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(訓練場・ある日の午後)


「……てか、ふと思ったんだけど」


コウタは木刀を下ろし、汗をぬぐいながら突然口を開いた。


「オレ……ほぼチート使ってなくね?」


セシリアが水筒を渡す手を止める。


「……どういうことですか」

「いや、だってさ……」


コウタは指を折りながら数え始める。


「①〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉:セシリア専用無敵チート」

「でも最近、戦闘はほぼオレの実力だ」

「特訓したからな」


「②スマホチート:アナログ回帰でほぼ不使用」

「体調表示もオフ、学習モードもオフ」


「③神様からのその他特典:……そもそも何ももらってない」


「つまり……」コウタは目を見開く。「オレ、チートほぼ持ってないのと同じじゃね!?」


***


(その夜・神様への緊急要請)


(純白の空間・強制召喚)


「神様ああああ!!」


コウタが純白の空間に放り込まれ、叫ぶ。


「なんでだよ!オレ、チートほとんど使ってないじゃん!」

「これって……チートものラノベとして成立してるのか!?」


神様(相変わらず)が胡坐をかいて、退屈そうにあくびをする。


「またお前か……今度は何だ?」

「チート!オレのチート、ほとんど機能してません!」

「ああ、それか」


神様がからからと笑う。


「お前、ようやく気づいたな」

「え?」

「お前のチート……もうとっくに進化してるんだよ」


「……進化?」

「ああ。初期設定:〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉」

「効果:セシリアの前で無敵になれる」


「でもな……」神様がいたずらっぽく笑う。「お前、もう気づいてるだろ?」

「最近、セシリアがいなくても……結構強いってこと」


「……た、確かに」

「峡谷のサンダーバード、一人で倒したろ?」

「魔獣の森の侵攻も、ほぼ一人で阻止した」

「あれ、全部……お前の実力だ」


「……じゃあ、チートは?」

「チートはな……」


神様が虚空に画面を映す。


〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉 Ver.3.0

『セシリアに愛されることで、本来の潜在能力が解放される』


「お前のチートの真の姿だ」

「セシリアがお前を愛すれば愛するほど、お前の眠ってた才能が目覚める」

「無敵になるんじゃない。もともと持ってた力が、戻ってくるだけ」


「…………」

「お前はな、現世でもかなりの潜在能力を持ってた」

「でも、ナンパばかりしてて、磨かなかった」

「で、死んで、転生して……セシリアに出会った」


神様がコウタを見つめる。


「セシリアがお前を信じるから、お前は頑張れる」

「セシリアがお前を愛するから、お前は強くなれる」

「それが……お前の『チート』の正体だ」


***


(現実に戻る)


目が覚める。自分の部屋。


コウタは布団の中で、ゆっくりと起き上がる。


「……そう、か」


彼は拳を握る。力がみなぎる。


「チートなんて……最初からいらなかったのか」

「オレが強くなれたのは……全部……」


ドンドン。


「コウタ、起きていますか?」

「ああ、セシリアか」


ドアが開く。セシリアが入ってくる。


「何か悩んでいますか?」

「いや……ちょっと、気づいたことがあって」


コウタはセシリアの目を見つめる。


「オレがここまで強くなれたのは……全部、お前のおかげだな」

「……それは違います。あなたが努力したからです」

「でも、努力するきっかけをくれたのは、お前だ」


「…………」

「チートなんて……もう、どうでもいい」

「だって……」


コウタは笑う。


「お前がいてくれることが、最大のチートだ」


セシリアの頬が、ほのかに赤らむ。


「……バカですね」

「ああ!でもな……」


コウタは立ち上がり、窓を開ける。


朝日が差し込む。


「今日からは……チートなしでいこう」

「アナログで、自分の力だけで」

「お前と一緒に、強くなっていく」


「……はい」

「それで……いいか?」

「もちろんです」


スマホは机の上。もう、いらない。

〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉も、もう発動しないかもしれない。


でも、それでいい。


だって……


本当の『チート』は──

ずっと前から、彼のそばにいたのだから。


(チート不要・真の力編)


(訓練場・数日後)


「……ちっ。」


コウタは木刀を地面に突き刺し、深いため息をついた。


「アイデンティティの消失を感じたぜ……」


セシリアが水筒を差し出す手を止める。


「……どういうことですか」

「だってよ、よく考えてみろ」


コウタは熱く語り始める。


「オレ、最初はな……『モテモテチート』が欲しかった!」

「異世界転生して、チートで女の子にモテまくりたいって!」

「それが……この物語の前提だったぜ!」


「…………」

「でも今?チートほぼ不使用!アナログ回帰!真の力!」

「これって……」


コウタは目を見開く。


「よくあるなろう系のテーマを、全否定してねえか!?」


***


(街の酒場・その夜)


「聞けよ、みんな!」


コウタは酒を片手に、冒険者仲間に訴える。


「普通のなろう系ならさ……」

「転生 → チートGET → モテモテ → ハーレム → 人生逆転!」

「これが定番だろ!?」


「あ、ああ……そうだな」

「コウタ、また変なこと言い出した」


「でもオレはどうだ!?」

コウタはグラスをバン!と置く。


「転生 → チートGET(けどセシリア専用)→ モテ失敗連発 → チートほぼ不使用 → アナログ回帰」

「これ……逆張りすぎじゃねえか!?」


エルフの弓使いが首をかしげる。

「……それが悪いことか?」

「悪くはねえけど……アイデンティティが!」


ドワーフの戦士が大笑いする。

「ははは!お前らしいじゃねえか!王道なんて糞食らえだ!」

「そうじゃねえ!オレは……オレは……」


人間の魔法使いが冷静に分析する。

「つまり……あなたは『チートもの主人公』としての自覚を持っていたが、実際はそうならなかった。そのギャップに悩んでいる」

「そ、それだ!」


***


(帰り道)


「……わかんねえな、セシリア」


コウタは星空を見上げながら歩く。


「オレ……なんだったんだろうな」

「『モテたい』って願ってたのに……」

「結局、セシリア一人だ」

「チート欲しかったのに……結局、自分の力で強くなった」


「……後悔ですか」

「違う。後悔じゃねえ……」


コウタは足を止める。


「……喪失感だ」

「…………」


「オレがオレじゃなくなる……そんな気がする」

「最初に願ったこと……目指してたもの……全部、変わっちまった」


長い沈黙が流れる。


セシリアがそっとコウタの手を取る。


「……変わったのは、悪いことですか」

「え?」

「あなたは……『モテたい』と願いました」

「でも、本当に欲しかったのは……」


セシリアの目が、星のように輝く。


「私に、愛されることではなかったのですか?」


「…………」

「チートが欲しかった……」

「でも、本当に欲しかったのは……自分自身の価値を認めてほしかったのでは?」


コウタは息を呑む。


「最初の願いと、今のあなた……矛盾しているようで、実は……」


セシリアがかすかに笑う。


「繋がっているんですよ」

「…………」

「『モテたい』も『強くなりたい』も……全部……」


「『私に認められたい』の、別の形だったのでは?」


***


(その夜・コウタの部屋)


コウタは一人、窓辺に立つ。


(……そう、か)


月明かりが部屋を照らす。


(オレが願ってたこと……全部……)


(……セシリアに、認められるため……?)


彼は拳を握る。


(なら……アイデンティティは失ってねえ)

(むしろ……)


(ずっと前から、同じものを見つめてた……?)


***


(翌朝・訓練場)


「セシリア!」

「はい」


コウタは木刀を構え、宣言する。


「オレ……わかったぜ!」

「何がですか」

「オレのアイデンティティは……変わってねえってことだ!」


「……どういう?」

「最初から最後まで……オレが欲しかったのは……」


コウタはセシリアを真っ直ぐ見つめる。


「お前に、カッコいいとこ見せて、認められることだ!」


「……それは」

「モテモテチートも、ハーレムも、全部……その手段に過ぎなかった」

「本当の目的は……いつも一つだった」


セシリアの目が、かすかに潤む。


「……バカですね」

「ああ!このバカで、ずっといるぜ!」


コウタは木刀を振り上げる。


「でもな……この物語がなろう系の定番を否定してようが……」

「逆張りしてようが……」

「オレらしく生きるだけだ!」


「……はい」

「これからも……お前がいてくれる限り……」

「オレはオレでいられる」


風が吹き、木々が揺れる。


王道を否定しようが。

チートを捨てようが。

モテモテから遠ざかろうが。


それでいい。


なぜなら──


この物語は、

『なろう系の定番』なんかじゃない。


ただの、

『コウタとセシリアの、等身大の物語』

なんだから。


(アイデンティティ再発見・等身大編)


(訓練場・数日後)


「……真の力って言われるとさ」


コウタは木刀をぶんぶん振りながら、突然夢見るような目をした。


「やっぱり……覚醒モードに憧れるぜ!」


セシリアが水筒を差し出す手を止める。


「……覚醒モード?」

「ああ!あのね、セシリア!」


コウタは熱く語り始める。


「目がギラギラ光って、髪が逆立って、周りにオーラがまとわるやつ!」

「『これが……オレの真の力だあああ!』って叫んで、急に強くなる!」

「これぞ、チートものの醍醐味だろ!?」


セシリアは一瞬考え込む。


「……確かに、見た目は派手ですね」

「だろ!?オレも一度くらい、ああなりてえ!」

「でも、あなたのチートは……」

「もう進化したって言うけど!まだ何か隠れてるかもだぜ!」


コウタは拳を握りしめ、目を輝かせる。


「もしかしたら……オレ、限界突破できるかも!」

「隠された潜在能力が、危機に瀕して覚醒するみたいな!」

「ほら、あの時も……」


***


(コウタの妄想・その1)


想像:死闘の末、瀕死のコウタ

セシリア:「コウタ……だめ……!」

コウタ:「(血を吐きながら)ふふ……これが……限界か……」

(体内で何かが砕ける音)

コウタ:「……ちがうな。これが……オレの……始まりだあああ!」

(金髪に変身、オーラ爆発)


現実:ただの木刀の素振り


***


(コウタの妄想・その2)


想像:セシリアが人質に

悪役:「ふはは!この女、殺してやる!」

コウタ:「……やめろ」

悪役:「なに?小さくな」

コウタ:「……やめろって言ってるだろ!!」

(目が赤く光り、周囲の空間が歪む)

悪役:「な、なんだこいつ……!?」

コウタ:「覚悟しろ。これが……オレの覚醒モードだ」


現実:セシリアが無表情で水筒を洗っている


***


(現実に戻る)


「……ちっ。なんか、盛り上がんねえな」


コウタはがっくり肩を落とす。


「現実は……ただの特訓ばっかり」

「覚醒もクソもない」


「……あなた」

「ん?」

「それで、満足できないのですか?」


セシリアが真剣な顔で尋ねる。


「派手な変身も、オーラもない」

「ただ、少しずつ、確実に強くなる」

「それでは……ダメなのですか?」


「……いや、ダメじゃねえけど」

「では?」


コウタは深くため息をつく。


「……憧れちゃうんだよな」

「漫画みたいに、かっこよく変身して……」

「一瞬で敵をなぎ倒して……」


「……そうですか」


セシリアは少し間を置き、そっと言う。


「では、私が見てあげましょう」

「え?」

「あなたの『覚醒モード』を」


「……どうやって?」

「こうです」


セシリアがコウタの前に立ち、両手を上げる。


パン!パン!(手拍子)


「わあ!今、コウタ、目が光りました!」

「えっ!?まじで!?」

「はい!髪も、サラサラと風になびいて……」

「お、おれ……変身してる!?」

「ええ!そして今……『これがオレの真の力だああ!』って叫びました!」

「うおおおお!これがオレの真の力だあああ!」


コウタは思わず叫んでしまう。


「……どうですか?」セシリアが無表情で尋ねる。「満足しましたか?」

「…………」


コウタはしばらく固まっていたが、突然笑い出した。


「ははは!あんた……マジでな!」

「気に入りましたか?」

「ああ!最高の覚醒モードだった!」


彼は木刀を肩に担ぐ。


「でもな……やっぱり」

「はい?」

「本当の『覚醒』は……もっと地味なもんなんだろうな」


「……そう思います」

「少しずつ、強くなる」

「昨日より、今日の方がちょっと上手い」

「そんな積み重ねが……」


コウタは拳を握る。


「いつか……本当の『真の力』になる」

「ええ。それこそが、本物の『覚醒』です」


二人は笑い合う。


派手な変身も、オーラもない。

ただ、汗と努力の毎日。


でも、それでいい。

だって……


本当の『覚醒』は──

派手な光ではなく、静かな成長の中にあるのだから。


(地味覚醒・毎日進化編)


(ある晴れた日・教会の前)


「……ふと思ったんだけど」


コウタは教会の大きな扉を見上げながら、口を開いた。


「もう指輪も渡したし、結婚資金もたまったし……」


セシリアが白いウェディングドレスの裾を軽く持ち上げながら、無表情でうなずく。


「ええ」

「なのに……なんでエンディングいってないんだぜ!」


コウタは突然、教会の階段を駆け上がり、大声で宣言する。


「結婚式エンドにむかうのが一番綺麗なエンディングなんだぜ!」


***


(その日の午後・街中が騒然)


「え!?今日!?」

「コウタさん、突然すぎませんか!?」

「でも、二人なら……うん、いいかも!」


街の住人たちが一斉に動き出す。


エリカ:「ウェディングドレス!私、仕立て屋さんに走ります!」

ミーシャ:「……式の段取りを。ギルドとしても支援します」

ギルド長:「ははは!宴は盛大にやるぞ!」


***


(夕方・教会の準備)


花びらが敷き詰められた通路。街中の花が集められている。


コウタはタキシード(ちょっとサイズが合ってない)を着て、神父の前に立つ。


「あの……神父さん、急ですみません」

「いやいや、若者の純愛ほど美しいものはない」


セシリアがエリカとミーシャに付き添われて現れる。手作りのウェディングドレスが、夕日に照らされて輝く。


「……すごい人だかりです」

「当たり前ですよ!街のみんな、二人のこと応援してますから!」


***


(式の最中)


神父:「コウタさん、この女性を妻とし、富める時も貧しい時も、病める時も健やかな時も、愛し続けますか?」

コウタ:「ああ!もちろんだ!」

神父:「セシリアさん、この男性を夫とし……」

セシリア:「はい。ずっと前から、決めていました」


観客から歓声が上がる。


***


(指輪の交換)


コウタがセシリアの指にはめるのは──あのムーンストーンの指輪。


セシリアがコウタにはめるのは──シンプルな銀の指輪。


「……銀?」

「はい。私が……初めての報酬で買ったものです」

「ずっと……あなたに渡す日を、待っていました」


「…………」


***


(「はい、新郎は花嫁にキスしてもよろしい」)


「よし!きたぜ!」


コウタがセシリアに近づく。が、足がもつれる。


「うわっ!?」

「……大丈夫ですか」

「あ、ああ……いける……!」


もう一度近づく。今度は成功。


「……セシリア」

「はい」

「これで……本当のエンディングだな」

「……ええ」


コウタがセシリアにキスする。


観客から大歓声。花びらが舞う。


***


(式の後・街の広場で宴会)


「かんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」


コウタとセシリアは祝福に囲まれる。


エリカ:「本当に……おめでとうございます!(泣)」

ミーシャ:「……記念に、写真を撮らせてください」

ギルド長:「ははは!これでやっと落ち着くか!」


***


(夜・新居のベランダ)


二人だけの時間。


「……すごい一日だったな」

「ええ」

「これで……本当にエンディングか」


コウタは夜空を見上げる。


「でもな……ちょっと、寂しくねえか?」

「……寂しい?」

「ああ。だって……これで『おしまい』だぜ」

「物語が終わる」


セシリアは少し考えて、そっとコウタの手を取る。


「……違います」

「え?」

「これは……エンディングじゃありません」


彼女がかすかに笑う。


「新しい章の、始まりです」

「……新しい章?」

「ええ。『結婚した二人の、その後の物語』の」


「…………」


「冒険は続きます」

「喧嘩もするでしょう」

「笑い合う日も、泣く日もある」

「でも……ずっと、一緒」


コウタの目が、少し潤む。


「……そっか」

「はい」

「じゃあ……明日からも……」

「ええ。いつものように、始めましょう」


二人は手をつないだまま、星を見上げる。


教会の鐘が、遠くから聞こえる。


これがエンディングじゃない。

ただの、新しいページをめくる音だ。


(結婚式・新しい章編)


──そして、物語は続く──

 


  今回のプロンプト


 てかふと思ったんだけどおれほぼチートつかってなくね?


真の力って言われると、やっぱり覚醒モードに憧れるぜ!


 ふと思ったんだけど、もう結婚してるし

なんでエンディングいってないんだぜ!

結婚式エンドにむかうのが一番綺麗なエンディングなんだぜ!

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