-一章- ~九~
今回も鏡視点。
物語はあまり進まず、茜へ報告する話です。
では、どうぞ。
鏡side
「鏡、哭月と二人で何所行ってたの?」
九凰さんに報告しに、部屋に戻ったら桜花が頬を膨らませていた。
瞳は潤み、眉根がつり上がっている。
え?いきなりピンチ?
「いえ、その、ですね?」
「何?疚しいことでもあるの?」
桜花は、ずんずんと歩み寄ってきて、睨むように俺を見上げてきた。
やばい。こんな桜花も可愛いな、とか思う俺超やばい。
や、可愛いのは確かなんだけれども、そんなことを考えている場合ではない。
「おーうーか!!」
「きゃっ!な、哭月!?」
哭月は、気配を消して桜花の背後に忍び寄り、思い切り抱きついた。
「なになに~?拗ねてるの。ヤキモチ?」
「ちょ、ちがっ!?そういうんじゃ、なくて・・・・・・」
「ん~?なくて~?」
頬を染め俯く桜花に対し、哭月は桜花の耳元で意地の悪い笑みを浮かべて囁いた。
ていうか、楽しそうだな哭月。
「何をしているのですか、あなたたちは・・・」
入り口で通せん坊をくらっていると、九凰さんが呆れ顔をしながらやってきた。
これぞ飛んで火にいる・・・じゃない。渡りに船という奴・・・とも違うか?
ともあれ、これで話が進む。
「はい。三人とも、先に報告を聞きますから漫才はその後でして下さいね。ほら、座ってください」
「むぅ・・・わかった」
「はぁ・・・」
「了解よ、茜」
菜々以外のことを九凰さんに報告し、九凰さんの言葉を待つ。
あまり大した情報は集まっていないのだから、九凰さんと円香の表情も厳しい。
「・・・・・・そうですか。となると、やはり私たちが直接調べるしかありませんか。まあ、ある程度情報が限定されているのが唯一の救い、ですね・・・」
「ああ、あともう一つ話があるんですけど・・・・・・・・・夕食の後にしましょう。もう遅いですし、色々あるんで・・・」
菜々には呼んだら出てきてもらうように頼んである。菜々の持つ情報は有益なんだろうが、それ故に話も長くなる。それに、みんなが菜々の存在に気付かなかったなら、菜々の話にも信憑性が出るだろう。
そこまでしなくてもいいとは思うが、色々あって疲れたので、早く食事がしたいというのが本音だ。
別に、そこまで急ぐ話でもないのだし。丁度、夕食の時間なのだし。
「・・・そうですね。では、食事にしましょうか」
それから程なくして料理が運ばれてきたのだが、とりあえず、今まで見たことのないくらいに豪勢な食事だった、とだけ言っておく。
なんというか、うん、凄かった。
山だってのに、蟹やら海老やらウニといった海の幸、松茸を始めとする山の幸等々、普段お目にかかれないほど豪華だった。
まあ、食事自体は楽しかった。どうにも桜花と零の視線が痛かったが、それ以外は概ね良好だった。
ようするに、それ以外特筆することが何も無かったということだ。
つーわけで、食事終了。
「それで、鏡さん。話というのは?」
食器がさげられ、一息ついた後、九凰さんが切り出した。
「はい。実は、今回の幽霊騒ぎについて重要人物との接触に成功しました。それで、ですね。えーと・・・・・・・・・・・・驚かないでくださいね」
「は?・・・はぁ」
九凰さんは疑問顔で、戸惑いながらも頷いた。
ま、驚くなというほうが無理だろうが、果てしてどんな反応をしてくれるのだろうか。少し楽しみでもある。
というか、菜々が打ち合わせどおり出てきてくれるかどうかの方が心配なのだが。信じるしかないか。
「菜々。出てきてくれ」
『はいは~い!呼ばれて飛び出てなんとやら~~~なのです!!』
「・・・・・・は?」
何処かで聞いたことのあるようなフレーズと共に、スウッと染み出るように菜々が俺の隣に現れた。
九凰さんはポカンと口を開けて微動だにせず、他の哭月以外の者は突如現れた色素の薄い女子に釘付けになり一言も発しない。
むぅ、嵐の前の静けさ、というやつか。となると、そろそろ暴風がくるか?
『あれ?皆さんどうしたんですか~?見えてないのですか?何かリアクションしてくれないと寂しいのです~』
場違いな悲痛な声をあげる菜々。
菜々、多分それは大丈夫だ。数瞬後には、何か来るから。
「「「「「って、なんじゃそりゃぁぁぁぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!??」」」」」
『っ!?み、耳がキーンってするです~!?』
俺と哭月以外の五人の叫びの前に、耳を押さえ空中を上へ下へと踊りまくる菜々。俺と哭月は咄嗟に耳を塞いでダメージは軽減できた。
「・・・やれやれってか?」
さて、これから一悶着あるんだろうけど、これで何か分かるだろうか。
俺は、今更ながらに銀司がいないなーと思いつつ、一先ず事態の収拾に取り掛かった。
書くことありません。以上。
てのは冗談として、今回は少し短めでした。
次も同じ位かも。何だかんだで予定より話数が増えていきます。多分、ダラダラと。
鏡視点のみの話も、もっと続きます。
というわけで、もう暫しお付き合いを。
では、また次回。