表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/19

1

1

第1話:神様、これが『モテるチート』なんですか?


「ねえねえ、二人ともさ、この後暇? オレ、いい店知ってん──」


バシッ!!


「き、きもい! 近づかないで!」

「あっ、あんた…うわああ!」


痛い。頬が、いや、頭がガンガンする。視界が真っ白になって、地面が近づいてくる。ああ、またやっちまった。ナンパでビンタ。そんで、こけちゃった。


──って、こけただけじゃねえよ、これ…後頭部…熱い…。


意識が遠のく前に、最後に頭をよぎったのは…。


(ああ…あたりどころ、悪かったぜ…)


***


白い。何もかもが真っ白な空間。目の前に、ラフなTシャツにジーパン、ひげ面のおっさんが胡坐をかいている。


「…で、お前の願いは?」


は? 願い? おっさん、誰だよ…あ、もしかして神様? 俺、死んだんだ。


でも、願いを聞いてくれるなら言うしかねえ!


「はあ!? そりゃあもちろん、とにかくモテてぇ!!!」


おっさん…いや、神様は一瞬、目をぱちぱちさせた後、深くため息をついた。


「…しょうがねえな。お前の魂に染み付いた願い、形にしてやるよ。特別にスキルを付与してやろう。これでお前も『モテる男』だ。がんばれよ、バカ」


「おお!? さすが神様!」


光が包み込む。その名は── 〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉。


カッケえ! これで俺の人生、イチコロだぜ!


***


目が覚めた。柔らかい草の上。空は青くて、変な鳥が飛んでる。


「よっしゃ! 異世界転生だ! さっそくモテモテの人生を──って、あれ?」


体が小さい。手も足も、ちっちゃい。5歳か6歳ぐらいの子供の体だ。


「な、なんで…神様、調整ミスか!?」


落ち込んでいると、森の奥からかすかに泣き声が聞こえる。


行ってみると、木の根元に座り込んで、ぽろぽろ泣いている女の子がいた。銀色の髪がぼさぼさで、服も泥だらけ。でも、その横顔は…めっちゃ可愛い。


「おい、大丈夫か?」


声をかけると、少女がびくっと震えて顔を上げた。碧い瞳が涙でいっぱいだった。


「迷子…お家、わからない…」


「ははーん、そっか。よし、オレも迷っちゃったけど、一緒に帰ろうぜ! オレ、コウタだ!」


そう言って手を差し出した。少女は涙をこらえ、小さな手を伸ばしてきた。


「…セシリア」


これが、俺とセシリアの、運命的な出会いだった。


***


それから十年以上。俺、コウタは17歳。相変わらずの冴えない顔だが(本人談)、心は『モテる男』への希望に燃えていた。


…少なくとも、転生した直後はそうだった。


今、俺はフランフラン王国の王都・中央広場に立ち尽くし、深いため息をついている。


「はあ…なんでだ…」


隣では、銀髪を一つに束ね、清楚なワンピース姿のセシリアが、無表情でパンをほおばっている。街行く男性の視線が、釘付けだ。


「コウタ。また、ため息です。三回目です」


「そりゃあため息出るよ! なんでセシリアばっかモテて、オレは全然ダメなんだ!」


「わかりません。でも、私はコウタが一番です」


またそれを言う。セシリアは幼い頃から、誰に対しても無愛想で無口。笑顔を見せるのも、怒りの表情を見せるのも、俺の前だけだ。なのに、なぜか街の男たちには『神秘的で高嶺の花』的にモテまくる。不公平だ。


一方の俺はといえば、転生時に神様から貰ったというチートスキル〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉が、どうにもパッとしない。いや、むしろ逆効果か?


今朝だって、冒険者ギルドの受付にいる巨乳のお姉さんに、さりげなくアピールしてみた。


「お姉さん、今日もキレイだね! なんかイイ任務ない?」


受付のお姉さん、ミーシャさんは書類から顔を上げ、無表情でこっちを見た。


「はい。こちらがゴブリン退治の任務書です。報酬は…(棒読み)」

「え? あ、そっちじゃなくて、もっと二人で…とか」

「他にご用事がなければ、次の方どうぞ」


完全にスルーされた。あの神様、『モテる男』になるスキルって言ったけど、なんか設定弱すぎねえか? これじゃあただの「変な常連客」だ。


「コウタが頑張りすぎなのです。無理に変なことを言わなくても」


「そりゃセシリアはいつもオレに優しいからそう言うけどさ…」


ふと、広場の向こうに、金髪の女戦士が立っているのに気づいた。鎧がきつすぎて苦しそうな、でも顔は整った美人だ。騎士見習いのエリカさん。数日前、街で魔物に襲われてる所を(なぜか)俺が通りかかって(なぜか)うまく逃げるきっかけを作った(ように見えた)人だ。


よし、今回はもっと直接的に! 神様スキル、頼むぜ!


「おーい! エリカさーん!」


手を振って近づこうとしたその時、だ。


ズッ…!


なぜか足元の石畳がわずかに傾いていて、俺は大きくよろめいた。その拍子に、たまたま通りかかった商人の車(野菜いっぱい)に肩をぶつける。


「おいっ! 目ぇつけろよ!」


「あ、すみません!」


よろよろと体勢を立て直し、エリカさんの方を見ると…彼女はもういなかった。代わりに、さっきの場所でこっちを見て、呆れたように首を振る別の騎士の姿が。


「…あれ? エリカさんは?」


「さっき、『あの変な人に絡まれそう』って、小走りで逃げていきましたよ」


隣にいつの間わり立っていたセシリアが、淡々と報告する。


「なんでお前、そんなこと知ってるんだよ!」

「ずっと見ていましたから。コウタが転びそうになるのも、車にぶつかるのも、全部」


セシリアは少し間を置いて、パンの最後のかけらを口に運んだ。


「…私がいるときは、いつもコウタはそうなります。私がいないときは、どうなのですか?」


「え? いや、別に…」


言われてみれば、確かに…。セシリアがいるとき、俺はなぜか小さな災難に遭うことが多い。転ぶ、物を落とす、変なタイミングで人にぶつかる。そのたびにセシリアが助けてくれる。


でも、セシリアがいない時は…なんというか、何も起こらない。ただ、誰にも相手にされないだけ。


もしかして、これが…スキルの効果? ラッキーとかじゃなくて、むしろ不運を呼んでる?


「あああ、もう! 神様、なんてチートくれやがったんだ!」


「神様は、あなたに『モテる』力をくれたのですよ。私はそう信じています」


セシリアは真っ直ぐに俺を見つめた。その碧い瞳は、幼い頃から何一つ変わっていない。


「だって…」


彼女が、ほんのり、本当にほんのりだけ笑みを浮かべて言った。


「…私が、こうしてずっとあなたのそばにいられるのは、神様のおかげですから」


その言葉に、俺は何も言えなかった。


…はあ。確かに、世界一可愛くて、強くて(こっそり剣聖らしい)、そして俺だけに笑顔を見せるセシリアが、こんなツいてない俺の側にいてくれる。


それだけで、もう願いは叶ってるのかもしれない。


…んなことねえよ! モテたいんだよ、広く浅く!


「よし! 次は絶対──」


ガラガラガラッ!!


突然、広場の噴水から水が爆発的に吹き上がった。魔力的に汚染された黒い水だ。人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。


「魔物の仕業か!?」


セシリアの表情が一瞬で鋭くなる。彼女はワンピースのすそを軽く掴み、身構えた…が、次の瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。


「コウタ、後ろ!」


俺が振り返ると、黒い水の塊が、獣のような形になって、俺めがけて襲いかかってきていた! 速い! 避けられない!


(やべえ! セシリアの目の前で、こんな…!)


胸が、熱くなる。


──〈ビビるな、それが恋の魔法だ〉。


体が、独りでに動いた。目の前の水魔を、まるでスローモーションのように見ながら、右拳を軽く握る。なんだか、すげえ力が湧いてくるぜ。


よし、決めた!


「ヘッ!セシリア!見てろよ……!!」


腰をぐっと落とし、地面を蹴る。吹き上がる黒い水しぶきを、まるで無視するかのように突き進む。


「俺は──無敵だぜ!!」


笑みを浮かべながら、握った拳を、水塊の中心めがけて、思いっきり振り抜いた。


ドゴォォーン!!


衝撃音というより、水風船が巨大な音を立てて破裂するような。黒い水塊が一瞬で霧散し、無害な雨のようにぱらぱらと広場に降り注いだ。


「…ふん」


軽く拳を振り、肩をそらして立ち尽くすコウタ。息も切れてないし、疲れも感じない。むしろ爽快だ。


「なーんともねえよ、こんなもん」


背後から駆け寄る足音。振り向くと、セシリアが目を大きく見開いてこっちを見ている。あの無表情なセシリアが、珍しくはっきりと驚いた顔をしていた。


「コ、コウタ…? 今の…」

「ん? ああ、ちょっとカッコいいとこ決めちゃったかもな! てへへ」


照れ隠しに頭をかく。すると、突然──


「へっくしょい!」


大きなくしゃみが一つ。さっきまでの無敵モードが嘘のように、急に寒気がする。あれ、なんだか急に疲れてきた…。


「…あれ? なんか…ぐったりする…」


セシリアはため息をつき(心配混じりの呆れ)、そっとコウタの腕を支えた。


「『無敵』だったのは、ほんの一瞬だけのようですよ。帰りましょう。風邪をひきます」


「お、おう…まあ、でもさっきのはカッコよかったろ? ねえ、セシリア、カッコよかったよな?」

「…………」

「なんで黙るんだよ!?」


セシリアに引っ張られながら歩き出す。後ろでは、騒動を治めに来た衛兵たちの声が聞こえる。


「おい、あの銀髪の娘、さっき一瞬だけすごい気配を感じたぞ…」

「いや、そっちの男だ。あの水魔を一撃で霧散させたんだ!」


誰かが俺を指さしている気がする。でも、振り返らない。今の俺には、そんな気力も残っていない。


(なんだよ、あれ…あれが、オレのチートの…「カッコいい自分」になれるとこ?)


でも、あんなの、セシリアが危ない目に遭いそうになった時だけ、たまに起こる現象だ。普段のモテ活にはなんの役にも立たない。


神様…これが『モテるチート』?


…あんにゃろ、だましやがったなぁ。


「コウタ」

「ん?」


前を歩くセシリアが、ふと立ち止まり、振り返った。夕日が彼女の銀髪をオレンジに染めていた。


「…今日も、私が守れました。だから、これからも、ずっと」

「はあ?」


意味がわからない。セシリアはまた、小さく笑った。


「いいえ、忘れてください。ただ…」


彼女はそっと自分の胸に手を当てた。


「コウタが、私のためにあんな力を出せるなら…私は、それだけで幸せです」


そう言うと、彼女は再び歩き出した。


俺は、ただぼんやりと彼女の後ろ姿を見つめるしかなかった。


(…なんだよ、それ。オレが、セシリアのため?)


わからない。神様のスキルも、セシリアの言うことも、全部いまいちピンとこない。


ただ一つ、確かなことがある。


セシリアのそばにいると、小さな災難には遭うけど、大きなピンチの時にはなぜか力を出せる。


…それって、もしかして…


(第1話 終わり)



 ここから全く作者の意図通りに動かない生成AIと作者の戦いが始まる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ