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(数日後・街の図書館)
「ふう……今日は大人しく知識を深めるぜ」
コウタは図書館の奥の席で、分厚い書物を広げていた。「モテる男の品格」という題名だった。
(諦めない男として、内面から磨かないとな……)
その時、だ。
ガタン!
背後で大きな音がする。振り返ると、隣の書架がゆっくりと倒れかかっている。その下には、図書館司書の女性が本を抱えたまま、目を見開いて固まっている。
「わっ!?」
コウタの体が反射的に動く。
(セシリアはいない……でも、助けなきゃ!)
彼は飛び出す。倒れかかる書架に体当たりする──が、足が机の脚に引っかかる。
「うわあっ!?」
コウタは転びながらも、なんとか書架の倒れる方向を変える。書架は司書の横にドサッと倒れ、本が散乱する。
「あ、ありがとうございます……!」
「い、いえ……」
コウタが起き上がろうとすると、なぜか司書の女性のスカートの裾が、自分のベルトのバックルに引っかかっていることに気づく。
「えっと……これ……」
「きゃっ!?」
司書が慌てて引っ張るが、ほどけない。
「ちょ、ちょっと待って、動かないで……!」
「すみません、今……」
コウタが必死にバックルを外そうと手を伸ばすが、バランスを崩し、今度は司書の方に倒れこむ。
ドスッ
「あっ!?」
「ご、ごめん!」
コウタは司書の上に覆いかぶさる形に。しかも、片手がなぜか司書の脇の下に、もう片方の手が腰のあたりに。
「ちょ、ちょっと……そこ……!」
「わ、わざとじゃないんだ!」
その瞬間、図書館の入り口からセシリアが現れる。彼女はコウタから「図書館で勉強する」と聞いて、様子を見に来たのだ。
「…………」
セシリアは無表情で、その光景を見つめる。
(……ラッキースケベ……?)
***
(その30分後・図書館外)
「ちっっ! あれは事故だ! オレ、悪くない!」
コウタはセシリアに必死に説明している。
「書架が倒れそうで、助けようとしたら、足が引っかかって……スカートがバックルに……それで転んで……」
「…………」
セシリアは無言で歩き続ける。
「ほんとに! 信じてくれよ、セシリア!」
「……信じていますよ」
「え? ほんとに?」
「ええ。あなたなら、そんなことくらい、普通に起こしますから」
「…………」
(それ、褒めてるのか……?)
「でも」セシリアが足を止める。「一つ、疑問があります」
「な、なに?」
「あなた、『諦めないカッコいい男』になったはずですよね?」
「あ、ああ……」
「だったら、なぜまた『ラッキースケベ』に頼るのですか?」
「え!? いや、頼ってないって! あれは偶然……」
「偶然が、あなたにだけ頻繁に起こる」
セシリアがくるりと振り返り、コウタを見つめる。
「これも……あなたのチートの一部なんじゃないですか?」
「…………!!」
コウタは凍りつく。
(ま、まさか……ラッキースケベもチート効果……?)
神様の声が思い出される。
『お前の魂に染み付いた願いを形にした』
「モテたい」という願いが、ラッキースケベという形で……?
「……そ、そんなバカな……」
「わかりませんね」
セシリアは再び歩き出す。
「でも、一つ言えることがあります」
「な、なに……?」
「その『ラッキースケベ』……」
セシリアの声が、少し低くなる。
「私のいないところでしか、起こらないようですね」
「…………!!」
コウタの背筋が凍る。
(な……なんで……?)
「図書館でも、私は入ってきた瞬間に終わっていました」
「峡谷の任務でも、私がいた時は起きませんでした」
「街中での『事故』も、私が離れている時に限って……」
セシリアが振り返らずに言う。
「まるで……私に隠れるように、あなたの『モテモテチート』が発動しているみたいです」
「…………」
コウタは完全に言葉を失った。
「……セシリア、それ……」
「ええ。とても、面白い現象です」
セシリアがかすかに笑う。
「あなたが『カッコよくなりたい』と願えば願うほど」
「私から隠れて、変な形で『モテよう』とする」
「……皮肉なものですよね」
二人はしばらく無言で歩く。
「……セシリア」
「はい?」
「オレ……もう、なにがなんだかわかんねえ」
「私もです」
「でも……一つだけ、わかることがある」
コウタは足を止め、セシリアの背中を見つめる。
「お前がそばにいる時は……オレ、変なこと起こらないんだよな」
「ええ。そうです」
「それって……つまり……」
セシリアがゆっくりと振り返る。
「つまり?」
「…………」
コウタは言葉を詰まらせる。
(……オレ、本当にモテたいのか?)
(それとも……)
彼は頭を抱える。
「……もう、いいや! わかんねえ!」
「そうですね。無理に考えなくてもいいと思います」
セシリアがコウタの肩を軽く叩く。
「さあ、帰りましょう。今日の『ラッキースケベ』も、私が見ていないところで起きたのなら……」
「……報告しなくていいってことか?」
「ええ。ただし……」
セシリアの目が細くなる。
「次からは、私がずっとついていきますから」
「ええっ!?」
「あなたの『諦めないカッコよさ』を、間近で見させてもらいます」
「…………」
(まずい……これじゃあ、ラッキースケベも起こせねえ……)
(って、なんでオレ、ラッキースケベ起こしたいんだ?)
コウタは自分の矛盾に気づき、さらに混乱する。
「……よし! わかった!」
「何がですか?」
「オレはもう……自然体でいく!」
「それが一番です」
こうして、コウタの「ラッキースケベ発生」は、セシリアの常時監視体制確立という、思いもよらない結果をもたらしたのであった。
(監視強化・自然体宣言編)
(数日後・街のカフェ)
「セシリアがずっとついてくるぜ……まあ、いんじゃね?」
コウタはカフェのテラス席で、セシリアの監視下にある現状を逆手に取る画策を練っていた。セシリアは向かいの席で無表情に紅茶を啜っている。
「幼馴染みにも容赦なさすぎだぜぇ……なら、こっちも容赦なくいってやる!」
コウタはいたずらっぽく笑い、セシリアに言う。
「おいセシリア、ちょっと用事あるからな」
「……何ですか」
「んー……街の向こうの文房具屋まで、新しいペン買ってくる!」
「私も同行します」
「いや、一人で行く! 男の一人行動もたまには必要だ!」
コウタは勢いよく立ち上がる。セシリアは一瞬眉をひそめるが、うなずく。
「……30分で戻ってきてください」
「おう! 任せとけ!」
***
(文房具屋にて)
「よし……作戦開始だ!」
コウタは高級な薔薇色の便箋と封筒を買う。そして、店の隅でこっそりラブレターを書き始める。
『僕はずっと前から、あなたのことが好きでした。
いつもクールで美しいあなたの姿に、胸が高鳴ります。
もしよかったら、今度二人で……』
(ふふん……これで準備OKだ)
作戦名:偽装ラブレター作戦
1. セシリア以外の女性(例:エリカ)宛てのラブレターを書くふりをする
2. わざとセシリアに見つかるようにする
3. セシリアが嫉妬する → コウタの「モテる男」アピール成功!
「よし、エリカ宛てにしとくか……いや、ミーシャの方が効果的か?」
コウタは悩むが、とりあえず「親愛なるあなたへ」とだけ書き、署名はしないことにした。
***
(カフェへの帰り道)
コウタは封筒を手に、わざとらしくソワソワしながら歩く。振り返ると、確かにセシリアが距離を置いてついてきている。
(よし……これでバッチリだ)
彼は封筒を落とすふりをする。風に乗って、封筒がふわりと舞い、セシリアの足元へ。
「あっ! 俺の……!」
コウタは慌てたふりをして走り寄る。セシリアは封筒を拾い上げ、ちらりと見る。
「……これは?」
「あ、あれは……その……」
「ラブレターですか」
「え!? な、なんでわかる!?」
セシリアは封筒を透かしてみる。
「薔薇色の便箋。そして……『親愛なるあなたへ』」
「ちっ……バレたか……」
コウタは照れくさそうに頭をかく。
「実はな、セシリア……オレ、最近気になる子がいてさ……」
「……そうですか」
「で、で……その子に、思いを伝えようと思って……」
セシリアは無表情で封筒をコウタに返す。
「それで、私に見せびらかすのですか?」
「え!? い、いや、見せびらかすって……」
「この封筒、わざと落としたのでしょう?」
「…………」
(ば、バレてる!?)
「足元でわざと手を滑らせ、風向きを計算して私の方向に飛ばす」
「私が拾うのを待って、慌てたふりをして駆け寄る」
「そして、『気になる子がいる』と告白する」
セシリアの分析が冷徹に続く。
「……典型的な『嫉妬を誘う作戦』ですね」
「…………」
コウタは完全に白旗だ。
「……なんで、全部わかるんだよ……」
「十年以上、あなたを見てきましたから」
セシリアが一歩近づく。
「コウタ」
「ん、ん?」
「そのラブレター……本当は、私宛てなんじゃないですか?」
「ええっ!? 違、違うよ! 他の子に……」
「では、中身を見せてください」
「え!? い、いや、それは……プライバシーの侵害……」
「見せられないということは……」
セシリアの目が、かすかに輝く。
「やはり、私宛てですね?」
「…………」
コウタは封筒をぎゅっと握りしめる。中身はもちろん、適当な文面だ。でも、なぜか見せられない。
(なんでだ……別にセシリア宛てじゃないんだから……)
「……見せるよ!」
コウタは意を決して封筒を開け、便箋を取り出す。
「ほら! 『親愛なるあなたへ』って書いてあって……」
「ええ。そして?」
「…………」
コウタは言葉に詰まる。その下には、何も書いていない。名前も、具体的な内容も。
「……まだ、完成してないんだ」
「そうですか。では、完成したら見せてください」
「ええっ!?」
「『他の子』宛てのラブレターなら、私がチェックしても問題ないでしょう?」
セシリアはいたずらっぽく笑う。
「だって、あなたの『モテモテチート』が正しく発動するか、確認しなければ」
「そ、それは……」
「それに」
セシリアがコウタの腕をそっとつかむ。
「本当に他の子宛てなら……私が、代わりに渡してあげますから」
「なっ!?」
「『コウタからのラブレターです』って、直接手渡しで」
「待て待て! それやめてくれ!」
「なぜですか? お手伝いするんですよ」
「そ、そんなことされたら……オレ、街で生きていけなくなる!」
コウタは必死に封筒を隠す。
「……もういい! このラブレター、破り捨てる!」
「もったいないですよ。せっかく買った便箋なのに」
「関係ねえ! オレ、もうラブレターなんて書かねえ!」
コウタは封筒をビリビリに破り、近くのゴミ箱に放り込む。
「……満足か?」
「ええ。十分です」
セシリアは満足そうにうなずく。
「では、カフェに戻りましょう。あなたの紅茶、冷めていますよ」
「……ああ」
コウタはがっくりと肩を落とし、セシリアの後をついていく。
(くっ……完全にやられた……)
(しかも、ラブレター破り捨てちゃった……あの便箋、高いんだぞ……)
歩きながら、セシリアが小さく呟く。
「……バカです」
「ん? なに?」
「いえ、なんでもありません」
彼女はコウタより一歩前を歩き、誰にも見えないようにほのかな笑みを浮かべた。
(……私宛てのラブレターを、他の子宛てのふりして見せびらかすなんて)
(……やっぱり、あなたは最高にバカですね)
(ラブレター作戦・完全失敗編)
(次の日・朝)
「……ん?」
コウタは朝食のパンをかじりながら、突然顔を上げた。
「ずっとついてくるって……普通にデートしたらいいんじゃね?」
向かいの席で静かに紅茶を飲むセシリアが、まばたき一つせずコウタを見つめる。
「……デート?」
「ああ!監視されてるのを逆手に取って、イチャイチャデートだぜ!」
コウタはパンを放り投げ(セシリアが素早く受け止める)、勢いよく立ち上がる。
「そうだよな!オレ、ずっと間違ってた!」
「どういうことですか」
「セシリアがついてくるのを『監視』って思ってたけど……違うだろ!」
コウタはセシリアの前に立ち、いたずらっぽくウインクする。
「これってさ……二人きりの時間が増えてるってことじゃん!」
「…………」
「だったら、いっそのこと楽しんじゃえばいい!」
***
(午前中・街の噴水前)
「よし、まずは定番の噴水前で記念写真だ!」
コウタは通りすがりの旅人に声をかける。
「おいお兄さん!俺たち、記念写真撮ってくれ!」
「あ、はい……?」
セシリアは無表情で立っている。コウタは彼女の肩をぐいっと引き寄せる。
「セシリア、もっと近づけよ!ほら、笑って!」
「……私はこれで充分です」
「ダメダメ!デートなんだからな!」
コウタは無理やりセシリアの頬をつねり、無理矢理笑顔を作らせる。
「痛いです」
「我慢しろ!ほら、お兄さん、撮って!」
パシャッ
写真は、無理やり笑顔を作らされたセシリアと、それを楽しむコウタという、微妙な一枚になった。
***
(昼・街の人気レストラン)
「次はランチだ!オレ、今日はぜいたくするぜ!」
コウタは一番高いコースを二人分注文する。
「セシリア、なにがいい?」
「……あなたが決めたものと同じもので結構です」
「よし、じゃあ俺たち、おそろいのコースだな!」
食事が運ばれてくると、コウタはフォークで自分のステーキを切り、セシリアの口元に差し出す。
「はい、あーん!」
「…………」
「あーんってしろよ!これがイチャイチャデートってやつだ!」
「……自分で食べます」
「ちっ、つまんねえな……じゃあ、オレのを食べるから、お前のはくれ!」
「何ですかそれ」
「あーんしろって言ったら、あーんだ!」
結局、セシリアは仕方なく一口、コウタに自分のステーキを与える。コウタは大げさに咀嚼する。
「うまい!セシリアがくれた肉は一味違うな!」
「……ただの同じ肉です」
「心がこもってるからだ!」
周囲の客たちが冷ややかな目で見ている。
***
(午後・街の公園)
「デートと言えば……公園のベンチだな!」
コウタはセシリアをベンチに座らせ、自分も隣にぎゅっとくっついて座る。
「も、近いです」
「いいんだよ!これがデートってやつだ!」
コウタはセシリアの肩にもたれかかる。
「なあセシリア、空きれいだな」
「……ええ」
「お前の髪、いい匂いするな」
「……洗っただけです」
「このまま、ずっとこうしてたいな」
セシリアは少し硬直する。
「……デートのフリをして、何を企んでいるのですか」
「ん?別に企んでなんかないぜ?」
「では、なぜ突然……」
「だってさ」
コウタは空を見上げる。
「お前がずっとついてくるなら……せっかくだから、楽しんだ方がよくねえか?」
「…………」
「監視されてると思ってたらストレスたまるだけだろ?」
「……そうかもしれません」
セシリアの肩の力が、ほんの少し抜ける。
「それに……」コウタが続ける。「お前とデートするの……悪くねえな」
「…………」
長い沈黙が流れる。公園の鳥の声だけが聞こえる。
「……コウタ」
「ん?」
「あなた、それ」
セシリアはゆっくりと顔を上げ、コウタを見つめる。
「今までで一番、狡猾な作戦かもしれません」
「え?なんで?」
「だって」
セシリアがかすかに笑う。
「こんなことされたら……私、本当の監視ができなくなりますから」
「え?どういう……」
「『デートを楽しむコウタ』を、警戒しながら見続けるなんて……」
「…………」
「無理です」
コウタは目を見開く。
(な……なにそれ……?)
「……そ、そっか……じゃあ……」
「ええ。ですから……」
セシリアはそっと、コウタにもたれかかっている自分の頭を、彼の肩に預ける。
「……このまま、少しだけ……こうしていさせてください」
「お、おう……」
コウタは動揺する。彼の肩に、セシリアの銀髪が触れている。軽くて、柔らかくて……
(お、おい……これ、逆にオレがやられるじゃねえか……)
「……コウタ」
「な、なんだ?」
「今日のデート……」
「あ、ああ?」
「……楽しいです」
「…………!!」
コウタの心臓が、ドキンと跳ねる。
(ちっ……こ、この……セシリア……!)
彼は気づいていない。
この「監視を逆手に取ったデート」が、実はセシリアの「監視(≒独占)願望」を正当化する結果になっていることを。
でも、それでいい。
少なくとも今、二人は同じベンチに座り、同じ空を見ている。
「……なあ、セシリア」
「はい?」
「今度……またデートしようぜ」
「……監視のためですか?」
「ああ。監視のためだ」
セシリアは目を閉じる。
「……はい。喜んで」
公園のベンチで、少しぎこちない「イチャイチャデート」は、静かに続いていた。
(監視逆手デート・完全成功編)
今回のプロンプト
ふう
そんなカッコイイコウタにはラッキースケベ発生だぜえ
セシリアがずっとついてくるぜ
まあ、いんじゃね?
俺は幼馴染みでも容赦なさすぎだぜぇ
いいこと思いついたぜラブレターを他の人に渡すふりして、セシリア宛にして引っかけるぜ
ん?
ずっとついてくるって
普通にデートしたらいいんじゃね?
監視されてるのを逆手にとってイチャイチャデートだぜ!




