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(純白の空間・緊急召喚)
「神様ーーっ!!」
コウタが白い空間にぶち込まれ、ひざまずいて叫んだ。
「やっぱり……男なら好きな女の前ではカッコよくいたいんだぜ!」
眼前の神様(相変わらずのラフ格好)が、呆れたように眉をひそめる。
「またお前か……今度はどうした?」
「新しいチートが欲しい!異世界チートスマホくれよ!」
「……は?」
「だってよ!今どきのラノベじゃ、スマホチートが最強だろ!」
「ネット接続できて、現世の知識使えて、便利アプリまで使える!」
「これがあれば、セシリアにだって……!」
神様は深いため息をつく。
「おいおい……お前、もう十分チート持ってるだろ?」
「〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉だぞ?運命の相手専用最強チートだ」
「それでも足りねえのか?」
「足りねえ!」コウタは熱く訴える。「だってそれ、セシリア専用すぎんだよ!」
「セシリアの前でしか無敵になれない!」
「でもな……男ってのはさ、好きな女の前で『いつでも』カッコよくいたいんだ!」
「…………」
「スマホがあれば……現世の知識で異世界を驚かせられる!」
「便利アプリで生活を楽にできる!」
「そして何より……セシリアに『コウタってすごい!』って思わせられる!」
神様はしばらく黙って考え込み、ふっと笑い出した。
「ははは……わかった、わかったよ」
「お、くれるのか!?」
「ああ。でもな……条件付きだ」
神様が手を振ると、光るスマートフォンが空中に現れる。
『異世界対応スマホ(試験運用版)』
「おお!これが……!」
「ただしだ」神様が厳しい顔になる。「このスマホには、特別な制限をかける」
制限事項:
1. 『セシリア監視機能』必ずオン
· セシリアが近づくと自動で通知
· セシリアの感情変化を数値化表示(※精度80%)
· セシリアから10m以上離れると警告音
2. 『セシリア優先検索』
· 検索結果は常に「セシリアが喜びそうな情報」から表示
· 例:「美味しい料理の作り方」→「セシリアの好物:甘いもの特集」
3. 『セシリア連動チート』
· スマホの機能は、セシリアの好感度に比例して強化される
· セシリアが不機嫌だと、充電が10倍速で減る
「……なんだこれ」
「お前の望み通り『カッコいいスマホチート』だ。ただし……」
神様がいたずらっぽく笑う。
「完全にセシリア中心に最適化されてる」
「ちっ……それじゃあ、ただの『セシリア専用スマホ』じゃねえか!」
「そうだ。お前のチートは、もうとっくに『セシリア専用』に最適化されてるんだ」
神様がコウタを見下ろす。
「〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉もそう」
「これからどんなチートを追加しても……全て『セシリア中心』になる」
「それがお前の運命だ」
「…………」
「でもな」神様が続ける。「それで悪いか?」
「セシリアひとりを幸せにできるなら、それで充分じゃねえか?」
「世界中の女にモテるより、たった一人の女に愛されるほうが、よっぽどカッコいいだろ?」
コウタはスマホを見つめ、考え込む。
「……確かに」
「お前はもう『無敵のコウタ』だ」
「セシリアの前ではな」
「…………」
コウタはスマホを受け取る。画面がパッと光る。
《ようこそ、セシリア専用チートスマホへ》
《現在のセシリア好感度:98/100》
《現在の距離:別次元(まもなく帰還)》
「……98か」
「高いな。もう限界に近い」
「……ああ」
コウタはスマホを握りしめる。
「これで……最後のチートだな」
「ああ。もうこれ以上、チートはやらん」
「……わかった」
光がコウタを包み込む。
「じゃあな、コウタ」
「ああ。ありがとな……神様」
***
目が覚める。自分の部屋の布団の中。
コウタはスマホを手に、そっと立ち上がる。
「……よし」
彼はスマホのカメラを起動し、自分を映す。
「これが……オレの新しいチートか」
画面には、細かい文字が表示されている。
《セシリア関連情報》
· 現在の気分:穏やか(朝食のパンが美味しかった)
· 今日の体調:良好(特訓の疲れはほぼ回復)
· コウタへの要望:無理をしないで
「……全部、セシリアか」
コウタは笑う。
「……まあ、いいか」
彼はスマホをポケットにしまい、部屋を出る。
廊下でセシリアと出会う。
「おはよ、セシリア」
「……おはようございます」
スマホが振動する。画面を見る。
《セシリア好感度:98→99》
《理由:朝の挨拶が気持ち良かった》
「……なあ、セシリア」
「はい?」
「今日も……よろしくな」
「……はい。もちろんです」
《セシリア好感度:99→100》
《最大値到達。これ以上は計測不能》
《おめでとうございます》
《あなたは、とっくに『無敵』でした》
コウタはスマホの画面を見つめ、ほっとため息をつく。
「……そうか」
「どうかしましたか」
「いや……なんでもない」
もうチートもスマホもいらない。
だって……
彼はもう、とっくに
たった一人の女の前で
無敵だったのだから。
(最終チート・それでよし編)
(コウタの部屋・設定変更中)
「よし……これで……」
コウタはチートスマホをいじりながら、真剣な表情で設定を変更していた。
「セシリアの好感度表示……コウタへの要望……」
彼は指を滑らせ、設定画面を開く。
『削除:好感度数値化機能』
→ 理由:「俺たちを記号であらわしてるみたいだからアンインストールだぜ!」
『削除:要望表示機能』
→ 理由:「同上。気持ち悪いぜ!」
『保留:体調表示機能』
→ 理由:「万が一があるから必要だぜ!」
『削除:気分表示機能』
→ 理由:「相手に気分知られるのも気持ち悪いからアンインストールだぜ!」
「……よし。これで人間らしくなった」
スマホの画面がシンプルになる。残っているのは、体調表示と基本的なスマホ機能だけだ。
「さて……次は……」
コウタは検索バーに指を走らせる。
検索:「掃除 苦手 克服 動画」
検索:「料理 初心者 簡単 レシピ」
「よし……これを見ながら……」
***
(同日・午後・コウタの部屋)
「セシリア!ちょっと来てくれ!」
「……何ですか」
セシリアが部屋に入ると、異様な光景が広がっていた。
床には雑巾が散乱し、棚の上の物がすべて床に下ろされている。コウタはエプロンをつけ、スマホを片手に必死に雑巾がけをしている。
「見てくれ!『ワックスがけ前の水拭きは八の字で!』だって!」
「……それは」
「動画で見たぜ!これで掃除マスターだ!」
コウタが雑巾を八の字に動かすが、力が入りすぎて雑巾が破れる。
「ちっ……雑巾弱いな!」
「……新しいのを持ってきます」
***
(一時間後・キッチン)
「次は料理だ!見てろよ!」
コウタはスマホを立てかけ、フライパンを握る。
「『卵焼きは優しい火加減で』……ふむふむ」
「……卵焼きですか」
「ああ!まずは基本からだ!」
コウタが卵を割るが、殻が入る。
「うわっ!これは……『風味付け』だ!」
「……違います。取り除きましょう」
二個目。今度はうまく割れるが、黄身が崩れる。
「ま、まあいい!混ぜれば一緒だ!」
フライパンに流し入れる。油が跳ねる。
「うわっっ!熱い!」
「……火加減が強すぎます」
出来上がった卵焼きは、少し焦げて形がいびつだ。
「……ほら!初めての卵焼きだ!」
「……確かに、卵を焼いたものにはなっています」
セシリアがそっと箸を取り、一口食べる。
「……どうだ?」
「……まずいです」
「ちっ!率直だな!」
「でも……」セシリアがもう一口食べる。「……あなたが作ってくれたので、美味しいです」
「え?いや、まずいって言ったばかりじゃ……」
「味と気持ちは別です」
セシリアはかすかに笑う。
「あなたが私のために……苦手なことに挑戦する」
「それだけで……十分です」
「…………」
コウタはスマホの画面を見る。体調表示だけが光っている。
《セシリア体調:良好(精神的にやや高揚)》
「……ちっ。体調表示だけじゃ、よくわかんねえな」
「そうですか」
「ああ。お前が今、本当はどう思ってるか……数字じゃなくて」
コウタはスマホを置き、セシリアの目を見つめる。
「だから……教えてくれ」
「……はい?」
「動画見て、掃除して、料理して……」
「オレ、カッコよかったか?」
長い沈黙。
セシリアはコウタの顔をじっと見つめ、ゆっくりとうなずく。
「……ええ」
「マジで?」
「はい。とても……カッコよかったです」
「じゃあ……今度こそ……」
コウタは一歩前に出る。
「キャーすごい抱いて……ってやるんだぜ!」
「えっ」
コウタがセシリアをぎゅっと抱きしめる。
「これが……オレ流の『カッコよさ』だ!」
「掃除も料理も下手くそだけど……」
「お前のために頑張る!」
「…………」
セシリアは一瞬固まるが、そっと手を回し、コウタの背中に触れる。
「……バカですね」
「ああ!」
「でも……」
彼女の声が震える。
「……この抱擁……動画で学んだのですか?」
「違う!これは……オレのオリジナルだ!」
「……そうですか」
「うん。で……どうだ?」
「……もう少し……強く抱きしめてください」
「お、おう!」
コウタがさらに強く抱きしめる。
スマホの画面が、そっと光る。
《セシリア体調:要注意(心拍数上昇、呼吸速化)》
《医学的異常なし。感情的要因と推測》
数字も記号もいらない。
今、この瞬間だけは……
二人の体温と言葉で、十分だった。
(抱擁・オリジナル編)
(抱擁の直後)
「……ん?」
コウタはスマホの画面を見て、目を見開いた。
《セシリア体調:要注意(心拍数上昇、呼吸速化)》
「おいおい……体調要注意かよ!」
コウタは慌ててセシリアの肩を離し、彼女の顔を覗き込む。
「大丈夫か、セシリア!?顔、赤いぞ!熱でもあるのか!?」
「……い、いえ……大丈夫です」
「でもスマホが要注意って……おい、病院行くか!?」
コウタはもうパニック状態だ。スマホを振りながら、セシリアの額に手を当てる。
「熱……あるのか?ないのか?オレの手、わかんねえや!」
「……本当に、大丈夫ですから……」
セシリアは顔を背けようとするが、コウタが真剣に心配する様子に、思わず笑いが漏れる。
「ふっ……」
「お、おい!笑ってる場合じゃねえだろ!?」
「すみません……でも……」
セシリアはそっとコウタの手を取り、自分の胸に当てる。
「……感じますか?」
「え?な、なにが……」
「心拍です」
ドキ、ドキ、ドキ……
速くて力強い鼓動が、コウタの手のひらに伝わる。
「これが……『要注意』の原因です」
「……はあ?」
「あなたが抱きしめてくれたから……心臓が、少し……騒いでいるだけです」
「…………」
コウタは目をぱちぱちさせる。
「え?それって……つまり……」
「そうです。医学的異常ではありません」
「じゃあ……この『要注意』って……」
「……感情的要因です」
セシリアは顔を赤らめたまま、スマホをちらりと見る。
「その表示……消した方がいいかもしれません」
「あ、ああ……そうだな……」
コウタがスマホをいじる。体調表示の詳細設定を開く。
『感情的要因による体調変化:表示しない』
→ 理由:「心配しすぎて逆に迷惑かけるからな!」
「よし……これで……」
設定を保存する。スマホの表示が変わる。
《セシリア体調:良好》
「……これでいいか?」
「……ええ。十分です」
セシリアはほっと息をつく。
「でもな……」コウタが真剣な顔で言う。「次からは気をつけるぜ」
「気をつける……?」
「ああ。いきなり抱きしめたりしない」
「……それは」
「まずは『これから抱きしめるよ』って宣言する」
「それから、ゆっくり近づく」
「心臓に負担かけないように」
セシリアは呆れたようにため息をつく。
「……それでは、ロマンスがありません」
「え?でも、お前の体調が……」
「私は、あなたの突然の抱擁も……好きです」
「…………!!」
ドキン!
今度はコウタの心臓が跳ねる。
「ち、ちっ……わかった……でも……」
「はい?」
「万が一の時のために……」
コウタはスマホを握りしめる。
「体調表示は、このままにしておく」
「…………」
「数字や記号じゃわかんねえことでも……」
「お前の体調だけは……ちゃんと知っておきたいんだ」
セシリアの目が、少し潤む。
「……バカですね」
「ああ!それでいい!」
二人は笑い合う。
スマホの画面が、そっと光る。
《新機能提案:『ハグ予告アラーム』》
《「10秒後に抱擁します」などの事前通知機能》
「……これ、追加するか?」
「……結構です」
「そうか」
コウタはスマホをポケットにしまう。
「じゃあ……次に抱きしめる時は……」
「はい?」
「……やっぱり、突然でいいや」
「……ええ。それでいいです」
こうして、体調要注意アラーム事件は一件落着。
スマホの機能は減ったが、二人の距離は──
また一歩、近づいたのであった。
(要注意解除・距離縮小編)
今回のプロンプト
とは言ったものの、神様ーやっぱり、男なら好きな女の前ではかっこよくいたいんだぜ
異世界チートスマホくれよ
なんたって俺は無敵のコウタだからな
セシリアの好感度表示とかコウタへの要望は俺たちを記号であらわしてるみたいだからアンインストールだぜ!体調は万が一があるから必要だぜ!
気分は?相手に気分知られるのも気持ち悪いからアンインストールだぜ!
セシリアの苦手な掃除と料理動画みて
キャーすごい抱いて
今度こそやるんだぜ!
体調要注意は心配だぜ!




