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(その夜・コウタの部屋)
「……いや、待てよ」
コウタは布団の中でスマホをいじりながら、あることに気づいて凍りついた。
「セシリアがどう思ってるかわかるなんて……ホラー過ぎるだろ」
画面にはシンプルな体調表示だけ。でも、それでも……
「相手の体調が数値でわかるって……それだけで十分気持ち悪いぞ」
彼はスマホを置き、天井を見つめる。
「これって……ナーロッパだと当たり前なのか?」
***
(翌朝・ギルドの食堂)
「おい、みんな聞けよ!」
コウタは朝食を食べながら、周りの冒険者たちに声をかける。
「おれ、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「なんだよコウタ、朝からうるさいな」
「それよりAランク昇格祝い、奢れよ!」
コウタは真剣な顔で質問する。
「おまえら……恋人の体調が、機械でわかるようになってたら……どう思う?」
一瞬、食堂が静かになる。
「……は?」
「機械で?」
「コウタ、また変なこと考えてるな」
エルフの弓使いが首をかしげる。
「そんなの、自然の摂理に反するよ。感情は顔や仕草で読み取るものだ」
ドワーフの戦士が笑う。
「ははは!そんな便利なものがあるなら、俺も欲しいぜ!嫁さんの機嫌、毎日わからねえからな!」
人間の魔法使いが眉をひそめる。
「……不気味ですね。相手の心を機械が計測するなんて、魂の冒涜です」
コウタはうなずく。
「だよな!不気味だよな!なのにオレのスマホ……」
「お前、そんなもの持ってるのか!?」
「見せてみろ!」
「ちょっと貸せ!」
冒険者たちが興味津々で集まってくる。
「お、おい!勝手に見るな!」
「わあ!これが異世界の神器か!」
「セシリアさんの体調が……『良好』だって!」
「ちっ……やめろって!」
その時、背後から声がする。
「……何を騒いでいるのですか」
セシリアが無表情で立っている。
「わっ!セシリア!」
「あ、セシリアさん!これ、コウタが……」
「返してください」
セシリアがスマホを受け取り、そっとコウタに返す。
「……変なことを」
「い、いや……みんなの意見が聞きたくて……」
***
(食堂の隅の席)
「……結論が出ました」
コウタはセシリアと向かい合って座り、真剣に報告する。
「みんな、『不気味』『ホラー』『魂の冒涜』って言ってた」
「そうですか」
「ナーロッパでも、そんなの当たり前じゃねえみたいだ」
「当然です」
セシリアが紅茶を一口飲む。
「他人の心を機械が測るなんて……不自然です」
「だよな!でもな……」
コウタはスマホを見つめる。
「これがあると……便利なんだ」
「万が一の時、体調がわかる」
「熱があれば気づける」
「疲れてれば休ませられる」
「……でも」
「ああ。『気持ち』は……機械で測るもんじゃねえ」
コウタはスマホの設定を開く。
『体調表示機能:オフ』
「……消すのか」
「ああ。最後まで迷ったけど……」
「迷った?」
「うん。便利だし、お前の体調が心配だし……」
コウタは深く息を吸う。
「でも……それより大事なことがある」
「それは?」
「オレ自身の目で……お前の気持ちを知りたいってことだ」
セシリアのまつげがかすかに震える。
「数字じゃなくて、言葉じゃなくて……」
「お前の笑顔とか、仕草とか、目つきとか……」
「そんなんで、わかるようになりたい」
「……それは難しいですよ」
「ああ。でもな……」
コウタは笑う。
「十年以上一緒にいて、まだわかんねえことがいっぱいある」
「料理が苦手だって、昨日知った」
「掃除が苦手だって、昨日知った」
「抱きしめると、心臓がバクバクするって……昨日知った」
「…………」
「これからも……そんなこと、いっぱい知っていきたい」
「機械じゃなくて、オレ自身で」
セシリアはしばらく黙っていたが、うなずく。
「……それでいいです」
「よし!じゃあ……」
コウタはスマホの電源を切る。
「これで……ただのスマホだ」
「現世の知識は使えるけど……セシリア監視機能はなし」
「これで……ホラーじゃなくなるぜ」
「……そうですね」
「でもな……一つだけ残念なことがある」
「何ですか」
「お前が体調悪い時、すぐ気づけなくなることだ」
セシリアは少し考えて、そっと言う。
「……それなら、約束しましょう」
「約束?」
「私が体調が悪い時は……あなたに、直接伝えます」
「……マジで?」
「ええ。だから……」
彼女がかすかに笑う。
「あなたも、私の気持ちが知りたかったら……直接聞いてください」
「…………」
「それが……一番自然ですよね?」
コウタは目を見開き、そして大笑いする。
「ははは!その通りだ!」
「数字も機械もいらねえ!」
「これからは……全部、直接だ!」
スマホの画面は真っ暗のまま。
でも、二人の間には……
機械では測れない、温かい何かが流れていた。
ナーロッパでも、異世界でも。
本当に大切なものは──
機械じゃなくて、心で感じるものなのだ。
(ホラー解除・直接対話編)
(コウタの部屋・深夜)
「……あれ?ちょっと待て」
コウタは布団の中で突然起き上がり、スマホの暗い画面を見つめた。
「ギャルゲーとかの好感度システムを……下げてるみたいだな」
彼は頭をかきながら考える。
「機械で感情を測るのを否定するってことは……」
「それって……時代を批評してるみたいで……」
「……アカンような気がするぜ」
***
(翌朝・セシリアとの朝食)
「セシリア、聞いてくれ」
「はい?」
コウタは真剣な顔でフォークを置く。
「オレ、昨日あんなこと言ったけど……考え直した」
「どういうことですか」
「機械で感情を測るのを否定するって……それ、なんか違う気がする」
セシリアが首をかしげる。
「……違う?」
「ああ。だってよ……ギャルゲーの好感度システムってさ」
コウタは熱く語り始める。
「あれって、単に『相手の気持ちがわかる便利機能』じゃねえんだ」
「努力が可視化されるシステムなんだ!」
「……努力が?」
「そう!プレイヤーが頑張って、相手を喜ばせたら、数字が上がる」
「逆に、失礼なことしたら、下がる」
「それで、自分の行動が正しかったか間違ってたか……わかる」
セシリアは少し考え込む。
「……確かに、その通りかもしれません」
「だろ?だから……」
コウタはスマホを取り出し、電源を入れる。
「完全にオフにするんじゃなくて……」
「『学習ツール』として使うってのはどうだ?」
***
(設定変更中)
コウタはスマホの設定を再びいじる。
『新モード:ギャルゲー学習モード』
特徴:
1. 遅延表示:行動から1時間後に、その行動がセシリアにどう影響したか表示
2. 抽象表現:「好感度+3」ではなく「ほんのり温かい気持ちになった」
3. 学習目的:あくまで「セシリアの気持ちを理解する練習」として
「これなら……ホラーじゃないだろ?」
「……確かに」
セシリアが興味深そうに画面を見る。
「『ほんのり温かい気持ち』……具体的ではありませんね」
「そう!具体的な数字じゃなくて、あくまで『雰囲気』だけ」
「それで、オレがお前の気持ちを読む練習ができる」
***
(実験開始・その日)
行動①:朝食後に「今日もかわいいな」と言う
→ 1時間後:《ささやかな喜びを感じた》
「おお!これは……成功だな!」
「……それは言うまでもないことです」
行動②:街でセシリアの好きな甘いものを買う
→ 1時間後:《心がほっこりした》
「よし!甘いもの作戦、効いてる!」
「……あなた、私の好物を研究したのですか」
「ああ!これが『努力の可視化』だ!」
行動③:訓練中、わざと負けるふりをする(セシリアに勝たせる)
→ 1時間後:《少し不審に思った。手を抜いている?》
「うわっ!バレてた!?」
「当然です。あなたの手の抜き方、見え見えでした」
「ちっ……もっと上手くやらなきゃ……」
***
(夜・振り返り)
「……なかなか難しいな」
コウタは一日の結果を見て、うなる。
「でも……これがあると、確かに『学べる』」
「私の気持ちを、理解しようとする努力が見えます」
セシリアがそっと微笑む。
「それって……結局、機械に頼ってるのでは?」
「いや、違う」
コウタはスマホを置く。
「機械はあくまで『補助輪』だ」
「自転車の練習で、最初は補助輪つけるだろ?」
「でも、そのうち外す」
「……いつか外すのですか」
「ああ。オレがちゃんとお前の気持ちを読めるようになったら」
「それまで……この『学習モード』で練習させてくれ」
セシリアは少し間を置き、うなずく。
「……わかりました」
「それにさ……」
コウタはいたずらっぽく笑う。
「時代を批評するってのも、悪くないだろ?」
「ギャルゲーのシステムをそのまま現実に適用するのは確かに変だけど……」
「『相手を理解する努力』の部分だけは、学べることもある」
「……深い考えですね」
「はは!オレもたまにはまともなこと考えるぜ!」
二人は笑い合う。
スマホの画面が光る。
《一日のまとめ:セシリア理解度 +5%》
《現在の総合理解度:78%》
《あと少しで補助輪が外せそうです》
「……78%か」
「意外と高いですね」
「十年以上一緒にいて、まだ78%か……道のりは長いな」
「……それでも、今日は1%上がりました」
「ああ!明日は79%を目指すぜ!」
機械があるからこそ、気づけることもある。
機械があるからこそ、学べることもある。
ただ、忘れちゃいけない。
最終的に、本当に大切なのは──
機械の表示じゃなく、目の前の人の笑顔だってこと。
(学習モード・補助輪編)
(数日後・訓練場)
「……努力の可視化か」
コウタは木刀を地面に突き刺し、深くうなずいた。
「深い教えだったぜ……でもな」
彼はスマホを取り出し、「ギャルゲー学習モード」の画面を見つめる。
《セシリア理解度:82%》
《最近の気づき:甘いものは午後に出すと特に喜ぶ》
《注意点:訓練中の手抜きはすぐバレる》
「これ以上……もういらない機能だぜ」
***
(その夜・コウタの部屋)
「セシリア、ちょっといいか」
「はい?」
コウタはスマホをテーブルの上に置き、真剣な顔でセシリアを見つめる。
「この『学習モード』……オフにする」
「……なぜですか?まだ82%では」
「ああ。でもな……」
コウタは拳を握る。
「リスペクトはもう十分だ」
「……どういう意味ですか」
「オレがお前を理解しようとする努力……それはもう、数字で測るようなもんじゃない」
熱く語り始める。
「だってよ、セシリア!」
「お前が笑う時、泣く時、怒る時……全部、オレは自分の目で見てきた!」
「数字が82%だろうが、100%だろうが……関係ない!」
「…………」
「甘いものを午後に出すと喜ぶ……そんなの、数字じゃなくて、お前の笑顔見ればわかる!」
「訓練中の手抜きがバレる……そんなの、お前のツッコミ聞いてりゃわかる!」
コウタはスマホの電源ボタンを長押しする。
「これからは……全部、自分の感覚でいく」
「アナログ最高!デジタルいらねえ!」
ピッ……
スマホの画面が暗くなる。
「……でも」セシリアが静かに言う。「万が一の体調は……」
「お前が直接教えてくれるって約束しただろ?」
「……はい」
「それで十分だ」
コウタは立ち上がり、窓を開ける。夜風が部屋に流れ込む。
「だってよ……これが本当の『リスペクト』だ」
「機械に頼らず、自分の五感だけで……お前を理解しようとする」
「それが……一番の誠意だろ?」
セシリアの目が、かすかに輝く。
「……バカですね」
「ああ!」
「でも……」
彼女も立ち上がり、コウタの隣に立つ。
「そのバカさ……私は、好きです」
「おう!ありがとな!」
***
(翌朝・訓練場)
「よし!今日も頑張るぜ!」
コウタは木刀を振る。スマホはポケットに入ったまま、一切見ない。
「セシリア、今日のメニューは?」
「まずは素振り千回です」
「了解!」
振り上げ、振り下ろす。筋肉が痛むが、コウタは笑っている。
(数字じゃない……自分の成長が、肌で感じられる……)
「……コウタ」
「ん?」
「今、いい笑顔でした」
「え?まじか?」
「ええ。『アナログ最高』って笑顔です」
「ははは!そうか!」
***
(昼・街の食堂)
「セシリア、今日のご飯……なにがいい?」
「……あなたが決めてください」
「んー……じゃあ、甘いもの!午後の方が喜ぶってやつ!」
「……覚えていましたね」
「ああ!脳みそに焼き付いてるぜ!」
数字のメモはない。でも、セシリアの好みは、もう体で覚えている。
***
(夜・帰り道)
二人は手をつないで、街の灯りの中を歩く。
「なあ、セシリア」
「はい」
「オレ……今日一日、スマホ一度も見なかったぜ」
「……そうでしたね」
「でもな……お前の気持ち、すごくわかった気がする」
「どうしてですか」
「だって……お前の笑顔が、昨日よりちょっと多かった」
「……気づいていたのですか」
「ああ。目じりのシワが、0.1ミリ深くなってた」
「……それは誇張です」
「はは!でもな……」
コウタはセシリアの手を強く握る。
「数字じゃわかんねえことが……」
「いっぱいあるんだな」
風が吹き、街の灯りがゆらめく。
スマホはポケットで静かに眠っている。
もう、必要ない。
だって……
本当に大切なものは──
デジタルじゃなくて、アナログで感じるものだから。
努力の可視化?
もう、目に見える形じゃなくていい。
コウタの胸の中に、
セシリアを理解する「努力」が、
目に見えない形で、ぎっしりと詰まっているから。
(アナログ回帰・真の理解編)
今回のプロンプト
いやセシリアがどう思ってるかわかるなんてホラー過ぎだろ
ナーロッパだとあたりまえなのか?
あれちょっと待て
ギャルゲーとかの好感度システムを、下げてるみたいでそれはそれで
時代を批評してるみたいでアカンようなきがするぜ
努力の可視化か深い教えだったぜ
リスペクトはもう十分俺にはいらない機能だぜ




