレです~。鏡さん鏡さん、ご感想は?です?』
「・・・・・・・・・俺は何時になったら起きれるんだ?」
結局、その後俺が起きれたのは、それから二時間後のことだった。
「なんか、良からぬモノを見たような気が・・・・・・」
「気のせいだ。気のせい」
朝食の席で、零が何かを呟いていた。
とりあえず、アレは見なかったことにしよう。俺の知らぬ間に繰り返される日常だったにせよ、忘れれば問題ない。といいな。
食堂で朝食をさらっと食べた後、九凰さんから話があった。
「今日は、菜々さんの話を参考にして、全員で旅館を調べます。何か分かったら私に知らせてください」
という訳で、昨日に引き続き調べまわることになったのだが、今回は全員。
幾つかのグループに分かれることになった。
俺と哭月、桜花と円香、真雪と零、九凰さんと菜々、という組み合わせだ。
若干名、不満を抱いている者もいるようだが、こればかりは仕方ない。
さて、今日は何か進展があるだろうか?
何か、どんどん問題を先送りにしてる感じですが、もうちょっとで終わりです。
とりあえず、次回何か起きます・・・・・・多分。
いい加減書くこともなくなってきたので、あとがきは短めになります。
今年中に終わらせたいなと思います。
では、また次回。