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(翌日・朝)


「ちっ……こんなのダサすぎるぜ……」


コウタはSランク任務で得た札束の山を見つめ、苦い表情を浮かべる。


「札束ビンタで女の子が寄ってくるなんて……そんなの、ただの金の力だ」

「カッコいい男は、金じゃなくて自分自身で輝くもんだ」


彼は札束を掴み、セシリアの部屋へ向かう。


***


(セシリアの部屋)


ドンドン。


「セシリア、いるか?」

「……はい」


ドアが開く。セシリアはいつもの無表情で立っている。


「なんだ、その札束」

「ああ、これだ」


コウタは札束の束を、セシリアに差し出す。


「全部、受け取ってくれ」

「……なぜですか」

「オレがもらった金だ。でも、こんなもんじゃ女の子にモテたって、意味ねえ」


コウタは真剣な目でセシリアを見つめる。


「オレが欲しいのは……金じゃなくて、オレ自身がカッコよくなることだ」

「…………」

「だから、この金はお前に預ける。オレの管理はお前に任せる」


セシリアは一瞬、目を細める。


「……私に?」

「ああ。お前なら、無駄遣いしないだろ」

「……そうかもしれませんが」


セシリアは札束を受け取り、軽く重さを確かめる。


「では、何に使いますか?あなたの『カッコよくなるため』の資金として」

「それは……お前が決めろ」

「私が?」

「ああ。オレは……」


コウタは拳を握りしめる。


「これから、特訓するぜ」

「特訓?」

「あのSランク任務……実際には、セシリアがほとんど倒したんだろ?」

「…………」

「バレてるんだ。オレ、自分の実力じゃあんなの倒せねえ」


コウタは俯く。


「こんな男……かっこ悪いぜ」

「……コウタ」


「金で女の子を釣るより、弱いままの自分をごまかすより……」

「オレは、本物の強さを手に入れる」


コウタはセシリアの目を真っ直ぐ見つめる。


「だから……教えてくれ、セシリア」

「……何を?」

「強くなる方法を」


長い沈黙が流れる。


セシリアは札束をそっと机に置き、ゆっくりと口を開く。


「……本当に、ですか?」

「ああ」

「辛いですよ。私は、厳しいですから」

「それでいい」


コウタは笑う。


「オレがどんだけダサい男か、一番知ってるのはお前だろ?」

「……そうですね」

「だったら、お前がオレを鍛えるのが一番だ」


セシリアは少し間を置き、うなずく。


「……わかりました」

「おお!」

「ただし、条件があります」


「なんだ?」

「私が鍛えている間、あなたは『モテ活』を一切禁止します」

「ええっ!?」

「本気で強くなりたいのなら、そちらに集中してください」

「……くっ……わかった」


コウタは歯ぎしりするが、うなずく。


「もう一つ」

「まだあるのか!」

「特訓中、私は『師匠』として接します。幼馴染ではありません」

「なっ!?」

「それでいいですか?」


コウタは深く息を吸い込み、うなずく。


「……ああ。それでいい」

「では」


セシリアが一歩前に出る。その目は、いつもの無表情から、鋭い師匠の目に変わっている。


「まずは基礎体力から。外に出て、街を百周走ってください」

「百周!?そんなの無理だ!」

「では、九十九周で」

「一週減っただけじゃねえか!」


こうして、コウタの本格的な「特訓」が始まった。


***


(三日後・訓練場)


「はあ……はあ……も、もうダメだ……」


コウタは地面に倒れ込み、息を切らしている。


「まだ五十周です。立ちなさい」

「セ、セシリア……師匠……無理だ……」

「では、今日のメニューは全て無効です。賞金も没収します」

「うわっ!やる!やるよ!」


コウタは這うように立ち上がり、また走り出す。


***


(一週間後・森の中)


「剣の振りが遅い。もっと腰を落として」

「は、はい……!」


コウタは木刀を振り続けている。腕は棒のようだ。


「あなたのチートは、セシリアのためだけに発動します」

「……え?」

「なら、戦闘中も私のことを考えなさい」

「な、なんか恥ずかしい……」

「では、もっと速く振って」


***


(一ヶ月後・峡谷)


「今日は実戦訓練です」

「お、おう……って、あれ!?またサンダーバード!?」

「Sランク任務を一人でこなす実力をつけるためです」

「まだ無理だって……!」

「私がそばにいます。安心して、戦いなさい」


コウタは震える手で剣を握る。


(セシリアのため……セシリアのために……)


胸が熱くなる。チートが発動する。


「……行くぜ!」

「はい。見ています」


***


(二ヶ月後・コウタの部屋)


コウタは鏡の前で、自分の体を見つめる。


「……筋肉、ついたな」

「まだまだです」


セシリアが後ろに立っている。彼女は相変わらず無表情だが、目には少しだけ満足の色が浮かんでいる。


「……セシリア」

「はい」

「ありがとな」

「謝る必要はありません。あなたが頑張った結果です」


コウタは振り返り、セシリアを見つめる。


「……オレ、まだカッコいい男にはなれてないよな」

「……それは」

「でもな……前よりは、マシになった気がする」


セシリアの口元が、ほんのり緩む。


「……ええ。少しだけ、マシになりました」

「ちっ……もう少し褒めろよ」

「百周走ってから、考えます」

「ひどいな!」


二人が笑う。


「……なあ、セシリア」

「何ですか」

「この特訓……まだ続けるぜ」

「もちろんです。あなたが納得するまで」


コウタは窓の外を見る。


(札束ビンタ……そんなの、どうでもよくなったな)

(オレが本当に欲しかったのは……)


彼はセシリアの横顔を見る。


(……こんな風に、お前と一緒に……成長する時間だったのかもしれない)


「よし!明日も頑張るぜ!」

「はい。期待しています」


こうして、コウタは「カッコいい男」への道を、一歩一歩、歩み始めていた。


金でも、チートでもない。

ただ、努力と、彼を信じて厳しく教えてくれる幼馴染との日々で。


(真の強さ・特訓編)


(訓練場・朝)


「……ちっ!」


コウタは木刀を地面に突き刺し、深いため息をついた。


「これじゃ……恋人じゃなくてバディものじゃねえか!」


セシリアが無表情で水筒を渡しながら、首をかしげる。


「バディ……もの?」

「ああ!仲間同士で切磋琢磨するジャンルだ!男同士の絆とか!」

「私たち、男女ですけど」

「そうじゃねえって!」


コウタは熱く語り始める。


「見てみろよこの一ヶ月!」

「朝から晩まで特訓! 食事は栄養バランス! 会話は戦闘論!」

「これって……完全に『戦友』だろ!?」


「……あなたが強くなりたいと言ったので」

「そうじゃねえ!オレが言ってるのは……」


コウタはセシリアの肩をつかむ。


「ラブロマンスがねえ!」

「…………」


「ほら!特訓してる時に、『コウタ……あなた、汗かいてて……ちょっと……』みたいな!」

「衛生面で問題です」

「『戦闘中に守ってくれて……ありがとう……』みたいな!」

「それは日常茶飯事です」

「『二人きりの夜に……特訓以外のことも……』みたいな!」

「それは業務外です」


「ちっっ!わかってねえな!」


コウタは地面に座り込む。


「ジャンルが変わってるんだよ!『異世界ラブコメ』から『熱血バディもの』に!」

「……悪いことですか?」

「悪くはねえけど……オレが望んでたのと違う!」


セシリアはコウタの隣に座る。


「あなたが望んでいたのは、どんな関係ですか」

「そりゃあ……もちろん……」


コウタの言葉が詰まる。


(……どんな関係だ?)


彼は一ヶ月前の自分を思い出す。


金で女の子を釣ろうとしたダサい男。

チートに頼って、中身のないカッコよさを演じようとした男。


「…………」


「わかんねえ」

「え?」

「オレ自身……わかんねえんだ」


コウタは空を見上げる。


「恋人になりたいのか……戦友でいいのか……」

「ただの幼馴染でいたいのか……」

「全部、ごっちゃになってる」


セシリアは黙ってコウタの横顔を見つめる。


「……セシリア」

「はい」

「お前は……オレをどう思ってる?」


長い沈黙が流れる。風が木々を揺らす音だけが聞こえる。


「……答えられますか?」

「もちろんだろ!お前なら……」

「では、逆にお聞きします」


セシリアがコウタの目を真っ直ぐ見る。


「あなたは、私をどう思っていますか」

「え……?」

「恋人ですか?戦友ですか?幼馴染ですか?」

「それとも……」


セシリアの声が少し震える。


「……ただの、『モテモテチート』の対象ですか?」


「…………!!」


コウタは息を呑む。


(……そんな……)


「一ヶ月、特訓を共にして思いました」

「あなたは確かに強くなった。でも……」


セシリアはそっと自分の胸に手を当てる。


「あなたが私を見る目は……変わっていません」

「『カッコよくなりたい』という目的のための、『手段』として見ている」


「違う!そんなこと……」

「では、証明してください」


セシリアが立ち上がる。


「今日の特訓はお休みです」

「え?なんで?」

「代わりに……」


彼女はくるりと振り返り、かすかにほほえむ。


「『ジャンル変更』の実験をしましょう」

「……どういうことだ?」

「一時間後、街の噴水前で待っています」

「そこで、あなたが望む『関係性』を、見せてください」


「え?いや、でも……」

「できますよね?『カッコいい男』のあなたなら」


そう言うと、セシリアは去っていく。


コウタは一人、訓練場に取り残される。


「……くそ。なんてこと言い出しやがった」


彼は地面に仰向けに倒れる。


(オレは……セシリアを……)


空が青くて、眩しい。


(……どう思ってるんだ?)


***


(一時間後・噴水前)


セシリアは約束通り、噴水の縁に座って待っている。いつもの無表情だ。


コウタは遠くからその姿を見つめる。


(……どうすりゃいいんだ?)


頭の中を考えが駆け巡る。


恋人としてアプローチ?

戦友として肩を組む?

幼馴染として普通に話しかける?


「……ちっ。全部、嘘くさく感じる」


彼はため息をつき、セシリアの方へ歩き始める。


(……よし。わかった)


(オレは……オレらしくいこう)


セシリアがコウタに気づく。彼女は無言で立ち上がる。


二人の距離が近づく。5メートル。3メートル。1メートル──


「セシリア」


コウタが声をかける。


「ん?」


コウタはセシリアの前に立ち止まり、深く息を吸い込む。


そして──


ドスン


膝をつく。


「……何をしているのですか」

「謝る」

「……謝る?」

「ああ。今まで……お前を『手段』みたいに扱ってた……ごめんな」


セシリアの目が少し見開かれる。


「オレはな……バカだった」

「カッコよくなりたくて……モテたくて……でも、肝心なことがわかってなかった」


コウタは顔を上げ、セシリアを見つめる。


「お前がいてくれるから……オレは頑張れる」

「お前が認めてくれるから……オレは強くなりたいと思う」

「お前が笑ってくれるから……オレは幸せだ」


「でも……それって……」


コウタの声が詰まる。


「……恋人なのか、戦友なのか、幼馴染なのか……オレ、まだわかんねえ」

「ごめんな。そんな曖昧な態度で……」


「……いいえ」


セシリアがコウタの前に膝をつき、彼の目を見下ろす。


「それでいいんです」

「え?」

「関係に名前をつける必要はありません」


セシリアがほのかに笑う。


「あなたが私を大切に思ってくれるのなら」

「私があなたを一番に想っているのなら」

「それで……充分です」


「…………」


「恋人でも、戦友でも、幼馴染でも」

「全部、含めて……『私たち』なんですから」


コウタは目を見開く。


「……セシリア」

「はい」

「……オレ、やっぱりバカだな」

「ええ。そうです」


「でも……このバカで、いいか?」

「……望むところです」


コウタは立ち上がり、セシリアの手を取る。


「じゃあ……これからもよろしくな」

「はい。ずっと」


二人は手をつなぎ、噴水の周りを歩き始める。


ジャンルが何であれ。

恋人であれ、戦友であれ、幼馴染であれ。


この関係が──

『コウタとセシリア』という、唯一無二の関係であることだけは。


確かだった。


(ジャンル不明・それでいい編)



 

今回のプロンプト

 

 こんなのダサすぎるぜ

札束はセシリアに渡して俺は特訓するぜ

こんな男はかっこ悪いぜ


 これじゃ恋人じゃなくてバディものじゃねえか!

ジャンルがかわってるぜ!

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